IWS2006にむけて

CGS運営委員会 : 加藤恵津子
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 この春、ICUジェンダー研究センターは3年目を迎え、そしてジェンダー・セクシュアリティ研究プログラム(PGSS)は2年目になります。そしてPGSSの記念すべき一期生がこの3月に卒業し、それに続く登録希望者も急速に増えつつあります。その背景には、熱意あふれる教員や講師たちによる講義・講演会の数々はもちろんのこと、総勢30余の学生スタッフの質とモチベーションの高さがあります。自主的に読書会を次々と企画し、海外の人々にも臆することなく接しています。大学の研究所と呼ばれるものは数あれど、これほど学生の力に負っている所はないといっていいでしょう。

 さて、2004年から毎年行っているこの国際ワークショップ、第一回は「社会科学的視座」から、第二回は「人文科学的視座」から、それぞれアジアにおけるジェンダーと、広い意味での平和・安全・共生を扱ってきました。2006年度の第三回は「自然科学的視座」から検討します。

 自然科学は自然界の普遍的法則を扱う学問とされ、ジェンダーとは一見無関係のように思われています。しかし、自然科学の持つ普遍性こそが今最もジェンダーという視点から再点検が必要な領域です。生命科学においてこれまで検討されることなく用いられてきたオス/メスという区別がどれほど男性/女性という現在の強固なジェンダー規範に大きく影響を与えたかと考えるべきでしょう。

 自然科学はまた、アジアという地域性と関連付けられることも稀です。例えばアジアにおいて土着でかつ固有の医療技術、知識は最近になってようやく医療行為の一環として認知されるようになりました。なぜならばここ一世紀医療行為とはアジアにおいて西洋医学のことにほかならなかったからです。生命科学、すなわち人間の性や生殖に関わる技術や知識(出産や避妊の技術、男女別医療など)は各地域に偏在しています。加えてその地域独自の技術や知識は、西欧型のそれとの間にも複雑な関係を保ちながら現存しています。

 これらの研究は、近年ようやく目を向けられ始めた分野といえます。今回のワークショップでは、このアプローチに新たな可能性を見出すために日本国内外から研究者や活動家などの専門家を招聘し、各国からの現状報告やトピック別セッションを行う予定です。詳細は夏前を目安に随時HPにて発信していく予定ですので、ご確認ください。これからもCGSをよろしくお願いします。

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