ICU在学生:川坂和義【CGS News Letter001掲載】
2003年12月19日に世界人権デー記念の人権セミナーの講師としてICUに上川あやさんがいらっしゃいました。上川さんはトランスジェンダーであることを自らカミングアウトして世田谷区議選に出馬し、当選なさった方です。トランスジェンダーとは、「心の性と体の性の食い違いに苦しむ状態」のことでWHO(世界保健機構)の分類にもある疾患名です。
最近、少しずつ「トランスジェンダー」や「性同一性障害」という言葉を耳にすることが増えてきましたが、まだ多くの人にとって実感の湧く言葉ではありません。むしろ「性的異常者」や「かわいそうな人たち」というニュアンスの方が強いのではないでしょうか。
講演会では、上川さんの実体験をもとに、トランスジェンダーの方々のおかれている立場や状況を話していただきました。職場で男として振舞うストレスで円形脱毛症になった経験や、戸籍の本名・性別と外見や通称名が違うことで住居を借りる際や就職活動の障害になったという話からは、一般的な感覚からは想像しがたい、トランスジェンダーの人達が受けている生活の困難さを垣間見ることができました。普段無意識に「当たり前」のこととしている行為が、トランスジェンダーの人たちを苦しめているとは気づかなかった自分に恥ずかしさと怒りが湧いてきました。
また、トランスジェンダーの方々にとって一番の難題は家族の理解のようです。上川さんが父親に初めてカミングアウトをして理解を得た様子を、時に涙をためて話す姿を見て、当時どれほど悩んだかが伝わってきました。
ICUでも、2003年の秋学期から通称・希望性別への変更が可能になる制度ができたと聞きます。性別という今まで「当たり前」であったものが問われることに戸惑う声もありますが、むしろ一人でも苦しむ人が少なくなるような社会を目指すことこそ「当たり前」なことではないでしょうか。