講演会「燃え尽きない働き方」講演録4

【4.燃え尽きる前にできること】
(1. 心が疲れていることに気づくポイント)
高山
 燃え尽きる前に何ができるか、ということです。まず、体の疲れと言うのは誰でも大体キャッチできるの。例えば、もう毎日、午前様で仕事しているとか、そうすると、もちろん疲れるよね。疲労が溜まる。疲れているのに眠れないとか。あと、頭が痛いとか。肩がこるとか。食欲がなくなるとか。朝起きられない。もしくはやたらに眠い。体の症状というのはわかりやすいの。 でも、心が疲れているときというのは結構わかりづらいです。周りは気が付いても、本人は気が付いてないことも結構あるの。だから、心の疲れにどう気づくかということが重要になってくる。心の疲れをどうやって察知するか。大事なことは、「感情を自分が表現しなくなった」、「最近あんまり感情表現してないなぁ」と思ったら、−−−感情表現はそれぞれみんな違うけどね、レベルが。すごーく表現する人もいれば、おなじくらい楽しいけど、あまり表現しない人もいるけれど−−−ちょっと注意してください。笑わなくなった、とかね。「なにに対しても楽しいとか嬉しいとか悲しいとか辛いとか、そういう感情もあんまり感じなくなった」とかそういうのは注意。

 もしくは、思考がネガティブなスパイラルに陥りやすくなっている。さっきのチェックリストでやった、自分を責める、寝ている間中でも、「あーなんであぁなんだろう、こうなんだろう」「何で僕の人生はこんなつまんないんだろう」「何で私はこんな目にあっているのだろう」とかさ。「私のせいなのかな、私の性格がこうだからかな」そういう風になったときには気をつけてね。

 あとはね、すごく“したい”という気持ちが薄れているな、何かしたいという気持があまりでてこない。毎日、ただ会社と家を行き来していて、「コンサートに行きたい!」とか「スポーツしたい!」とかあまり思わなくなっている自分に気が付いたら注意して欲しい。“したい”という気持ちはすごく大事。仕事も“したい”と思うと全然、成果が違うかもしんない。“したくない”って思ってしている仕事ってなかなか生産的じゃなかったりしてね。“したい”という気持ちはすごく大事だよ。

 あとは、「自分のためだけの時間をなかなか確保できてないな」と思うのもサインかもしれない。自分のための時間とはどんな時間?リラックスできるとか自分が楽になれる時間かもね。それはお風呂に1時間つかることかもしれない。面白いビデオを見ることかもしれない。お友達とお話をすることかもしれない。みんな違うの。でも、自分の中では最近、「自分のための時間が全然ないな」と思ったら注意。心も疲れているかもしれない。

(2. 助けを求めるのは悪くない!)
高山
 では、心が疲れてきたなとサインを感じたら何をするか。助けを求めていいからね。よく「助けを求めると、私は弱い」とか、「僕、弱虫」と思ってしまう人いるけど、逆だよ。助けを求めるから強い。助けを求めるとはどういう人ができるか。自分の弱さを認められた人だけしか出来ないの。だから、強いんですよ、助けを求められるということ、「助けてー!」と言えることは強いことなの。 私もアメリカに一番はじめに留学したとき、もう英語も、文化もよくわからないし、いろいろなことがうまくいかないし、もう赤ん坊みたいになってしまったわけ(笑)。何でも人に頼まないと出来ない。銀行に行って口座開くのも、アイス買うのも、大きいのを2つつけてもらいたいのに、1つしかついてこないとか。本当に、くだらないことけど、人の助けがないともう出来ないことばっかりだった。もう赤ちゃんになった気分だったのよ。24歳ぐらいだったかな、でも、赤ちゃんみたい。自分よりも6歳くらい下の18歳の子とかが手伝ってくれて、カフェテリアとかで。「これはね、ナオコ、こうやってアイスクリーム出すんだよー」なんて。6歳も下の10代の子に助けられたらいい気もしないかもしれないけれど、でもね、その時に「助けて!」と言えるか言えないかってすごく大きい。「もう、いいや、私、赤ん坊で。アメリカだし」と私は、その時切り替えたけど、「助けて!」と言えるのはすごくいいことだよ。

