「オネエ言葉」と日本語のジェンダー言説

ICU学部 : 田中洋兵
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 2006年1月14日、ICUにて、津田塾大学英米文学科よりクレア・マリイ氏を迎え、「言語上のネゴシエーション─「オネエ言葉」と日本語のジェンダー言説」と題された講演会が行われた。

 氏は、「オネエ言葉」の持つ演劇性を取り上げ、「オネエ言葉」を話す人物の行っていることが、一種のパフォーマンスとして周囲の人々を普段とは異なった世界、すなわち「非日常の世界」へ連れてゆく作業であると述べた。たとえば、バートークにおいて「ママ」は、オネエ言葉を用いることにより客を日常世界から解放させ、また客もそれを求めて「ママ」の元へと集う。ここではオネエ言葉は演劇的であり、別の自分を可能にする手段なのだ。またオネエ言葉はセクシュアルマイノリティ間で連帯感を生む上でも役立っているという。

 氏は現在のメディアでオネエ言葉を話す芸能人にも言及した。例えばおすぎとピーコの人気は、彼らの個人的な能力によるだけでなくセクシュアルマイノリティに対する社会的受容の拡大もあっての事である。これについては面白い指摘があった。美輪明宏やピーターが表象していたものと、現在おすぎやピーコが表象しているものの間には違いがあり、これら二つの世代には大きな断絶がはっきりと見て取れるという。氏は、オネエ言葉をめぐる世代間の断絶がどういったものであり、なぜおきたのかという点は今後の研究課題とされていた。

 講演後には多くの質問も飛び出し、オネエ言葉は実社会において人々の関心を集めていると感じられた。「談話言語」であるオネエ言葉が、日常生活により近い話題だからこそ人々の関心も高いのかもしれない。

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