アジア認識とジェンダー

ICU学部 : 金子活実
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 2006年1月7日、お茶の水女子大学にて「アジア認識とジェンダー」研究会シンポジウム「東アジアの『戦後』60年:軍事化とセクシュアリティ」が開催された。北朝鮮を脅威としながらナショナリズムが台頭する東アジアの軍事化と、ジェンダー・セクシュアリティとの関連について、韓国、日本、中国の現状から興味深い報告があった。基調報告で講演した権仁淑さん(明知大学校、韓国)は「韓国の軍事化とマスキュリニティ」と題し、50年代から70年代における韓国で、経済的、軍事的に強い国家を構築するために、女性性と男性性がどのように規定されていったかを報告した。

 50年間存続する徴兵制によって、韓国人男性は、自己犠牲を厭わない軍隊内の階級的地位秩序を内在化する。一方、女性は補助的、従属的存在として規範的な女性性の枠内で国家に利用されると同時に、そのセクシュアリティは伝統的価値観の下に統制される。例えばセックスワーカーや工場労働者は、破壊された女性性を持った存在として位置づけられ、国家主義的価値観や高い教育、結婚などで女性性を補完することを余儀なくされる。

 このような女性たちは国家の経済、軍事的利益のために積極的に動員されながらも、保護する必要のない存在とされている。そして、その搾取は同時に「規範的な女性像」を強化しもする。軍事化とセクシュアリティの管理が連続しているとする権さんの報告は、国家の安全保障を国家間のパワーバランスのみで議論する暴力性を再確認させるものだった。

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