ICU卒業生による座談会--学生生活を振り返って

【CGS Newsletter012掲載記事の全文バージョンです。ダイジェスト版はこちらからお読み下さい。】

鈴木直美(CGSスタッフ/以下:鈴)
今日はですね、6月に卒業される方々に、在学中にはなかなか言えないようなことまで含めて、ICUの「ここがこんな風によくなるといいな」っていう話を......いろいろあると思うんですよ、ここで学生生活していると......そういった話をしていただこうとお集まりいただきましたー......ってやろうと思っていたら、ずいぶん前の卒業生や在学生まで集まってしまった感じで(笑)、いっそ趣旨はそのままに、みんなで匿名座談会とさせていただきたいのですが、まぁそんな感じでよろしくお願いします。

私としては、これからシンポシオンやCGSがICUの在り方をどう評価し、またどう改善に向けて要望を出していくのかという重要な問題にかかわってくる部分ですので、たとえばこれから建設ラッシュが続きますよね?そういった新しい建物にどうクィアの要望を届けるか、またそういう学生の声をCGSとしてどうサポートできるかということにかかわってくる問題でもありますので、ぜひ皆さんの忌憚ないご意見をここでお聞きしておきたいと思っています。

A
学生でいるときには言いにくいよね......っていうことも多いからね。むかし「クィアという経験」というイベントをシンポシオンでやったんだけれども(※2)、ああいう感じで「クィアがこのキャンパスで生活していく上でどう感じているの?」っていうことを伝えようという方向でざっくばらんに話していけたらって思ってます。

B
そうね......いま思い出したのはコメントシートの件だけど

参加者
(笑)

C
あれね!もしよかったら話してほしい。

B
授業の一番最初の日に、たぶんプライバシーを考慮してのことなんだけど、授業中に呼ばれたいニックネームをコメントシートに書けと言われて。つまり授業中にコメントシートの内容を公表されたときに、先生は誰のことかわかっているんだけど、呼ばれるのはニックネームだからみんなは誰のことかわからないというシステムなんだ。で、私は「a homosexual asian male bitch」って書いたの。そしたら次の週に呼び出されて......帰り際だからもうあんまり学生もいなかったけど、教室で怒られたの。「こんなん、呼べるわけないだろう!」って。

C
呼びたくないってこと?

B
ううん、「呼べるわけない」って言ってた。で、具体的にどの単語が?って聞いたら「bitchだ」っていうわけ。


あ〜......はい。

B
それは確かにね、と。でOKって思って、Homosexualのほうを問題視しているんじゃないんだったらまだいいよと。で、「書きなおしますねー」って言って次回から「a homosexual asian male girl」ってしたのよ。

参加者
(笑)

B
でもそれからもボクのニックネームが呼ばれることはなかった。ボクがたまたま全然ためにならないコメントしか書けないバカだったという可能性もあるけれど、先生のウェブサイトでコメントがいくつかピックアップ紹介されている中にボクのコメントがあったから、紹介する価値のないコメントばっかり書いていたわけではないと思うんだけどなぁ。


紹介されてたんだ?

C
うん。でも他の人とは違って、実名の下の名前がカタカナで書いてあった。「あれ?」と思って先生にメールしたら、「君がニックネームを書き忘れたんじゃないか」と言われて・・・。結局そのコメントはウェブサイトから消してもらったからいいけどさ。


「問題はbitchだ」って言ってたんだよね?

B
そう、だからgirlに書きなおしたんだけど、結局人目に触れることはなかった(笑)


そう......なんだ(笑)

A
そうやって、先生から直接「どうなのコレ」って感じる扱いを受けることもあって。しかもよく聞くんだよね。そこまで直接的じゃなくても、たとえば授業で先生が......なんだろう...

B
「ホモネタ」とか?

A
そうそう先生が「ホモネタ」で笑うとか、恋愛の話をしているときに「男の子と女の子の」っていうのを空気のように前提で話したりとか。ひどいなって思うけど、でも授業を取っている身としては、それはおかしいですよっていうことは言いづらい。

参加者
うんうんうん。

B
ある時も、非常勤の先生で、ヨーロッパにいた時の話で「サウナに入ったらゲイがいてwhew!」とかいう話でクラスがドカーンと笑うってかんじ......。

参加者
......

