報告:フェミニスト経済学日本フォーラム2005年度大会

ICU学部 : 百枝亜由美

 4月16日(日)に東京学芸大学で開催されたフェミニスト経済学日本フォーラム2005年度大会に参加して来ました。二部構成となっていたこの大会は、まず自由論題の発表が行われ、ついで共通論題に関する報告が行われました。自由論題においては、外国人家事・介護労働者に関する報告や、ペイドワークとアンペイドワーク時間の検証報告、また資本論の再検討や家計概念の研究といった多様な報告が行われました。

 一方、今回共通論題とされたのは、「少子化のフェミニスト経済分析」でした。これは、『少子化社会白書平成16年版』において、日本における出生数または出生率の回復のチャンスが2010年頃までしかないという報告がなされたことをうけ、少子化の原因やそれによる影響および必要な対処法等を多面的にフェミニスト経済学の観点から分析を行うことで、現状に対する新たな視点の獲得や政策的インプリケーション提供の可能性を探ろうとするものでした。

 私自身の研究領域はジェンダー関係ではないのですが、その視点はいかなる研究領域においても無知ではいられない、重要な視点であると考えています。そのように考えている中で今回フェミニスト経済学会に参加出来たことは、これから自身の研究を進めていく上で、ジェンダーの視点に無関心でいられないことを、改めて心に言い聞かせる良いきっかけにもなったと思います。

 一方で、参加したからこそ見えてきたこともありました。私自身今年四年生になり、卒論に取り組むにあたって、学友の多くがジェンダーの視点を取り入れた研究を行いたいと言っているのを耳にしたり、ICUにCGSがあることから、ジェンダーという視点は大きな流れであると認識していました。しかし、それが広く世間一般の人にとってもそうなのだろうかと、今回参加してみて疑問を抱きました。

 それというのも、学会への参加者があまりに偏っており、つまり学会自体の所属会員や、ジェンダーを専門とする研究者たちばかりであったように思えたのです。もちろん、世間一般の方の多くが専門的な学会に足を運ぶものかということもありますが、私はもっと一般に対し開放的な大会であってもよかったのではないか、むしろ、そうあるべきだと感じました。趣旨説明でも述べられているように、女性の社会進出や個人主義化に伴って、女性が子供の生命や育児を軽視するようになったということが、少子化をもたらす原因として世間で言われているのを私自身耳にします。また、世間の多くの人がそう思ったり、そのように言われているのを聞いたりすると思います。しかしそれは言説だということを明らかにしようとする報告が、この大会でなされました。現状に対して、今回の大会でなされた報告の多くが検証に基づく正しい事実認識を提供することが出来たのです。しかし、それらの報告が一般の人々に伝わり、その正しい事実認識が広まるのであろうかと、心配しました。専門家による学会が一般への公開性を持つのは困難かもしれませんが、今回の大会の趣旨が示すように、ジェンダー研究領域はこれから必要な視点としての重要性が高まっており、もっと社会に近い存在であって欲しいと思いました。

月別 アーカイブ