 だから「ちょっと辛いな」という時こそ助けを求める。すごーく辛くなってから助けを求めても引っ張り上げてくれる人、なかなかいないよ、重いから。私は、仕事でお金もらって人の話聞いているの。みんなは人の話をお金もらって聞く仕事じゃなかったら、すごく疲れていて、話聞いているとこっちまで落ち込んでしまう人を、こうやって引っ張り上げたりする? そんな時間もエネルギーもなかなかないよ。だから、「ちょっと疲れたな」と思ったときこそ、助けを求めるの。すごく大変になってから求めても、拾ってくれる人が少なくなるだけです。

 会社もそう。ちょっと気の合う同僚、先輩、上司。いるようなら早い段階で、相談ではなくてもいいの、話を聞いてもらうだけで。「実は、僕こう感じてるんですよねー」「実は、僕こう思ってるんですよねー」それだけでいいの。いい? すごーく単純なことだよ。単純だけど結構やらない、多くの人がやってないこと。それで誰かが共感してくれると、過度な自己否定というのを免れることが出来ます。すごく早い段階で何か話して、誰かにね「気にしすぎだよ」と言ってもらえるだけで、自分も「ああ、そうか」と思える。もうへとへとで「ああ、もうどうしよう!」と思ってこんな低くなっているときに、「なぁに言ってんだよ」と言われても「この人こそ、なに言ってんだよ!」と思ってしまう。だからこそ、早めに話をするの。そうするとその一言でフッて、あがってこられることがあるから。低いところまで行ってしまってから上がってくるのは大変だよ。私のクライアントにもいっぱいいるけど、大変なの、その作業って。すごく時間がかかる。だから、「いつ、私はこのトンネルから抜け出せるんでしょうか?」と言われたときに、「いや、私にはわからない」と私は必ず言うけどね。「それは、あなたが決めることだよ」と。一回、深ーく落ちると上がってくるのがとても大変だからね。だから、早いうちに、誰かに話す。でね、会社とか入ってしまうと、その会社の関係・環境とか、ルールとか慣行とか、いろいろあるじゃない。それでも、入ってしまうとみんな、それで動いているからすごく当り前に思ってしまうの。だけど、それを自分の会社にいない人にちょっと話すと、「それって、うちと違うよ?」とかさ、「なんか面白いね」と言われると「ああ、そっかー。僕の・私のいるこの環境って実はここだけの話だったんだ」と気がつくかもしれないですね。中に入ってしまうとわからない。

 例えば、パワハラ・セクハラが起きているときとかもそうなの。そういうのが起きているときに、まわりは誰も、気にしていない。例えば、触られて自分は「嫌だな」と思っていても、まわりの人が「そんなのあの上司、適当にあしらっておけばいいのよ」と言われちゃうと「ああ、そうかー、私あしらい方が下手なのかな」と思うけど、それを他の所で話したら、「ええー、そんなことするのー?」と言われたら「ああ、なんだ。うちの会社の環境がもしかしておかしいの?」と気が付くよね。だから話したほうがいい。情報を集める道具なの、話すということは。会社の中の人だけに話すのが不安だったら、外の人にちょっと話せばいい。特定の個人が特定できないような話し方だったら誰も傷つけないから。何気なく話して。それで反応を見て、情報を沢山集められるだけ集める。

