学問特集・What's PGSS?

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ICUの学内新聞「Weekly Giants」第925号(2007年10月11日発刊)に、「学問特集第6弾 What's PGSS?」として、ジェンダー・セクシュアリティ研究プログラムの特集記事が掲載されました。WG誌の記者mcgffinさんのインタビューにお答えするかたちで、PGSS副手の加藤悠二が取材に応じています。
 今回特別にWG誌のご好意で、紙面上には収録しきれなかった内容も含めたフルテキスト版をCGS Onlineにアップする運びとなりました。PGSS履修を考えている方は、是非ご一読ください。


−−−PGSSは何の略でしょうか?
加藤:Program for Gender and Sexuality Studiesの略です。「ピグス」と読みます。そのため、CGSにはぶたちゃんグッズがたくさんあります。


−−−PGSSはどのような学問ですか?
加藤:これは、答えるのがとても難しい質問です。PGSSはICUに4つある学科間専攻のひとつです。他にはアジア研究・日本研究・アメリカ研究があります。そして、2008年度からは、IDメジャーのひとつとなります。IDメジャーというのは、Interdisciplinary Majorの略称で、日本語に翻訳すると、「学際的専攻」という感じになります。つまり、学問分野の垣根を越えた学びを実現することができる専攻分野、ということです。

 PGSSの特色は、「ジェンダーやセクシュアリティといった視点(パースペクティヴ)から、あらゆる事象を、各学生の興味に沿って研究することができる」点にあります。ジェンダーやセクシュアリティ、というのは、人間の性/性に基づく生に関するあらゆる事象に関して差し向けることができる、ひとつのものの見方だといえると思います。現在PGSSに登録している学生の専攻分野も、法学・宗教学・政治学・社会学など、多岐の分野に渡っています。皆それぞれの専攻分野で、ジェンダーの視点やセクシュアリティの理論を用いた分析を試みています。

 一般にジェンダーと聞くと、「ジェンダー=女性のための学問」、というようなイメージを持つ方もいらっしゃるかも知れませんが、そんなことはなく、男性の抱える困難さなども射程に入れた研究をすることが可能です。むしろ、女性/男性という枠組み自体を問い直していく学問でもあるため、全てのICU生にとって無関係と言うことができない学問領域である、とさえ言えるでしょう。


−−−ICUにはPGSS担当教授は何名いらっしゃるのですか?
加藤:プログラム・コーディネータは田中かず子教授(IS・社会学)ですが、PGSSのカリキュラムにリストアップされたコースの担当教員は、学外からの講師の先生も合わせて、多くの人数にのぼります。また、CGSの主催による講演会や国際ワークショップでは、国内外を問わず、一線で活躍する研究者やアクティヴィストを招聘することが多々あります。


−−−加藤さんがPGSS専攻に決められた理由・経緯を教えてください。
加藤:「社会学原論」で初めてジェンダー・セクシュアリティという概念に興味を持ち、田中かず子先生の「ジェンダー関係論」でCGSの仲間たちに出会ったことが、PGSS専攻に決めた大きな契機でした。自分が普段ICUのなかで生活するなかで、当たり前のように「ヘテロセクシュアル(異性愛者)の男の子」扱いされることに対して感じていた違和感や不満に対して異を唱えることが、学問的にも・日常生活の中でも、出来るんだ・やっていいんだ、ということに気づかせてもらえたことが、PGSSで卒業論文を書いてみたい、と思うようになるきっかけとなったのだと思います。まぁあと、「なんか僕、第一期生になれちゃうみたいだし、折角だからなっちゃおっかなー」というヨコシマな気持ちも、ちょっとありました(笑)

 また、田中かず子先生の指導でゲイ・スタディーズに関する卒業論文を書くにあたって、学科や専攻分野の履修要件にしばられない履修計画を自分で立てて卒業したい、と思ったことも、理由のひとつです。僕はもともとは社会科学科に所属し、社会学専攻を志望していましたが、ジェンダー・セクシュアリティの理論に関する授業は人文科学科の300番台であったため、これらのコースをメジャー単位の卒業要件単位としてカウントするためには、社会科学科や社会学の履修単位の枠から自由になる必要がありました。PGSS履修生になれば、学生の興味に応じてかなり自由に単位を組み立てていくことができるため、他学科の授業であっても、「自分の専攻科目です!」と堂々と宣言できることは、とてもありがたいことでした。

 
−−−どのようなことに興味がある学生にPGSS専攻をすすめたいですか?
加藤:「女だったらこうしなきゃ」
「男だったらこうあるべきだ」
「世の中の人間は全員女か男に分けられるんだ」
「人間いつかは結婚して子どもを作って、幸せな家庭を築くのが当たり前」などなど......

