DV根絶国際フォーラム・第10回シェルターシンポジウム

NPO法人全国女性シェルターネット事務局長:遠藤智子
【CGS Newsletter009掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

DV被害当事者支援団体の全国ネットワーク、NPO法人全国女性シェルターネット主催のDV根絶国際フォーラム・第10回全国シェルターシンポジウムは11月23日からの3日間で延べ2500人の参加を得た。初めての国際フォーラムだったが、「DV被害は国が異なっても同じ」ということ、海外、特に韓国などの先進的な制度について共有化できたことは収穫であった。何よりDVという課題にこれ程人が集まり、マスメディアに載り、総理大臣のメッセージや64団体に及ぶ全国組織の後援を得た事は嘗て無いことだ。10年の節目、主催者の一人として予想を上回る成功に安堵している。

今回は大きく分けて2つの新たな試みがあった。一つは一般参加を呼びかけること。HP立ち上げ・ラジオのスポットCM・駅のポスター掲示・記者会見などを行ったが、「DV根絶の主流化」に踏み出せたと感じたという声を多く頂いた。
もう一つの試みは「DV」に限らず「女性に対する暴力すべての根絶」を打ち出したことだ。実行委員会の議論では、隠されてしまいがちな「性暴力」についてもっと取り組もうという声が上がった。性暴力被害当事者支援にむけた分科会を設定し、性暴力被害の実態や被害状況などが報告され、性暴力禁止法を制定すべきだとの提起がなされた。
DV法改正の過程でも考えていたことだが、被害当事者及び支援者のみならず、女性に対する暴力根絶に心を寄せる人が求めるのは「結集することができる場」なのだと思う。そしてその場に「当事者の声」が響くことで、参加者は安心し、納得する。なぜなら「当事者の要望」こそが、皆の一致点だからだ。シェルターネットの提供する場は「当事者」が中心であることが明確なので、集まりやすいのではないだろうか。この点にこそ、今後の活動の活路があると私は思っている。
日本は性暴力に関する制度・政策において、まったく立ち遅れている。法整備もさることながら、被害当事者支援体制から当たり前のことができていない。女性たちは被害に遭遇した時にどうしたらよいか知る機会を持たず、訴え出た後の二次被害も多い。多くの国では、被害当事者が警察に訴えた時点で、性暴力に理解の深い支援者が派遣されるというのに。
国際フォーラムを経て、参加者の間で「性暴力禁止法を制定しよう」という声が集まりつつある。日本の現状を変えるための力を集めるには、やはり当事者の声を目に見えるものにしなくてはならない。困難が予想されるが、安心して声を上げられる仕組み、場の提供を考えていこうと準備が始まっている。女性に対するすべての暴力根絶に向けた法整備に、多くの皆さんの注目をお願いしたい。

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