CGSからみなさんへ

センター長:田中かず子

 ほんの少し前までは全く馴染みの無かった「ジェンダー」という言葉が、一般の人たちの間にも浸透してきた反面、最近ではマスメディアによって否定的なイメージが付与されつつあります。特に男女共同参画社会基本法の施行以後、「ジェンダー・フリー」は人間を中性化して日本人の美徳を破壊する悪しきイデオロギーである、との批判が投げかけられています。

 しかし、一部の(全部の?)メディアが批判するように、「ジェンダー・フリー」の主張が「男らしさ」「女らしさ」の価値を全否定して男と女を中性化したつまらない存在に貶めようと考えたことは一度もありませんでした。「ジェンダー・フリー」が主張するのは、今ある「男らしい」「女らしい」という2通りの生き方しか認めない社会に対して、「自分らしい」生き方、60億通りの生き方を認めるべきだと主張しているのです。

 もちろん、「ジェンダー」研究と一口に言っても、考え方は人それぞれです。結婚生活における法律上の形式的な男女不平等を問題にする人から、結婚どころか恋愛の意味、男女というカテゴリーさえも疑問に付す人まで。けれども、ジェンダー研究に携わる人はみな、ここにこそ考えるべき問題があるのだと考える点で協力していけるはずです。

 例えば、あなたがいま誰かに恋をしていて、将来結婚を考えているとしたら、それはとても素晴らしいことだと思います。でも、なぜ異性とでなければ結婚できないのか、なぜ一対一でなければ結婚できないのか、なぜ国家に届けを出さなければならないのか、なぜ結婚生活において男と女は平等に扱われないのかについて、悩み、考え、苦しんでいる人たちがいます。ひとつには、あなたとは違う価値観を持った人たちへの偏見を排除するため。もうひとつには翻って、あなた自身の生き方をもう一度見つめなおしてみるために、一緒に勉強していけたらいいなと思います。

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