B
その時はコメントシートに、コメ粒みたいな字で両面にわたって抗議したら、次の授業で済みませんでしたって謝罪してくださってたけど。


授業からそんなか......。もっと、施設面で不足しているところって目につくから、今、建設ラッシュでそういう面に目が行きがちな時期だっていうのもあって、そういう話になるって思ってたけど、そうか、そもそもクラスの中でさえ守られていないんだね。

C
うーん......そういう「ネタ系で笑う」とかもそうだけど、もっとはっきり「ここ」がおかしいって指摘しにくいものもたくさんあると思うんだよね。たとえば、自分は宗教が専攻で、そうなると宗教関連の授業をたくさん取ることになる。そこでは、キリスト教的に保守的な層っていうのは確実に学生にもいて、でもそういう中で、先生はけっこう...例えばいろんな視点を取り入れようとしたりして頑張っている......と。例えばフィリス・トリブルっていう有名なフェミニストの神学者がいて、そういうのを授業で取り上げて、みんなで読みましょうってリーディング・アサインメントにも入れてくる。
発表の担当を毎回決めるから、私はトリブルをじっくり読みたいなって思うから立候補して、自分なりに読み込んでプレゼンをするわけ。「こういう視点がキリスト教には足りない」とか、「フェミニズム的にはどうのこうの」って感じの話をしたんだけど、空気が......「ププ」みたいな。

参加者
(笑)

C
「何あの空気読めてないコ(笑)」みたいな。でもね、そういう空気はまぁ、我慢しましょうと。よくあるしね(笑)。でも、質疑応答のときに「そもそもフェミニズムという学問は非常に偏っているのだから、この議論に耳を傾ける必要って本当にあるのか」っていうお決まりの疑念が投げかけられるわけですよ!

参加者
(笑)

C
じゃぁそれを言っている君は「偏って」いないつもりなわけ?っていう、これまたありきたりの反論が自分の中からわいてくるんだけど、そうやって切り返せば切り返すほどますます「ププ」って。


まぁ〜なじみ深い空気だねぇ。

参加者
(笑)

C
でしょ〜?


たぶん「ププ」で黙らせるのが一番有効だって知っている......んじゃない?無意識にでもね。「おまえは偏っていないのか」っていう問いにはだれも答えられないから、笑って黙らせるしかない......という感じ?

A
真剣な人には笑って流してやればいい、みたいな空気ってこと?

B
「何真剣にやっちゃってんの、"しかもジェンダーなんて"」

参加者
ああ〜(笑)


先生はそういう時どんな感じの対応をするの?

C
立ち往生......って感じが多いね。


あぁ、うーん。でもさ、自分でそれをアサインしたんでしょ?授業に必要だって。

C
そうそうそう......。私には慰めの言葉をかけてくれたんだけどね。でも全体に積極的に訴えかけるようなことはなかった。

B
自分で組み込んだならさ、その必要性をちゃんと説いてほしいよね。
これはあくまでも印象だけど、たぶんブラック・チャーチの話とかだったら「ププ」っていう風にはならないんじゃない。力説したって。

C
そうなんだよ〜。ただ......そもそもあんまり社会的な問題を語ることが少ない......キリスト教の中だけで語る、っていう感じの授業だから、たとえばブラック・チャーチみたいなトピックも、「ププ」とまではいかないけど、あまり歓迎もされない感じではあるんだけど。

B
ただ、そういう、社会をいったん切り離して宗教について真剣に検討する空間っていうのももちろん必要だよね。

C
そうなんだ。ただ、そういう空間に「フェミ」が入ってきたときに一気に「ププ」っていう流れになるっていうのがね。"完全に"関係ないじゃーん、みたいな判断が働くっていうのが。

A
やっぱりその先生がなんでそれをアサインしているのかがよくわからなくなってくるよね。少なくとも他の学生はわからないままだろうね。

C
本当に立ち往生って感じで......欧米から帰って来られたばかりの新任の方だったので、とくに保守的な場、というわけでもないのにそういうサポーティブじゃない空気が生じるっていうのが、たぶん......