 例えば卒業しても、就職相談グループ、相談していいですよね? 卒業したから終わりではなくて、みんな、戻ってきて良いの、相談したければ。したい・しやすい人のところに戻ればいいの。労働組合にも相談してかまわない。労働組合とは面白いのだけれど組合法というのがあって、相談受けてもお金取れません、彼らは。無料です。無料で労働法の情報ももらえれば、下手すれば30分、1時間、話を聞いてくれます。あなたの名前も、年齢も、住所も言わなくていい。言いたくないと言えば聞かないから。組合員になる必要もないです。いざ、闘わなければならないと思ったら組合員になる必要があるかもしれないけれど、相談するぐらいだったら組合員になる必要はない。無料で聞いてくれるの。労働の専門家が話を聞いてくれる。だからそういう時は、インターネットで「どこに聞こうかな」と調べて、電話してみる。でも、たまに当たり外れもある。話し聞くのが下手な人もいるの、結構。私のところに来たクライアントも、「高山さん、あそこにも行って、ここにも行って、あそこのところにも行ったけど、すごく嫌な思いをしました。やっとここに来てよかったです」という人はいるの。当たり外れがあります。人がやっていることだから。でも、あきらめない。必ずわかってくれる人が絶対どこかにいるから。絶対あきらめてはだめだよ。誰かわかる人に話せるようになるまで、少しずつ小出しに話せばいい。傷ついたと思ったら、私のところに電話してくれても全然かまわない。男でも女でも。

 いいですか? あきらめない。法テラスは弁護士さんが無料で相談にのってくれます。でも、ひどい弁護士もたまにいます。みんながみんな完璧ではないの。だけど、あきらめない。完璧な世界がないからこそあきらめない。

(3. “うつ”についての豆知識)
高山
 次にうつについてちょっと話しておきます。心の疲れとうつはちょっと関係があるから。私、今日うつの話は怖がらせるためにするのではないから、別に怖がらなくていいから。 うつはねえ、みんな持ってるの。「僕は持ってない」「私は絶対うつにならない」と思っている人いるかもしれないけど、うつって万人持っているの。英語ではね、「落ち込む」、も、「憂鬱」、も、「うつ病」も、“I’m depressed.” 日本語だけやたら違うの。「落ち込む」、「憂鬱」、「うつ病」。でも、みんな、depressedで一緒なの。うつはみんな持っているよ。軽いのも重いのもあります。

 クライアントで、「私のうつ、治るんでしょうか」と言う人がいますが、私はよく「うつはねー、風邪と一緒だから」と説明します。どうしてかと言うと、うつは治ると思っていたのに治らないと、またうつになってしまうのよ。「うつって治るんだなー」と思って頑張っているのに、なんか症状が良くならないとか、せっかく良くなったのにまたうつになってしまったと思うと、もともとそういうちょっとうつの傾向がある人はもっと落ち込んでしまうの。だから私は、「あれはね、風邪と一緒だと思って」と伝えます。

 みんな風邪ひいたことあるでしょう。風邪ひいたことない人いる、ここに?みんな風邪ひいたことあるよね。そうなのよ。のどが痛かったり、いまちょっと私ものどが痛いけど、頭痛かったり、熱が出たり、ひどいと肺炎になってしまう人もいる。肺炎にかかった人いる? いるよねぇ。風邪もね、ひどいと肺炎にかかったりもするの。うつもそう。うつも軽いうつもあれば重いうつもあるの。重いうつになると、ベッドから起きて、そこにあるコップが取れません。軽いうつは、映画見たり、友達と話したり、楽しい、好きな曲聴いたりすると、次の日は、普通に、また戻れる人もいる。うつは、その付き合い方という意味で風邪と似ています。どこが一番違うか、見た目でわからないこと。風邪は、「コンコン」ってもう咳をしていれば、「あぁ風邪ひいてるんだな」とわかるでしょ。うつはわかんないの、外から見ていると。だから、うつを持っている人たちが一番悩むのは、誰も理解してくれないということ。そこが一番違うだけ。

 でも、うつの出方、どういう風につきあうかという意味では、風邪とすごく似ている。いい薬がいっぱい出ています。だけど、風邪に特効薬がないみたい に、もうこれで治ったから二度とならないという保証がある薬はひとつもありません。だってみんな必ず嫌なことがあれば、ちょっと憂鬱になるよね。嫌なことがあっても、「へへへー」とやっていたら、それもまた問題だよね。だから、うつというのはみんな持っているの。それで、うまくつきあっていく。でも付き合い方はみんな違うの。みんなが自分で見つけなければならないの。それは、温かいバブルバスに入ることかもしれないし、友達と、夜中中話すことかもしんないし、大好きな映画観ることかもしれないし。私は、よく「踊る!さんま御殿」とか見ます。もうあれで、ただ笑って、とっぱらう。もう、何話しているか、わけわからないけど、だけど、ああいうのを見ていると楽しい、みたいなのない? そういうの? 私だけ(笑)?