 性/性に基づいた生をめぐる"規範"や"思い込み"は、私たちの身の回りにたくさんあります。そんな既存の社会の価値観に疑問がある学生さんや、自分も知らず知らずのうちに内面化してしまっている社会の規範に気づいてみたい・そしてそれを打ち崩したい、と思っている学生さんに、PGSSをオススメします。自称"リベラル"な学生さんにこそ、PGSSのコースを受講してみて欲しいですね。

 また、学部1,2年生の皆さんには、まずは毎年春学期に開講されているPGSSの基礎科目「ジェンダー研究へのアプローチ」を履修してみることをオススメします。この授業はオムニバス形式で、毎回異なる分野の教員が、それぞれの研究分野でジェンダー研究・セクシュアリティ研究をやったら、どんなことができるのか? ということを紹介してくれるコースです。毎学期、学内外から10名以上の講師が集まり、授業をしてくださいます。もちろん、ジェンダー・セクシュアリティの基礎的な知識も初回にレクチャーがありますので、初めてこの分野に触れる方でも受講可能です。このコースを通して、ジェンダー・セクシュアリティ研究ではなにができるのか? 自分が興味がある学問領域はどんな分野なのか? ということを考えてみて欲しい、と思います。PGSSを履修する予定がない学生さんにとっても、1学期間に10以上の学問領域のプレビューができるコースは、自分の進路を考える上で貴重な経験になると思いますので、早い段階で是非取ってみて欲しいクラスです。


−−−ICUにはジェンダー研究センターがあることは、学生にどのようなメリットをもたらしていると思いますか?
加藤:CGS(Center for Gender Studies:ジェンダー研究センター ERB-I 301)があることは、PGSSにとって大きなメリットだと思います。PGSSを履修している学生や、サポートしている教員・副手の誰かしらがいつもいる場所ですから、PGSSに関する情報、学内外でのイベント情報を集めるのには非常に便利ですし、研究者やアクティヴィストを講演会やワークショップに呼ぶ際には、スタッフとしてそこに関わり、新しい人脈を作っていくチャンスを持つこともできます。また、国内のマンガやエッセイから、海外の専門書まで、1000冊を超える蔵書・映像資料の閲覧・貸し出しが自由にできることも、PGSSの学びには役に立つこと請け合いです。読書会も定期的に開催されていますので、ひとりでは難しくて読み進めることができないような本であっても、みんなで助け合いながら読むことができるでしょう。

 でも、なによりも、学生が気軽に集まって、ジェンダーやセクシュアリティについて日常的に感じている違和感−−−「今日こんなイヤなコトがあったの!」というような愚痴も含めて−−−を話し合える場が学内にあること。このことこそが、CGSの持つ、学生にとっての最大のメリットなんじゃないかと、思います。


−−−では、ICUでPGSSを学ぶことのメリットはどのようなものでしょうか。
加藤:ジェンダー・セクシュアリティ研究は学際的な研究をすることで、その真価を発揮する学問領域だと思います。ICU以外の大学では、学部や学科の枠から外れた学際的な学びをすることはまだまだ困難なものですが、ICUのリベラル・アーツは、学際的な学びにうってつけの体制です。ICUだからこそ、異なる学問領域に興味を持つ学生同士が自由につながり、互いに刺激し合いながら学ぶことができるはずです。リベラル・アーツのリベラルたる部分を満喫できるプログラム、それがPGSSなのではないでしょうか。


−−−2008年4月から教学改革による学部再編が行われますが、2007年度と来年度では専攻になにか違いはあるのでしょうか?
加藤:2007年10月1日現在、PGSS運営委員会によって話し合われている最中ですが、基礎科目に新たに3つのコースが加えられるほか、メジャー科目の選択方法にも変更がある予定です。

 PGSSに関する最新の情報は、CGS Onlineに掲載されるほか、CGSとPGSSが独自に編集・発行する「PGSS履修ガイドブック(仮)」にも掲載されていく予定です。PGSSを履修した学生の体験談なども含め、PGSSでどんな学びができるのかの情報を、今後も積極的に発信していく予定ですので、随時チェックしてください。

 CGSにはPGSS担当副手がいますので、なにか質問があったら、気軽にお越し下さい。2007年度は僕・加藤悠二が担当者です。g086022@yamata.icu.ac.jpまで、メールをくださっても構いません。


−−−最後にこれから専攻を決める学生へ一言お願いします。
加藤:ジェンダー・セクシュアリティ研究は、この記事だけではとても伝え切ることのできない、おおきなおおきな学問領域です。ぜひ食わず嫌いをせず、ひとつだけでも、一般教養科目でもよいので、まずはひとつ授業を取ってみてください! きっと新しい刺激が体験できますよ。

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