予想外な感じだったのかな。

C
そうそうそう。そんな感じだったんじゃないかな。

B
でもさ、そういう先生をサポートするシステムも必要だよね。っていうか欲しいよね。

C
うん、ホントに。私がそのときのしんどさをミクシィの日記で吐き出したときは、同じクラスを取っている友達から「私もあの「ププ」っていった人たちの論理はヘンだと思った」っていう反応があって、そう思っている人も私以外にもいたんだけれども、それすらも表に出せない雰囲気がクラスにあった......んだよね。だからそこら辺の声を拾うためにもね、先生がちゃんと対応できないと難しいから、その先生をさらにサポートするシステムっていうのはね、さらに必要になってくると思う。

B
CGS主催でさ、一年に一回とかでいいから「あなたのクラスにクィアやフェミを導入するワークショップ!」みたいなの出来ないの?


あ、いいねぇ。

B
こうやってやるといいですよ〜、こういうやり方をするとドン引きされますよ〜、みたいなね。


起こりうる問題をあげて、問題別対応法......とかね。CGSの先生方にも蓄積あるだろうし、それだけじゃなくて知恵の交換の場にもなれば......

B
うん。たぶん誰にも教えられないからね。全員なにかしら失敗しているから。

参加者
(爆笑)

B
だってCGSの運営委員の先生たちでさえ「ププ」ってやられているこの現状......

C
そう!そうなんだよねぇ〜


ホントにねぇ。運営委員の先生方のTAもやることがあってさぁ、物を配りながら後ろのほうまでずっと歩いて行くじゃない。後ろのほうで話されていることとか、耳に入るといちいち凹んでしまうんだよね〜......。
なんでなんだろう。その......良くて「ミクシィなら言えるんですけど」扱い。ふつうにしてても「笑われる」のがやっとなのとか、なんでなんだろう?!
......ああ、ただそれを思うとさ、「a homosexual asian male girl」はウェブ上でさえダメだったわけでしょう?

B
なんか、だいぶ人を特定できそうな感じになってきてるけど、大丈夫?

参加者
(笑)

B
で、なんだっけ。ああ、girlね。アレ私のプライバシーを侵害してるしね。他がみんなニックネームのところを自分だけ本名出されているわけだから。なんかの配慮だったのかもしれないけど、だったらまったくランダムな名前でも入れておいてくれればいいのに。


Cいと面倒くさいとか、もっと言えば変な主張入れられて困るとか、そういうのが嫌なら字数を限るとかいくらでも自衛手段はあったわけでしょう?それをちゃんとやっていないわけだから......

B
ただ「Homo」とかいくらでもできるけどね、そうなっても。「え〜次はHomo君のコメントですね」とかって(笑)。

参加者
(笑)

C
そうなるとさ、匿名性って言ったときに、そのサイトの存在は、シラバスで公開されるわけだから授業を取っている学生のみんなが知っているじゃない。そういう"先生の"サイトって知られている場所で、「bitch」なり「girl」なり「homosexual」なりっていうのを載せるのは......「自分の品格にそぐわない」っていう判断だったんじゃないかなあって思うんだよね。つまりそこにはもともと匿名性がないじゃん。"先生の"サイトで、"先生の"判断で何が掲載されるか決まっているんだし、そもそも先生はニックネームという匿名性の向こうにだれがいるのか知っているんだし。そこなんじゃないかな。「ミクシィなら言えるんですけど」問題との違いは。


そうか。たしかにミクシィとは違うよね。先生のサイトなわけだしね。

B
そもそも分からないままなのがさ、「a heterosexual male boy」だったらOKだったのかなっていう。asianもhomoもmale girlもなしで。


たしかに、どこが「フィットしない」っていう判断だったのかはわからないままだね。

B
ああ、思えばそこまで完全に変えればよかった〜。それで問題なく載ったらおもしろかったのに。


面白いって(笑)。

D
いっそasianもなくすんじゃなくてjapaneseにすれば?

B
っていうと結局は......「a heterosexual japanese male boy」......?

参加者
(笑)

C
もうなにも指してないよね。(笑)

参加者
(爆笑)

B
あ、でもホントにそういう透明性が求められていたのかも。っていうかそこが「透明」になるのがムカッとくるんだよね。

C
うん。

B
そういう「なにも指していないもの」を求められていたっていうのがね。


本当のところはその先生に聞かないと分からないけど、でもそれはかなりいい線いっている指摘だろうね。なるほどね。何かを「指して」いたから、方向性があったから、だから駄目だったんだろうっていう......。それは「そもそもフェミニズムは偏っているのだから」っていうあなたの体験とも同じなんじゃない?

