講演会「燃え尽きない働き方」講演録2

【3.自分の意思や考えを伝えるテクニックあれこれ】
高山
 では、自分の意思や考えってどうやって伝えるか。結局、こういったストレスは、コミュニケーションの中 から生まれてくるのね。でもコミュニケーションというのは、聞く人と話す人がいる。自分の意思を伝える人とそれを受けとめる人。ちょっとみんなからのリクエストがあったから、先に、自分の意思を伝えるテクニックの話をします。だいたい、4つポイントがあります。大事なポイント。主張することが上手だけれども、人によく聞いてもらえない人っていると思うの。主張しても人がうまく受けとめてくれない。そういう人はね、今から言う4つのポイント覚えて帰って下さい。

(1. I(I or eye)メッセージ)
高山
 アイ・メッセージと言います。アイ・メッセージのアイは、私のIと目のeye。どうしてかというと、英語では、I statement と言うけどね。“私は”、を主語にして話すということ。英語もそうだけど、よく、you, you, you, って“あなた”を主語にしてしゃべることがいっぱいあります。例えば、私たちも人に何か言う時に、「私がそう思っている」と言うのではなくて、「みんながそう言っていたよ」とか、「一般的にはそうだよ」とか、言ってみたりする。“私が”を主語にするのは、自分が言ったことに責任を持つということだから、言いづらくなってしまう。でも、“私が”を主語にした方が、相手を非難しているように聞こえないです。“私が”と言うと、どんなにそれが要求だったとしても、相手を批判したように聞こえない。これは、すごく面白いトリックだけれども、例えば、「あなた全然私のこと聞いてないじゃない」と言ったら、批判だよね? “あなた”、聞いてないじゃない。では、これはなんて言いかえる? これは「“私は”自分が言っていること、ちゃんと理解してもらってないような気がする。だから不安に感じる」と言うと、相手を非難しないで、聞いてもらってないというメッセージが伝わります。わかる、この違い? これ、すごく使えます。これは仕事でも使える。

 例えば、感情労働をやっている人たちなんかそうだよね。「あなたが○○じゃない」と言ってしまったら、相手の感情を扱っているのに、非難してしまうことになるの。だけど、「私はこう感じますよ」とか、「私はこう思いますよ」と言うことで、相手を非難しないけど、メッセージを伝えることができるの。これすごく使えるから覚えて帰って。「“私は”こう思います」「“私は”こう感じます」「“私は”個人的にはこう考えてるんだけど、どう思う?」会社の会議もそう。「あなたが言ってることおかしいですよ」と言ってしまったら、非難でしょ?そうすると誰も聞いてくれません。だって、聞きたくないもん、非難なんて。批判も聞きたくないでしょう。でも、「“私は”こういう風に感じたのですけど」と言うと、相手は、別に非難されたと思わない。「あぁ、そういう考え方もあるのか」「こういう選択肢もあるのか」と思って聞けるの。とにかく、相手に耳を塞がせない方法がアイ・メッセージ。

 アイ・メッセージの“アイ”は目だよって言ったよね?アイコンタクトもすごく大事。今日、アイコンタクトが取れている人もいれば、ずっと下向いている人もいるけど、全然かまわないよ、下向いていても。でも、自分の意思を伝える時はね、やっぱり、目は見なくても、せいぜい口を見るとか、(喉のあたりを指しながら) ここらへんを見るとか、やっぱり自分が伝えたいことがあるというのをジェスチャーと言葉で表現しないと、伝わるものがなかなか伝わらないです。

(2. アサーティブネス(自分の意思を明確に伝える))
高山
 次にアサーティブネスです。アサーティブネスという英語、−−−最近ちょっと日本語化してきているけれども、何かというと、自分の意思をいかに明確に伝えるかということ。例えば、伝え方によってはね、ノン・アサーティブといって、すごく間接的で、言いたいことがちゃんと伝わらない。もしくは、アグレッシブ、攻撃的になってしまう、ということもあります。そのノン・アサーティブでもなく、アグレッシブでもないのが、アサーティブ。じゃあ、これは何かと言うと、相手も我慢しないし、自分も我慢しないコミュニケーションと思って下さい。要は、自分も我慢して言いたいこと言わないのではなくて、自分がちゃんと伝える。でも、相手も嫌な気分にならない。そういう明確な意思表示をするのが、アサーティブです。

