裁判員制度にジェンダーの視点を

専修大学大学院 : 田村直子
【CGS News Letter003掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 2004年国会で裁判員法が成立した。重大な刑事裁判に市民が参加する制度で、2009年までに施行される。国民の司法参加は民主主義の実現にとって意義が高く、その道を拓いたのは画期的だが、裁判員制度は未だ様々な問題を含んでいる。その一つは、ジェンダー視点の欠落という問題だ。

 ジェンダー法学研究では「法の男性性」が指摘されている。法の枠組みや実践が男性の考え方に則っており、女性や性的少数者の人権や権利の実現が不十分であるという問題だ。現代日本では未だ法律家の多くは男性だが、戦前の日本や米国の初期の陪審制でも陪審員は男性のみであった。現代の米国の陪審研究でも、特に強姦事件などで判断がジェンダーバイアスに左右される割合が高まると報告されている。

 そこで裁判員制度においては、評議体のジェンダー平等を実現すると共に、裁判がジェンダーバイアスの影響を受けないよう注意する必要がある。これらの実現を求めて筆者を含む数名は、法案策定過程への働きかけを行った。例えば、賛同署名を集めて国会議員と面談し、最高裁判所や司法改革推進本部の担当者らと裁判員制度とジェンダーに関する集会を持った。結果的に要請の実現には至らなかったものの、数回の衆議院法務委員会でジェンダーの問題意識を議論してもらうことに成功した。裁判員制度の施行3年後の見直しに向けて、今後も議論を深めていきたい。

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