C
同じ同じ。何かを指している......方向性があるものだからダメっていうのが。

B
でも「a heterosexual japanese male boy」も偏っているんだけどね、思いっきり。

C
「思いっきり」ね!

B
でもそれは......本当に......ああ、「キビシイ」わ〜!
私にとっては、boyはまだしもheterosexual japaneseって!

C
そうねぇ......。

参加者
..................

C
考えこんじゃうね。
......そういう空気感っていうのはさ、授業中じゃなくてもICU全体にあると......思う?

B
まぁ、社会全体にあるからねぇ。

C
でもクラスの中っていうのは、責任が教員なり大学側にあって、そういう「ある程度保護された空間」で、教員はそれをコントロールしうる......場面によってはコントロールすべき......で。
だからこそ、そういう社会の中にある「ジェンダーとか、クィアとか、フェミとか、ププー」っていうものが、本当だったらそこでは排されて議論ができるはずなのに、クラスの中ですら、というかむしろある場面ではより過剰になって現れているように感じるんだよね。

B
やりようがないわけでもないとは思うけどね。私がアメリカにいた時のフェミニズムの先生はすっごいフェミニストで。それももう、ある意味"よくない"ぐらいフェミニストで......


どういう意味?!......まぁあの、なんかニュアンスはつかめるんだけど(笑)、深く突っ込みたくない気分にさせられるわー。

参加者
(笑)

B
その人の文化人類学入門、って感じのクラスだったんだけど、でももう"徹頭徹尾フェミ"みたいな。それで、クラスで「ププー」みたいなことがあると、(強い声で)「何が面白いの?」

参加者
..................

B
って、10秒ぐらい固まる、みたいな。

参加者
(笑)

B
そんなスパルタな......スパルタフェミって......語義矛盾だよね?

参加者
(笑)

B
でもそんな風に、現実には存在するよね。(笑)


うん。で、それが結構有効だっていう......少なくともフェミやクィアをやる上でのクラスマネージメントにおいてはね。

B
他には?今まで出ていない問題を経験した人もいると思うんだけど......あの映画の話は?

D
ええと、いつだっけ?

B
授業でDVD見た時の話......。

D
......

B
えっと、授業の時間が限られてたからガーっと早送りしながらDVDを見てたんだけど、男性警官同士が二人、道ばたでいきなり警官の制服を脱がし合いながら抱き合っているシーンがあって、ジェンダー・セクシュアリティ的にはすごく注目すべきところなのにそこは完全にそのまま早送りだったの。でも直後に主人公が手元に米ドルを持っているシーンになって、そしたら先生がサッと巻き戻して「はい、ドルに注目!」って言ったの。


アハハ!

D
ああ、あったね。

B
あれ......?毎週毎週なんかしら怒ってなかったっけ?

D
(笑)その時は一つ一つ覚えてたんだけど、嫌なことはさっさと忘れてしまった......

B
まぁ日々積み重なっているからねぇ。一個一個覚えていたら死んじゃうよね。

D
うん。

A
なんか......さっきから「このネタを話すぞ」って用意しておかないとパッとエピソードを話せない感じがする。バラエティ番組に強いキャラじゃないと対応できない......みたいになってる。

参加者
(笑)

B
どうするのがいいんだろう。

C
どうやって話す?

B
テーマを三つぐらいに絞ろうか。いまは授業と教員に対する違和感を話したんだよね?

C
やっぱり寮についても入れたい......そこからシャワールームとか、現存の施設の不備についても話していけたらって思って。

A
そう......だね。

B
じゃあ、いままでが大まかに言って教員にも問題がないかっていう話だったと、で......

C
寮とか、施設について話していきたいなっていう......。


あ〜OK。ただ、ちょっとその前に私が確認しておきたいのは、今までの話で、クラスは社会と一旦切り離されて保護されるべきだけど、先生のマネージングとかの問題でうまくいかないこともあったということだったけど、全体として、社会の問題含みの空気感から守られているっていう実感は少しはあったのかな?それともまるでなかった?

C
その......社会と大学って言ったときに、大学生って大学にいる時間がものすごく長い。そこで社会とのつながりって言ったときに、就活になって初めて「社会ってこんなに......!」ってなったりするほど、社会って「大学だけ」で、その程度の意味では......

