地方から見る携帯電話フィルタリング問題

青森セクシュアルマイノリティ協会 ~にじいろ扁平足~:創
【CGS Newsletter010掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

Nijiiro Hempeisoku logo昨年末から、未成年者を対象とする携帯電話フィルタリングを巡って政府や企業、第三者機関、更には国会と様々な動きがあるが、私にとってこのことは無関心ではいられない大きな問題である。性的マイノリティについての正しい情報の発信や交流のためのサイト、個人のブログまでもが、「有害」として一律フィルタリングの対象となる危険性を孕んでいるからだ。今ある偏見を助長し、同時に性的マイノリティの支えを奪ってしまう結果を生み出しかねないのである。

私が初めて自分以外の同性愛や性同一性障害の人の存在をはっきりと知ったのは、成人になってからだった。姉に勧められたパソコンでのインターネットで、偶然に同性愛の交流サイトに行き着いたのだ。それまで自分のような人はほぼ皆無と思い込み、幸せな未来などまるで思い描けなかった私にとって、まさにその瞬間は「今、この世に生を受けた」と言えるくらいのものだった。人生が変わった。
しかしパソコン向けのサイトでは、地方にいる私の地元の仲間と出会うことはほとんどなかった。都会にしかいないのかもしれない。そう思って数年が過ぎた頃、偶然とある掲示板で地元の人達の書き込みを見つけた。
その掲示板は携帯電話からもアクセスできるようになっていて、彼らの多くは携帯電話で書き込みをしていた。地方では個人でパソコンを持っていない人が多く、彼らは仲間との交流を携帯電話に頼っていたのだ。その中には未成年者も多い。家や学校から飛び出せない彼らは、差別や拒絶を恐れ周囲になかなかカミングアウトできない。だからこそ自分の手の中にある携帯電話を通じて、仲間と出会い、支え合っている。
性的マイノリティに対する偏見は未だかなり根強く、地方で私達が自分らしく生きることはとても困難だ。学校は同性愛などについて何も教えてはくれないし、誤解と嫌悪により知識や情報を拒絶してしまう大人も多い。それでも私達は、本当の自分でいられる場所を探し、自分の幸せをつかもうと必死で生きている。
この度いわゆる「青少年ネット規制法」が成立した。第三者機関もサイト認定の準備を始めている。フィルタリング問題は、まだまだこれからだ。若者達の笑顔が奪われることのないよう、正しい認識と公正な議論がなされることを切に願う。幸せになる権利を誰もが持っているのならば、幸せを探す手段を奪うことなど、誰にも許されないはずなのだから。

にじいろ偏平足公式サイト

月別 アーカイブ