ICU学部生 : 清水雄大
【CGS NewsLetter 004掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
大阪府議である尾辻かな子さんが、8月に出版した著書『カミングアウト』の中で,自らがレズビアンであることを公表した。彼女は2003年の統一地方選挙で初当選した、大阪府議会で活動中の現役最年少議員。同性愛者であることを公言した議員は彼女が国内初であり、国内の政治でその存在を無視されている同性愛者たちにとってのインパクトは計り知れない。
彼女が素晴らしいのは、言葉だけでは終わらずに行動に移すところである。まず、出版直後に行われた東京レズビアン&ゲイパレード2005に参加し、性的少数者の権利擁護を訴え、渋谷の街を練り歩いた。そして10月には府議会の代表質問に立ち、同性パートナーも親族と同様に入院中の患者への面会や情報提供を求めることができないのかと質問し、前向きな回答を得た。また、原則として親族同士の入居しか許されていない大阪の公営住宅において、住居の確保に困る同性カップル等の入居許可を求め、府住宅供給公社の担当者に来年度早期から賃貸許可に乗り出す方針を引き出させた。同種のハウスシェアリング制度は都市再生機構で例はあるが、当初から同性カップルの利用を念頭に置いたものとしては史上初であり、公的機関による初の同性パートナーシップの権利保障政策と位置づけることができるだろう。
彼女も他の性的少数者同様、家族との関係や学校での差別に悩んだ経験を持つという。また、議員という立場でのカミングアウトには支持者離れが懸念される。そんな逆境の中、着実に成果をあげ、国内の同性愛者たちをエンパワーメントし続ける彼女を、これからも応援せずにはいられない。