B
そうね。クィア的にはさ、高校とかのほうが地獄で......


じゃあ、そこら辺よりはまし......

B
いや!でもわかんない。人による。
しかも地元から通っているとか、そういう変数によって......その「地元」にもよるし......そこでかなり変わってくるから。クィアの中の例だけど、大学という新しいコミュニティより、むしろ実家の周りのコミュニティのほうが......たとえばカミングアウトはしていないけど、もうみんななんとなくわかっていて、「それはそれでいいよね」って思われている場合とか、そういう例もあるし。
その場合大学になると、人として、というよりは学生としてクラスメイトとして改めて見られる......そこでは当然「ヘテロ」として新たに見られるってことだから......どっちがつらいかって言ったらいろんな状況によっても人によっても違う。
だから「田舎だからきっと保守的できっとつらかったはず」っていうのは違うんだよね。

A
同時に、高校にいる間は......はっきり制服があって「男子生徒」と「女子生徒」ってはっきり分けて扱われてて、周りいる友達にもあまり言えないし......って感じだった子が、大学に入ってから行動範囲が広がって、それこそシンポシオンのような場所も含めて広がって......。
そこで同性愛とかバイセクシュアルとか......それぞれにコミュニティとつながって、そこで友達が出来て......っていう話も確かにききますよね。
その時に、親と距離ができたこととかも、一因としてよく言われるなっていうのが、聞いた話からも感じられて。


うんうんうん。

B
大学にいる時間が長いっていう話もさ、学生にはバイトもあるじゃない。

参加者
ああ〜

B
その時に、バイトの場合のほうが一見辛そうって感じがあるんだけども、でも例えばアウティングされたりとか、嫌な思いをした時に、でもバイトならやめられるじゃん。でも大学辞めるのってものすごい決心が必要だし、不利益も多いよね。そういう意味では、カミングアウトし易いかし難いかっていう点でいえば、大学だって厳しいよねって。高校とあんまり変わんないぐらいかも。


賭けられているものが大きいだけに、失敗できなさ......で言ったらね。つまり失敗っていうのは、その人の失敗というよりは周囲の失敗なんだけど。

B
ジェンダーエクスプレッションを重要視する同性愛者とか両性愛者もいるけど、そうじゃない人もいるじゃない。っていうか......"ジェンダーエクスプレッションのベンディング"、これを「自分にとってはそんなもの...関係ない」と思える人っていうのはいっぱいいるじゃない。そうするとそこら辺は「言わなければバレない」みたいになってくるところもある。そうすると言うか言わないかの選択の話になってきて、言いやすいのはバイトみたいなテンポラリーな関係だったりして......


一概には言えないんだね......。

参加者
うん。
そう思う。

A
あとは......そうだな。大学に入って逆に難しい点っていうので僕がぼちぼち聞くのは、学校の中にこういう話ができる人がいるっていうのがそもそもすごい貴重なことで、つまり、難しいというのがある。
普通はサークルの友達、ゼミの友達の関係っていうのがすごく重要で、それに加えてバイト先の人間関係ができて......けれども、その人たちには言えないというのがやっぱりあって。
大学の中でも、たとえばシンポシオンとかCGSとかで、セクシュアリティに興味を持っているっていうことでまず繋がって、そこで話せそうな関係になってはじめてカミングアウトしてる、っていう人って多いと思うんだよね。セクシュアリティのことを話せる関係っていう中で人と会ったりしないと「自分はやっていけないな」って感じる子っていうのは多いと思う。

参加者
うんうん。

A
そうすると、他の人たちと同じように授業で忙しいし、バイトもしていてサークルもあるんだけど、それとは別に、"話せる"グループに参加して......ってなるということで。ただ、学生だから実際に学業で忙しくなるし、その"話せる"グループのことでも、大学の中だけじゃなくってもっとたくさんの人と会いたいと思ったら大学の外に行かなくてはいけないから、ここでも結構忙しくなるので、そうすると両立どころかトリプルとか、場合によってはもっとってなって......。やっぱりここで実際に"大変"になってくるというのは意外に大きな問題だと思う。

参加者
うんうんうんうん。

C
それが、気軽に近づけない感じを与えているのは確かだよね......。

FFF
次の代に活動がつながりにくい......ってこと?

