日本側コーディネーター(ICUジェンダー研究センター):井上有子
【CGS Newsletter010掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)を取り巻く環境は、ここ5年で大きく変化してきました。イギリスでは性的指向による差別を禁止する法律が制定され、同性パートナーにも結婚と同等の法的権利が認められるようになり、日本でもレズビアンを公言する議員があらわれ、さまざまなLGBTのグループ活動が活発化しています。一方でLGBTの/かもしれない若者たちにとっては、自分の性のありようを受け入れる助けとなるような情報や人との出会いが増えたかというと、そうではありません。むしろ、同性愛や性別規範を超えることに対する否定的な情報にさらされることが多く、LGBTである(かもしれない)自分をそのまま受け入れるのは依然として困難です。こういった否定的な情報と教育現場でのLGBTの若者に対する援助の欠如は、同性愛嫌悪、トランス嫌悪によるいじめの最大の温床ともなっています。日本でもイギリスでも多くのLGBTの若者がいじめの被害にあい、その中で自殺を考えたり、実際に試みるまでに追い詰められています。この生き難さにたいしては、当然なんらかの支援がなされるべきです。それと同時に、こういった困難に負けることなく、それぞれの場で偏見を理解に変えようと努力しているLGBTの若者たちも多くいます。若者に限らずすべてのLGBTの人たちが人権を保障され、生きやすい社会を作っていこうとする動きのなかで、こうした若者たちのイニシアティブ(進取性)の秘める大きな可能性を見過しにすることも出来ません。
こういった状況をふまえ、LGBTの若者の抱える困難を分かち合い、援け、またその活動をさらに円滑化するため、国際基督教大学ジェンダー研究センターと英国ブリストル市役所ユースアンドプレイサービスが協力関係を結び、日英LGBTユース・エクスチェンジ・プロジェクトが発足しました。このプロジェクトは、日本とイギリスのLGBTの若者、自らの性的指向と性自認に疑問を持っている若者、LGBTに友好的な若者たちが出会い、顔の見える交流ができる機会を作ることを目的としています。今回の交流を通して、具体的には次のような場を創造したいと思っています。
1.日本と英国のLGBTやLGBTに友好的な若者同士が出会いをともに楽しむ場
2.顔の見える交流、ウェブサイトでの交流を通し、互いの国の文化や社会、生活などについて学びあう場
3.LGBTである(かもしれない)ことなどからくる自分たちの経験や思いを分かち合い、援助しあう場
4.文化の違いを超えたLGBTやまわりの若者たちからのメッセージを共同発信する場
5.若者主導でLGBTユースに対する援助を社会に提言していく場
2008年8月には、早くもブリストルから日本への若者の訪問が実現し、交流ワークショップや公開イベントが行なわれました。2009年には日本からブリストルへの若者の訪問が実現する予定です。今後も交流を継続していき、長期的には、日英での交流の継続はもちろんのこと、国際的にLGBTの若者が交流できる基盤づくりへの貢献を目指しています。
このプロジェクトが今後、LGBTユースに対する援助を広げていくためには、皆様の援助と参加が必要不可欠です。プロジェクトの詳細や今後の予定、また援助・参加の方法については、http://subsite.icu.ac.jp/cgs/にアクセスしてください。皆様のご参加とご支援を心よりお待ちしております。