 例えば、隣の家に卵を借りに行こう。今日、夕飯にお好み焼き作ろうと思ったけど、卵がない。卵が無きゃお好み焼きは作れないよね。そこで、隣に借りに行きたい。まあ、最近、近所にしょう油借りたり、卵借りに行くことはないかもしれないけれども(笑)、とりあえず、手っ取り早く、隣に借りに行きたい。隣にピンポーンって押しました。ちょっと良く知っている人で「卵ある?」と聞いた。相手はどう思うと思う? 「卵がないから借りたいのかなぁ」って、すごく回転のいい人は思うかもしれない。「あ、田舎から卵いっぱい送られてきて、余って困っているからくれるのかなぁ」と思う人もいる。受けとめる側で解釈がかわってしまうの。だったら、始めから「ごめん、いま料理しているのだけど、1個、卵がないんだよね、貸してもらえる?」と言った方が、わかるよね。「卵ある?」じゃわからないです。これはノン・アサーティブ。でも、「卵1個貸してくれる? 悪いんだけど・・・」というのは、アサーティブです。

 じゃあ、1時間以上、友達が遅刻してきた。もうすごい自分はイライラしている。1時間も待たせて何やっているのだろうって。1番、友達が着いた。「じゃあ、行こっか?」これアサーティブ? そう、アサーティブじゃないねぇ。これは、ノン・アサーティブです。次、友達来ました。 「もう1時間も遅れてきて、ずうずうしい、もう二度と一緒に行かないからね」と言ったらこれはアサーティブ?これはアグレッシブ、攻撃的なの。全然自分の意思伝わらないよね。怒っているのは伝わるかもしれないけど、それ以上は伝わらない。もしかしたら二度と一緒にお出かけしないかもしれない。3番目「1時間待ったんだけどさぁ、電話1本くれれば助かるんだけど」。これはアサーティブ。「1時間待って、ちょっと辛かったんだ」というのも表現しながら、「1本電話くれれば助かったんだよね」って。これが、アサーティブです。

(3. 適切なアドバイスとは・・・)
高山
 では、適切なアドバイスをするということです。人とコミュニケーションをとってて、自分がなにか意見を 言いたい時ありますよね?「こうやったらいいのになぁ」って。でも、アドバイスする時は、その人がそのアドバイスを聞いて、結果が何であろうが、自分がその結果に責任を持てると思ったら、「アドバイス」でいい。だって、相手がそれを選んで、悪い結果が出ようが、いい結果が出ようが、私も責任とろうと思っているから。だけど、そうではない場合は、選択肢として提示してあげるのが、−−−良いか悪いかって言われちゃうと困ってしまうけど−−−自分も楽だし、相手も楽なの。

 どうしてかというと、相手が“選ぶ”ことができるから。アドバイスは、アドバイスをした途端に、自分が上に立ってしまうの。アドバイスされている方は、自分が間違っていると感じてしまう。だから、下にいってしまうの。対等な関係ではなくなってしまう。でも、情報を提示する、それを選択肢のひとつとして、「どう?」って提示する分には、対等でいられるの。しかも、その情報を選択するかしないかというのは、選択した人の責任になってくる。あなたの責任じゃない。別にこれは、責任を転嫁するとか、逃げるとかそういうことではない。そうではなくて、あくまでも、相手に選ばせるということ。

 これは感情労働とかやっていてもそう。自分は専門家、カウンセラーだから、ある程度専門性を持っているから、「あー、こうすればいいのに」と思う時があるけど、結果に責任を負いきれないと思っている時は、情報としてしか提供しないです。「これをやりなさい」とか、「やった方がいい」とか、そういうアドバイスの仕方はしない。どうしてかと言うと、やっぱりクライアントには、何かを判断したり、選択する力があると信じるから。あなたたちも、今度会社に行った時に、お客さんでもいいし、同僚でもいいし、自分の後輩になる人でもいいけど、そういう人たちにアドバイスする時は、自分が結果に責任を負えると思えば、アドバイスするのがいい。でもそうではない時は、相手の選択する、判断する力を信じてあげればいい。それで情報を提供して、それを選択肢の一つとして選択できるようにもっていく。そうすると、お互いにストレスも少ないし、聞くほうも聞きやすい。聞きやすくするってそういうこと。アドバイスだと、自分とちょっと違うなって思うと聞けなくなってしまうの。でも、選択肢の一つとして情報提供される分には聞きやすくなります。