C
うん。ただ、私個人としては、ICUに限定した場合、やっぱりシンポシオンがあったということは大きいことだったと思うのね。ここで生活していく上では。忙しくてもね。

B
それでも認知度が低いのがね......シンポシオンも、CGSも。


活動がつながらない別の原因として?

C
まあねぇ。でも昔に比べたら......。

A
逆に、「CGSとか行ってると自分が"そう"なんじゃないかって思われないか不安で、やっぱりちょっと行きにくい」っていう声も結構聞くよね。

C
うん。いたいた。


そっか......。近づきにくい理由はたくさんあるなぁ。

B
もう、アンダーグラウンドな組織を作る?そしたら入りやすく......

C
それはそれであるのよ。歴史も長いのが。

B
そっか......。


私が今気になっているのは、「自分が"そう"なんじゃないかって思われたらイヤ」って、ヘテロが言ってたら嫌だなーって。

A
たぶん、両方あると思います。当事者と、ヘテロと......。ストレートの人で「CGSに行くと、セクシュアリティの話をしているのかなー、同性愛なのかなーって思われないか心配」って言っている人もいて。

B
って言っているクローゼットって可能性もあるから

A
そういう可能性もあるし、ストレートの人もいると思う。


そうね。そこは決めつけたらいけないんだね。複雑だなー!
どうアプローチするのがいんだろう。近づきやすさ、っていうかゲットー化の問題には。CGSにとっても重大な問題で、考えて行かなくちゃなって思うんだけど......。

C
どう?そこら辺、現役は。

D
......ぶっちゃけたところ、CGSに関わっていない人とあまり話していない......。

参加者
(笑)


新たな解決法が......。もうこれ一足のわらじに決めるっていう......そうするとよそで忙しくならないしね。(笑)

B
だって自分のアパートの次に落ち着くんだもんね。ここ。

D
......そう。

参加者
(爆笑)

C
なに、今の間は。

D
いや、他に落ち着く場所あるかなって思ったけど、なかった。


それは、いい解決法だけど、結構人を選ぶだろうね。っていうのは、他にも興味のある人っていうのはもちろん多いだろうからね。
......ただ、正直なところ羨ましいなって思う。私が学部生のときにCGSがあれば......本当に、居場所がなくて、授業だけ受けてあとはできるだけ早く去る、って形になってたから。人間関係は学外でしか作れなかった......。私には、4年間もあったのにその間のICUでの記憶というのがほとんどなくて。ここさえあればずいぶん違ったのに、とは思う。

D
その点で、今話したり仲良かったりする人の中で、CGSに来たことがなかったり存在を知らないっていう人は、私がCGSに来出す前から仲良かった人だから......つまりCGSに来るようになってから"CGSに来たことがなかったり存在を知らない人"と新しく友達になったことがない......っていう。だからそこでどういう空気になるのかは、私もよくわかってない。


前からのお友達は、急にCGSに行き出したことに対して何も言わないの?

D
いや、別に自由に......そこで楽しければいいんじゃないってかんじ。

B
セプテン[九月入学の学生]はちょっと事情が特殊で、セプテンって最初の一年間ガーっと仲良くて、次の年はバーってすごい離れるんだよね。それぞれサークルとか、好きなところにバーっと行っちゃって、最初の一年の友達関係っていうのはすっごい薄くなるの。

D
そうそう。一年間っていうかJLP[日本語教育プログラム]がある期間だけね。

B
そうそうそうそう。セプテンってたいてい、海外から帰ってきたばかりじゃない。9月の時点で。そうするとJLPのセクション[クラス]で作るしかないのよ。人間関係を。

D
そう。

B
だけど帰国子女も海外から来た人も、だんだんみんな日本に慣れてきて、違う関係を作りはじめるんだよね。その時に、JLPの人間関係っていうのは......

C
積極的にこの人たちと一緒にいたいってことで出来た人間関係じゃないもんね。他に選択肢がないから、ってことでしょ?

