LGBT雑誌の盛衰

ICU大学院 : 平野遼
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 近年、LGBT雑誌業界の浮沈が著しい。ゲイ専門誌の老舗「薔薇族」は04年11月に廃刊になり、05年4月に復刊したが、再び06年1月号をもって廃刊となった。また02年創刊のレズビアン専門誌「カーミラ」も05年12月発刊のVol.10をもって終了した。しかしその一方で05年12月には、タワーレコードからLGBTを対象とする初のライフスタイルマガジン「yes」が新しく発行されてもいる。

 90年代末より、LGBT雑誌の編集方針は需要に応じて変化してきた。90年代まで、地方在住のLGBTが出会いを求め相互にコミュニケーションをとる上で、雑誌メディアは貴重な通信手段であった。この時「薔薇族」や「さぶ」といった老舗のゲイ専門誌がそこで果たした役割は大きい。また、一般的にはあまり流通していなかったゲイ向けのポルノグラフィーの掲載・紹介という重要な役割も担っていた。

 しかし、最近は携帯やインターネットの普及により、そういった役割が雑誌メディアに求められることがなくなり、90年代後半より創刊された「クィアジャパン」、「クィアジャパンリターンズ」、「にじ」といった雑誌では、LGBTが抱える生活上の問題や社会的な立場が主なテーマとして取り上げられるようになった。

 そんな中で、今回創刊された「yes」は、ポルノやコミュニティー情報を排し、映画情報やイベント情報をLGBTの視点で発信する方針を採っている点に特徴がある。「yes」は、LGBTのみでなく他の購買層をも視野に入れる編集方針なので、LGBT以外の人にも「情報誌」として認知されることに成功しつつあり、新たな可能性を伺わせる。この雑誌がアメリカで6000億ドルともいわれるLGBT市場を日本でも開拓する端緒となるか。注目し続けたい。

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