報告:「『プライドワーク』トーク 納得のいく仕事」

フリーライター:竹内絢
【CGS Newsletter009掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

2007年11月17日、デルタGの主催で女性とセクシュアル・マイノリティーを対象にした「『プライドワーク』トーク 納得のいく仕事」が開催された。ゲストは今一生さんと、今さんの新刊『プライドワーク』にも登場する奥谷京子さん(WWBジャパン代表)と山本繁さん(コトバノアトリエ代表)。WWBジャパンは国連や世界銀行のバックアップを受けて1980年に設立されたWomen’s World Bankingの日本支部で、女性起業家の育成事業を行っている。コトバノアトリエは、ネットラジオ「オールニートニッポン」やトキワ荘プロジェクトなどの事業でニートやひきこもりの就業支援を行っている。これら「ソーシャルベンチャー(社会的事業組織)」の実践を聞きながら、社会にとっても自分にとっても持続可能な働き方とは?という軸でイベントが進められた。

主催のデルタGは07年10月に立ち上げられたインターネットメディア。レズビアンはお金がない、お金を落とさないから産業(レズビアン・バーや雑誌メディアなど)が持続しにくい。そして、ノウハウや歴史も受け継がれていない、というジレンマを抱えた中で、今回のイベントは、デルタGの今後を模索するという側面もあった。
今さんはソーシャルベンチャーに出会った経緯を話しながら「儲からないけど赤字もでない、というサステナブル(持続可能)なことがポイントなんだよね」と、奥谷さん、山本さんに水を向けた。お二人は実践に裏打ちされた言葉で語り、どの事例も刺激的だった。しかし、デルタGのメンバーが「レズビアンに持続可能なビジネスは可能か」という問いをゲストや参加者に投げかけたとき、ああでもないこうでもないとアイデアが出されたが、実現できそうなものは残念ながら出なかった。
欧米のLGBTマーケットの広がりは、LGBTを新たな消費者として目を付けたことによる。そこでは可処分所得の高いLGBTは尊重されるが、差別構造は温存されたまま。山本さんはイベントの中で「なんでも“強み”があるから、それを活かすことと、“何とかしたい!”というミッションがあれば、そこにニーズはある」と話したが、レズビアンの強みとは何だろうか?厳然と立ちはだかる経済格差とヘテロセクシズムを前にして、ミッションだけでは燃え尽きてしまう。レズビアンの「強み」がそのコミュニティの中でしか「ウリ」にならなかったから、カネが回らず、疲れ、リタイアしてきたのではないか。現実味のあるアイデアが出なかったことが、“レズビアンであること”をビジネスの「ウリ」にすることの難しさを物語っているように思う。
デルタGのメンバーの一人は「レズビアンのブランディングじゃなく、デルタGが疑問視したことをシェアしてくれる人を増やしていく」と可能性を模索する。また、あるメンバーは「いかにしてウソをつくかだよ。どんなウソかは選びたいけどね」と話す。例えば、エコビジネスの隆盛は、ある種のウソで塗り固められた成果だ。エコがどれほどブランドになっても環境破壊や原発に依存した政策は続いている。
デルタGの今後のビジネス展開に期待するとともに、私も一緒に模索したい。ミッション→ニーズ→ビジネスモデル→サステナブル、の最初の段階で転けてはいられない。シャカイウンドーも、同じ課題を抱えているように思う。ミッションだけでは燃え尽きてしまうし、次世代に続かない。容易に答えなど出ないのだから、私も腹を据えて取り組みたいし、一人でも多くの人と手をつなぎたいと思っている。

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