B
そう、実際その人たちとしか会わないから。

D
しかも、この大学の中で一番自分と状況が似ている人たちだからっていうのが強い要因としてあって、その背景には、自分たちはエイプリル[4月入学の学生]の人と違うだろうという認識もある。

B
一学期遅れてくるから、エイプリルの人たちとはもう友達ができないだろうって思ってるのね。すでにグループもできているところに入るわけだからさ。


そうね。「居場所」というのはすごく難しい問題だね。誰と状況を共有しているか、とかさ、色々な要因で決まってくる。

C
ICUって、それがすごく難しい場所かなって思う。つながりを作って......というのは。

参加者
うんうん。

C
与えられたセクション[クラス]と......サークルも皆が入るわけじゃないし、そういう中で縦の関係を作ろうとするとね。たとえば私はCGSのほかに寮にも途中から入ったんだけど、それまではそれこそセクメ[セクションメイト=クラスメイト]みたいな横のつながりしかなくて、やっぱりもしCGSもない、寮もないっていう状況だったら、サークルにでも入らないと縦の関係は難しい......。

B
3年過ぎればゼミでちょこちょこ出来るけどね。ただそこまで辿りつくまでにもいろいろあるから、そこで先輩の知識や経験のプールにアクセスできないというのは不利なのかなぁ。

C
専攻にもよると思うんだよね。私なんかは、ゼミって言っても、同期は二人だけだし。


私もそうだった。

A
そこは分野でかなり変わってくるよね。

B
実験とかがある......例えば理系だったりすれば、早くから実験を通して縦のつながりができるし、そこにいるのは同じメジャーの人間ばっかりなわけだから、集まりやすいのはあるかもね。後は社会学とか政治学とか......


心理学もよく集まっているかな。

C
そうやって考えたときに、ジェンダーのクラスっていうのはあんまりそういうシステムっていうのがないじゃない。

参加者
ああ〜

C
ただその代わりをCGSがしているかなっていう気はしていて。

A
そこは......そうなんだ。ジェンダーのクラスもグループワークあるのにね。

C
でも、グループワークの中でいろんな人が混ざることはあっても、何かが......

B
コアな人たちっていうのがいないんだよね。とくに求心力を持ってグループを引っ張って行く人がいたりとか、グループ全体がガッとやる気になってやっていくっていう感じにはならないみたい。


それはなんでだろう。ジェンダー・セクシュアリティだから?そこに固有の問題なのかなぁ。まぁたしかに......一つ考えられるのは、ジェンダーのクラスに、ジェンダーに興味があってきましたっていう人が非常に少ないという感触があるのは事実。他と比べてね。穴埋めとして適していると考えられているのか、そういう噂が広まっているとか......

B
だってはじめてジェンダーのクラスを取りました、とか言い出す人が300番台のかなり高度な理論の授業にいたりするじゃん。おいおい、って。


なんか、そういう風に軽んじられているというのはあるんだろうね......というか、「ある」んじゃないかしらっていうのはずっと感じている。

C
ホントにねー......どうしたら......。ただ、あの、ちょっと話が広がりすぎている?施設の話に踏み込みたいっていう話から結構遠くに来てしまった気もするんだけど。


あ!そうだったそうだった。
......さっきあなたの話では、寮に住んでたことがつながりづくりにプラスに働いた面もあるということだったけど、その「寮」には、よくない面も多いっていう話をず〜っと、それこそ私が学部生だった十ウン年前から聞いてるけど、そこら辺の実態ってどうなんでしょう......という感じで強引に施設の話に持っていこうかな。いいでしょうか。

C
ではそんな感じで......(笑)。あの、私は途中から寮に入ったんだけど、その前からじつは話が始まってて、一年生の時ってPE[保健体育]があるじゃない。その着替えが......

参加者
あああ〜(笑)

C
(笑)例えば水泳のクラスとかで、高校まではテルテル坊主みたいになってタオルの中で一生懸命着替えてたんだけど......

F
高校のころまでそんなことやってたの?!

参加者
(笑)

C
(笑)じゃあ、どうやってたの?

F
いや、学外の写生大会とかで、暑くてブラ一丁になったりとかしてよく怒られてた。

参加者
(笑)

C
ああ、これはちょっと話がそれるけど、女子高と共学の空気の違いも大きい問題なんだよね。私の場合は共学だったんだけど、女子高だと割に、そういうふうにオープンな感じになる。共学では、別に男女一緒に着替えているとかなわけじゃないけど、バーっと脱いで着替えるっていう風には最後までならなくて。
そういう文化の中で生きてきたからっていうのもあったのか、PEの最初、あのオープンなロッカールームに連れていかれて「はい着替えてー」って言われたときにかなり衝撃的だった。「めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど?!」って思って。


(笑)思えば、ビックリしたわ。そうそう。

C
ね?で、他の人はへっちゃらって感じなのかというと、他の人もかなり恥ずかしそう......なんだけど、「あ、こういうの恥ずかしがっちゃいけないんだ」を経由して「私だって恥ずかしくないもん!」って感じで着替えているという......

