ICU卒業:石川健一
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
<子育てに積極的に関わってみたい男性>
<出産後も自分の仕事を続けたい女性>
<子育て支援を充実させて人材確保・定着を図りたい会社>
この3拍子揃って初めてうまくいくのが男性の育児休業です。
例えば専業主婦家庭では、父親は1か月を超えての育休を申請できません。また有給休暇をほとんど消化させないような職場環境では、長期にわたる休暇を認める余裕がありません。日本の男性育休取得率が未だ0.5%前後なのは、単なる男性の意識の問題だけではないかもしれません。私の場合は非常に運良く3者それぞれの思惑が合う形で、子供の生後7か月から1歳になるまでの約5か月間の育休取得ができました。
育休期間中は不慣れな生活に苦労もありましたが、周囲(特に妻・家族・児童館)の理解・協力に支えられて無事に過ごせました。子供が初めて何かを出来るようになった瞬間(寝返り・おすわり・ハイハイ・つかまり立ち……)、そばにいて誰よりも先に立ち会えると言うのはかけがえのない喜びです。初めは母乳からミルク、母親から父親へと変わることが子供にとってストレスにはなりはしないかと心配もしていたのですが、全く問題はなく、子供に生来備わっている環境適応力の高さにはただ感心あるのみでした。
ところで育休の後には、夫婦共働きでの子育てが始まりますが、その際に必要不可欠なのは保育園。ここで育休取得者が突き当たる保育園の確保の問題があります。
まず、何かと条件が良く人気も競争率も高い認可保育園では、年度中に途中入園できる可能性はほぼ0%に近く、4月入園に毎年応募して少しでも優先度を高めていかなければ入園が困難と言われています。ところが一方、5月1日時点でどちらかの親が育休中である場合、4月1日からの入園を認められません。育休を取るか、保育園を取るかのジレンマです。私の場合、1年目の応募では運良く(?)落選しましたが、もし認可保育園への入園が決まっていたら、制度上4月の1か月間しか育休を取得できないわけです。
さて職場復帰に際し、保育先が見つからないなどの理由で、子供が1歳6か月になるまで育休の延長が可能ですが、少子化社会といわれる割に保育園の数が少なすぎる現状では、保育園に入りたくても入れない待機児童の数が非常に多く、スムーズに保育先が見つかることはめったにありません。半年延長できても職場復帰の日程の目処を付けられないまま育休を取るのは非常に不安になります。女性の育休取得者で、保育先が見つからず結局復帰できずに退職してしまったという方の話もよく耳にしました。私の場合、予め認証保育所(入所の要件が認可保育園よりもゆるやか)に、子供が1歳となる9月から入園させてもらうために、4月から毎月在籍料を支払う形でこの問題を何とか解決しました。育休期間中は雇用保険から平均報酬月額の3割が育児休業給付金としてもらえるのですが、その大半がこの在籍料へと消えていきました。
育休と一言に言っても、大きなメリットの裏にまだまだ多くの課題を抱えています。ワークライフバランスの促進が今後一層重要性を増していく中で、当事者が経営組織や行政の都合に振り回されるのではなく、それぞれの当事者の立場に即した自由度の高い子育て支援制度へと改善されていく事を切に願っています。