オープン記念・福島瑞穂さん講演会レポート

ICU在学生 : 金子活実
【CGS News Letter002掲載】

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2004年5月7日、ジェンダー研究センターのオープンを記念して「結婚・家族・ジェンダー」と題した講演会が開催された。講師は、弁護士時代セクハラや家庭内暴力事件を担当し、現在は選択的夫婦別姓法案の通過と婚外子差別の撤廃にむけて「趣味と生きがいと実益をかけて」精力的に活動している福島瑞穂さんだ。参議院議員であり社民党の党首もつとめている。

 福島さんは主に、女性問題に携わる地道な活動と、それによって日本社会におけるジェンダーに対しての問題意識が変化してきたことについて講演した。なかでも強調したのは「個人の多様な生き方が尊重される社会」の重要性だった。

 この講演は私にとって「個人の多様な生き方を尊重する社会」はどんなものかを考えるきっかけとなった。多様性の尊重が叫ばれるのは、今に始まったことではない。けれども、これを達成することは、本当に難しいことだと思う。講演の中心となった結婚を例にとって考えてみると、まず、多様な生き方が尊重されるためには、結婚するという生き方以外にも、結婚しないなど他にも生き方があるということが提示されることが必要である。また、それらの多様な生き方のうちのひとつが「自然な」生き方として例外的な特権を与えられないことも重要だ。これは、「自然な」生き方を規定することでそれ以外の生き方が例外視され、排除を生む構造をつくってしまうからである。しかしこれを突き詰めて考えると、結局「自然な」生き方として規定されている法律婚、それ自体が疑問に付されてしまうことになる。例え結婚の他にも例外的特権を与えられることなく多様な生き方が提示されたとしても、法律婚というものがある限り、結婚というものに法律的な保障が与えられ「自然な」生き方として奨励されていることに他ならないからだ。

 私にとって何よりもショックだったことは、この「自然な」生き方を存続させているのは、他でもない私自身なのではないかということであった。「自然な」生き方を選ばない福島さんのような人たちと向き合うと、私は自分でも認識していなかった偏見や差別が自分の中に潜んでいたことを発見し、愕然となり、どうしようもない虚無感に襲われる。このように自分の中に新しい発見をすることは、これまで自分が考えたこともなかった生き方を知ることであると同時に、これから自分の選ぶ生き方を考えることでもあるのだ。私の中に潜む「自然な」生き方の像と向き合うことと、自分の中にある偏見を発見することが、多様な生き方が尊重される社会への、私の第一歩なのだと思う。

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