 あとはねぇ、脳とセロトニンの関係。セロトニンという、脳内の神経伝達物質があります。このセロトニンの量が脳内で少なくなると、うつになりやすいと言われているの。ここだけが問題だったら、薬で良くなる人が、結構います。今、いい薬がいっぱい出ているの。副作用が少ない薬がいっぱい出ている。ちょっと社会生活きつくなったなと思ったら、私はなるべく、一回お医者さんに行くことを勧める。やっぱり、うつは心の問題でもあるけれど、もし脳のセロトニンの分泌があんまり良くないという体の仕組みの問題になってきた場合は、やはり、お薬の力を借りるというのもひとつの方法だからね。別にだからといって、精神異常者とかそういうことではない。

 だけど、どうも、心療内科行くとか精神科行くとなると、すごく自分が精神的に病んでいるような気になってしまって、行かない人が多いけど、行かないでいて、ベッドから起き上がることもできない、そこにあるコップもとれなくなるのでは困る。そういう風になってから病院に行ける? 行けないよ。カウ ンセリングに行ける? 行けません。ベッドから起き上がれないのだから。そこのコップが取れない。そこで自分の赤ん坊が泣いているのに哺乳瓶を取れない。そこまでひどくなることがあるの、うつ病は。風邪も、さっき、肺炎になった人が3人位いたよね? 肺炎になったら起き上がれないよね? ひどくなったら救急車で運んでもらうでしょ。ひどくなってから、自分の足で病院に行くのはすごく大変なことなの。だから自分が、社会生活ちょっときつくなってきたな、眠れない、とかそういう症状が出てきたら、いい薬があるから、迷わずとは言わない、迷ってもいい、考えてもいい、でもベッドにもうずっといないと外に出られないという状態になるまで待つのではなくて、その手前、自分で歩いて病院に行けるような位の時に行って欲しいと思うの。いいかな?

「自分がもしかしてちょっと、うつ、入ってきたかなぁ」と思う時がある時はね、例えば、こういうサインがあるかもしれない。理由なくイライラする。もう、やたらイライラする。人と会うのがおっくうになっている。仕事とか趣味に興味がなくなった。さっき言ったよね、感情がなくなるとか、したいという気持がなくなる、心が疲れているよ。何かひとつのことにこだわってしまう。もう、ぐるぐるぐるぐる上司に言われた言葉を思い出すとか、誰かに言われたことがずっと頭から離れない。睡眠に障害が出る。寝すぎるとか、寝むれないとか。食欲に極端な変化が出る。食べられない、食べすぎ、とかね。体がだるいとか、感覚が麻痺した感じ。あの、英語で numbness というけど、感覚が感じられない。頭が重かったり、頭痛を頻繁に感じるとか。そういう風になった時は、ちょっとサインかもしれないから、自分でも気をつけてみる。そういうときは、思い切って気分転換するとか、別にいきなり病院に行く必要はないから何か自分でできることからはじめてみる。

(4. もし職場で問題に巻き込まれたら・・・)
高山
 次に、すごく大事なこと。もし、職場で問題に巻き込まれたらどうするか。まあねぇ、一番いいのは、職場に問題がないところに就職するのが一番いいけど、でもねぇ、職場は人が集まっているとこだから、3人の社員だろうが、100人の社員だろうが、人が集まっているところが会社なの。だから、“人が集まる”=“問題が起こりやすい”と思って下さい。じゃあ、問題に巻き込まれたらどうするか。まずねぇ、一番大事なこと、自分の勘を信じて。人に言われたことを信じるのではなくて、自分の勘を信じて欲しい。自分の勘を信じるとはどういうことかというと、私もそうだけど、人によってちょっと違う、でも、お腹のここがちょっと、“ふっ”て、こう、なんかいやーな感じ、することあるじゃない。なんかちょっと、「いいのかな、この人」とかさ。「この話乗っちゃっていいのかな」なんて思うと、ここが“ふっ”となるときあるでしょ。ああいう勘。自分の勘を信じる。打ち消さない。勘を打ち消さない。自分の勘を必ず信じて。どうしてかというと、さっきも言ったけど、あなたたちが自分の人生のエキスパートだからだよ。あなた以外の人にそれを感じろというのは無理なの。あなたたちが自分の生活の、人生のエキスパートなのだから、あなたの勘を信じればいい。

