政権交代とジェンダー ~衆院選に思う~

■8月30日の衆院選では、民主党の「圧勝」というよりも、自民党への国民の「圧倒的な見切り」が顕わになった、という声も聞かれます。自民党がなぜ「見切られた」のかを、「ジェンダー」という視点から考えるための、興味深い資料があります。

■WAN(Women's Action Network、 http://wan.or.jp/ )が、選挙に先立って各政党にアンケートを行いました:アンケート結果 (.pdf)

ご覧のとおり、「女性の権利」に関する二つ目の質問では、〈『ジェンダー』という語の使用禁止・排除について〉、自民党のみが、理由の記述なく「排除は正しい」と回答しています。

■このことを含め、今回の政権交代について、CGS所員・スタッフは、たとえば以下のように捉えています:

「ジェンダー」概念ひとつのセンスにおいても、世界の常識からかけ離れた政党が、このたび日本で政権を失ったことは、健全な事態だと思います。「従軍慰安婦」問題も未解決であり、多くの若い世代が、日本からアジア諸地域ふくむ世界中に渡る時勢にもかかわらず、これまで自民党が「知の鎖国」を作っていた側面は大きいと思います。新政権には、「海外でそうだから、しぶしぶ」を脱し、日本独特の事情にも敏感な、「男・女・それらの枠組に収まらないと考えている人々」のための、自発的な政策、啓蒙活動(への援助)を期待します。【加藤】

今回の政権交代は、世代交代に伴う「文化変容」の側面も有しているかもしれません。ある文化的慣習から次文化へ。私たちは何を変えたくて何を維持したいのか。また、今、女性は何を希求して何に対して責任を負う心構えがあるのか。一人一人が問いながら、新政権が出す(と期待される)「結果」を吟味していく必要があると思います。【森木】

アンケート結果を見ても、自公前政権が女性や性的マイノリティの人権配慮に欠く政権、つまりは時代の要請や世界情勢の変化に鈍感な政権であったことが確認されます。今回の選挙結果は、有権者のひとりひとりが、そのような前政権にNOを表明したということではないでしょうか。それだけに、民主政権が過大な変化の期待に応えることの困難も大きいと思いますが、見守りたいと思います。【生駒】

今回の政権交代よりも、かねてより人権政策を活発に主張してきた社民党や共産党が長期的に低迷し続けている点を危惧しています。民主党の「大物政治家」と呼ばれる人には女性が全くと言っていいほど名が挙がりませんし、人権問題に積極的に取り組んでいる人もほとんどいません。ある意味「男尊女卑」が分かりやすかった自公政権以上に、政治を批判的に見る必要があるだろうと思っています。【川坂】

衆院選においてジェンダーやセクシュアリティが争点になったとは考えにくく、 WAN によるアンケート結果も有権者の票を新たに動かす程には影響力を持たなかったと考えます。自民党への山積した不明瞭な不信感がネガティブに票を動かしたのであって、課題は「ジェンダー・セクシュアリティの問題を考えたら、ぜひこの党に入れたい!」というポジティブな票が集まる政治空間を作ることでしょう。この政権交代の時期にこそ絶望し、フェミニズム・クィア運動が政治家へも有権者へも今後どのようなメッセージをどのような形で発信して行けるのかを考えなければいけません。【匿名希望】

■ちなみに私は、(再)当選した自民党の女性衆院議員のうち、個人ホームページで「ご意見を募集」しているすべての方に、WANアンケート結果のサイトを送り、ご意見を求めました。もちろんお忙しい方々ゆえ、目下お返事はありません。「本人が一通一通目を通し」「ご意見を政治活動に生かして」いただければ良いのですが。議席がいくつであれ、自民党も、日本の政党の一つであることに変わりはないのですから。  【文責:加藤恵津子】

***NEWS*** 9/15/2009
国営スウェーデン・ラジオが、日本でのCGSなどへのインタビュー取材を基に放送したニュース「政権交代によって、日本の女性をめぐる社会状況はどう変わるか?」が、同局のサイトに載りました。

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