(4. 相手に耳を傾けさせるには・・・)
高山
 最後は、相手に耳を傾けさせる話法です。これは、たぶんこれから会社に行ったりした時に、いろんな人がいると思うの。あなたがしゃべっている途中で、さえぎる人もいれば、ずっと自分ばっかりしゃべっていて、全然割り込む隙がない人もいるかもしれないね。そういう時に使える話法をいま少しだけ教えます。(例えば) 相手が長話で、ずぅーっとしゃべっているけど、さえぎれません。どうしてかというと、上司かもしれないし、お客さんかもしれないから。じゃ、どうやってさえぎろうか?私もそう。1回目、2回目のクライアントは、もう、だーってしゃべるわけ。3時間位しゃべっているかもしれない。そういう時に、どうやって、私が止めるかというと「ごめん、正直私ちょっと混乱してきているんだよね。」 “私”が混乱している、混乱してきている。だから、一度お話を整理させて下さいって。これ、“私は”が主語になっているよね?「ちょっと待って、あなたしゃべりすぎ」とか、「ちょっと待って、あなたが言っていることよくわからない」と言ったら、“あなた”になってしまう。でも、“私”がちょっと混乱し始めているから一度整理させて欲しい、というのは、全部“私が”が主語になっている。向こうもそういう風に言われると、大抵は止まります。それでも止まらないというケースがあるかもしれないけど、大抵は止まります。もしくは、“私が”と言わなくてもいいけど、「今、お聞きしている内容をもっとちゃんと理解したいから、(“私”が理解したいから、)内容を確認したいんだけど・・・」と言ってさえぎることもできる。

「あなたが言っていること、全然理解できない」と言ってしまったら、向こうも嫌になってしまうよね?「こいつ、何者?」って。「さえぎった上に批判までするか」みたいな。だけど、「ちょっとごめんなさいね、お聞きしていることをもうちょっとちゃんと理解したいから、ちょっと1回整理して確認させて下さい」と言えば、向こうも、「ああそうか」と思う。「あ、ちゃんと理解してくれようとしているんだ」って、感じる。その違い。人の話というのはそうやってさえぎることはできる。 あと、自分の意見とか感想をフィードバックしたい時。自分の意見とか感想を言うと、相手が怒っちゃうか
なと思うけれども、とりあえずこれは返しておいた方がいいと思った場合、なんて言う?一番はじめに、自分の意見を言う前に、「もし違っていたらそう言って下さいね」と言う。その前置きひとつで相手は聞けるの。だって、違っていたら、違うと言っていい、違っているって言えるからね。そういう選択肢をくれたから。 私たちが、そう、“違っていい”、“違っているよって言っていいよー”という選択肢をあげたから、相手はそれを言われるだけで安心するの。だから、「もし違っていたらそう言って下さいね」と前置きしてから、自分の言いたいことを言う。そう言う時は、“私は”を主語にして言う。

 あとは、「“私個人”−−−私個人、みんながではなく、私個人−−−がお聞きしていると、こういう風に感じたのですが」と言う分には、相手はそんなにショック受けないで済む。だけど、私がまるでみんなの代表みたいに、言ってしまうとショックうけてしまうかもしれない。「あ、自分だけ違う」とかね。「私個人の意見としてはこうなんですけど、どうですか?」最後に、“こうなんですけど、どうですか?”とつけることも、選択肢を与えることになる。「いや、そうは思わない」と相手は言うかもしれないよ。「あぁそうか」と言うかもしれない。 必ず最後に選択肢を残すということが大切。あと、すごく感情的になってしゃべる人いますよね?そういうとき、どうするかというと、(だんだん声を小さくしていく)小さな声でしゃべると、みんなよく聴くんですよ。ほらね。目が上がったでしょ?(笑) アイコンタクト。そうなのよ、小さい声でしゃべって、トーンを低くすると、相手は聴くんです、聞こえないから。これもテクニック。相手が感情的になればなるほど、あなたの方としては、声のトーンを少し落として、(声を小さく、ゆっくり)ゆっくり話すと、相手が、落ち着くんですねぇ。でも、私、あんまりここで、ゆっくり話して声のトーン低くしちゃうと、みんな寝ちゃうからそれはしませんけど。でも、通常はそういうこと。聞こえないと不安だから聴こうとする。

 この4つのポイントは覚えていって。まだいっぱいあるけれども、今日は、この4つにしぼりました。でも、この4つあれば、かなりのところで使えて、サバイブできるはず。これは会社だけじゃない、自分の家族との間でもそう。友達もそう。だから、これは覚えて帰ってください。


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