 実際に、何か起こったら、まず記録をとって下さい。人を疑ったり、会社を疑ったりするのは嫌かもしれないけれど、とりあえず記録をとっておく。もしかしたら1回とっただけで何も起こらないかもしれない。だったらいいよね、それで。でも、何回も起こるかもしれない。そういう時は自分で「なんかおかしい。もしかして、この上司、ハラスメント?」とかなにかちょっと感じたら、とりあえず記録をとり始めてほしい。別に、人を疑えと言っているのではないの。何かが後で起こってもいいように記録をとっておいてほしいということ。その記録をとるという意味で、そこのチラシにPOSSE(ポッセ)というグループのチラシが入っていると思うけど、それは大学生が、労働の問題に取り組んでいて活動しているグループで、こういう「仕事ダイアリー」というのを最近出しました。これはすごくいい。仕事について日記が書けるようになっているのね。後ろの方にいろんな労働基準法とかの情報も書いてあるの。見本でまわすから、ちょっとみてみて。欲しい人は、取り寄せられますから。300円だったかな? 安いですよ。

 私も、1回目の留学のときにストーキングにあったのね。14ヶ月ストーキングにあいました。私は、最後、犯人を捕まえました。アメリカで裁判所にも行きました。何が一番助けになったか。私その時、女性学の修士をとっていたの。そういうふうに、性的暴力を受けた時にどうしたらいいかを知っていたの。だから、私はすぐ記録をとった。それはもしかしたら1回で終わった電話、‐電話が始まりだったのだけど‐、だったかもしれないけれども、すぐ記録をとったし、すぐ警察にも行った。私を知識が助けてくれた。知識があったからすぐ行動に移せた。その時に、証拠になったのが、私の記録と、留守電のテープ。警察にあげたリポート、全部証拠になったの。犯人はもちろんそういう証拠をもとに、刑を受けました。その時に、「いやー、あんなこと、もうないよ」と思って、何もしてないと、あとで何かあったときに、何もできないの。

 ハラスメントとか、特にやる側がすごく巧みだったりする。周りの人の全然見てないとこでやったりね、ハラスメントかどうか、グレーゾーンのところでやったりね。そうすると証拠が得られにくいです。それを証明していくのがすごく難しいし、すごく苦労する。私のところにくるクライアントもみんな苦労している。だから、記録が重要になってくる。自分で書いた記録だったとしても証拠になる。いろんな形で。必ずしも相手をやっつけるとか、相手を訴えるとか、そういうことに使うのではないの。自分の身をいろんなかたちで守る方法のひとつとして、記録はとってほしい。やっておけば損はないから。

 例えばハラスメントだったら、加害者の言動がどんなことだったのかメモを取る。もしくは、自分が日記をつけているのだったら日記に書く。それがどこであったのか、何時位にあったのか、誰か一緒にいたのだったら、誰が一緒にいたのであれば、そういうことを箇条書きでいいから書いておけばいい。あとは、電話の記録。パソコンのメールの内容。パソコンのメールの内容は、自分の個人メールに転送したものは証拠になりにくいから気をつけて下さい。パソコンのメールとかはできればその会社でプリントアウトできるのだったらした方がいい。自分の家の個人のメールに転送すると、偽装したような感じになることもあるからね。

 あとは、まあ、滅多にないけど、パワハラとかで暴力があるケース。でもあるんだよね。私のところのクライアントでもあざだらけという人がいましたからね。鼻血をいっぱい出したとか、そういうケースもたまーにあるの。そういう場合はね、傷の証拠として写真をとっておくとか、血のついた洋服はとっておくとか、そういう風にしておいて下さい。いざとなった時に、必要になるから。洗ったり、きれいにしてしまわない。写真もとっておく。いま、携帯みんな持っているでしょ。すぐに写真をとれるよね。私もこないだ階段からおもいっきり落ちて、ここにおもいっきりあざ作ったけど、それを写真にとって友達に送りました。別に誰かに傷つけられたわけではないのだけど、「こんなにひどいんだよー」って(笑)。

 お医者さんにかかったら、診断書をとって下さい。第三者がもしかかわった場合は、第三者の証言もちゃんと記録しておくこと。加害者が1人とはかぎらないからね。ハラスメントのときは、会社全体がハラッシングしている可能性もあるから。そういう時は、第三者の証言、もしくは、あなたが誰かに相談したのだったら、その人がどういう人なのか、何を言ったのかということも記録しといた方がいい。いいかな? で、まあ、さっきも言ったけど、誰かにとにかく話しを早めに聞いてもらう。

 あとは、サバイバルすることと自分らしく生きることはちょっと違うからね。「自分らしく生きたい」と思ってサバイブできない人もいれば、サバイブしたことによって自分らしく生きられない人もいる。そこで葛藤するの。特に会社みたいな組織の中だと、自分を殺してやらなければいけないことだっていっぱいある。でも、自分らしく生きたいから選んだこと、サバイバルするために選んだこと、それはあなたたちが自分の人生の、仕事場の、エキスパートであれば、その判断と選択はそれでいいです。どっちが正しいということはない。そんなことで自分を責める必要はない。例えば「なんであの時そういう風にしなかったの?」と言う人がいるかもしれない、あなたが話した時に。でも、そーんなことね、言われたって、あなたはね、その場合一番それがいいと思ったことを選択して、それがサバイバルするためのものであったのならそれでいいし、それが自分らしく生きること、自分を守ることだったらそれでかまわない。自分が選択したことに人が何か言ったから、「間違ってたんだ、やっぱり私がいけなかったんだ」ではないよ。人間は、サバイブしてかなければいけないの。 生き残ってかなければいけないの。そのためにもしかしたら自分を殺すこともあるかもしれない。それでもう、とことん嫌になったら、会社辞める人もいるかもしれない。その時、その時、選択が必ずやってくる。その時に、あなたが選んだことであれば、それがベストでかまわない。あと、情報を集める。さっきも言ったけど、労働組合。ただで相談聞いてくれるよ。法テラス行ってもいい。就職相談グループに電話してもいい。会いに行ってもいい。そうやって情報をいっぱい集めて下さい。いま、インターネットでも、いっぱい情報を集められる。活用して下さい。情報を集めれば集めるほど、自分が守られると思ってもいいくらい。もし、労働組合とかに相談したとか、法テラスに行ったという時は、それも記録しておいてね。自分はこの時にこういう行動をしたという記録をして下さい。

 じゃあ、今日はこれで終わりますけれども、さっき言ったよね、聞いたことの30%、見たことの50%、やってはじめて80%身につくと。今日30%。それから会社に行っていろんなことを見て50%身につく。そこで、自分で“私は”というしゃべり方、“私は”を主語にしてしゃべる。もしくは、アサーティブにしゃべる。やってみて80%身につくんだよ。今日、聞いたから全部できるわけではない。出来ないと思う。出来なくていい。知識として持って帰ってください。知識を持ってれば、さっき私のストーキングの話ではないけど、意識が変わる。意識が変われば行動が変わるの。そういう順番だから。焦らなくていい。知っているということはすごく強いことだよ。私がストーキング事件で、サバイブできたのも知ってたから。知っていることがすごく大事。今日話したことを思い出したらやってみればいい。失敗するかもしれない。でも、やってみればいい。失敗はみんなするのだから。

 ちょっと長くなってしまったけど、今日はこれで終わります。

(会場拍手)


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