参加者
(笑)

C
そんな感じだったように覚えていて。私の印象論ではあるんだけど。


そうねぇ。少なくとも私は確かにそうだったかな。こういうの大学生は恥ずかしくないんだ〜とかって思って、結構無理してた。結局最後まで慣れなくて、とにかくPEに早く終わってほしかったけど。

C
ただ、その通りでPEは案外すぐ終わるのよ。すくなくとも4年間続くわけじゃない。でも、それでも「これに慣れなきゃいけないんだ」って思って、そこでは結構、そこにエネルギーを振り分けていた。
ま、そんな感じでPEが終わってやれやれって思ってたら、今度は寮に入って......お風呂の問題が。

参加者
ああ〜

C
あれって何なんだろう。温泉とかの大衆浴場が恥ずかしいわけじゃないんだけど......


たださぁ、寮の風呂ってパブリックなのかって言ったら微妙だよね。だってそこが家なわけでしょ?家の風呂にいっぱい人が入ってくる、それを我慢しなくちゃいけないっていう、あんまりない状況ではあるよね。

C
そうそうそう。というのもあのロッカールームでみんなの心を支配してた「あ、こういうの恥ずかしがっちゃいけないんだ」がさ......そこには再びあるわけさ。
そんな感じで、他の人にからだを見られて恥ずかしいっていう思い......これの難しさについてちょっと考えているんだよね。今の寮の在り方についてもそうだけど、新寮のファシリティのこともあれこれ考えているとさ、その恥ずかしさって、一緒にお風呂に入る人たちのセクシュアル・オリエンテーションが、自分に向いている可能性があろうがあるまいが、自分のセクシュアル・オリエンテーションがその人たちに向いていようがいまいが、関係ないんじゃないかって思っているんだ。

参加者
うんうん。

C
でも、そこには「あんたたち同性でしょ?だから恥ずかしくないよね?」っていう空気があって......。あのロッカールームでの、恥ずかしさだけとは違う一種の息苦しさみたいなものに強く関係しているんじゃないかなって。
寮の二人部屋っていうのにも、日常的にモロモロの恥ずかしさが付きまとうけど、それだけでも結構手一杯なのにそれだけじゃなくて、そういう息苦し〜い感じっていうのが強く感じられて......。ハァ〜。

B
自分は"同性愛者"だけれども、あの、ここはクォーテーション付きでお願いします。で、「じゃぁキミは女子と一緒にお風呂入っていいよ〜!女子もみんなOKって言っているよ〜!」とか言われても「イヤ〜!!!」って思うもん。

参加者
(笑)

B
セクシュアルオリエンテーションとはあまり関係なく、そこは嫌だったりするじゃん。


それはさらにさ、あなたを"男性同性愛者"ってムリクリ括ったとしても、「じゃあ、男性同性愛者同士で風呂に入るならいいでしょう!」とかってなるのも

参加者
イヤ〜!!!

B
それはそれでイヤだよ〜。全然安心して生活できないもん。


じゃあどうしてそういう括りになるのか......少なくとも現行の女同士/男同士の括りは現実にやられているわけで。管理の問題?管理しやすいしにくいでかってに線引きされてるのかな。

B
あ、でも"女性同性愛者"といっしょだったらまだ......


え......ホントに?それって「まだいいや...」っていう知り合いがそこにたまたま何人かいるから、とかって話じゃないの?

B
あ、やっぱどっちにしろ全然無理。(笑)

D
その前に、それって知っている人と知っていない人って同じでいいの?

C
そうそう。銭湯や温泉との比較で言ったら......

B
でも、あなたは温泉ならいいけど、って話だったけど、私そもそも温泉に行っても大浴場には絶対入らないもん。内風呂に入るもん。

参加者
ああ〜


そうすると二人の「無理」感には微妙に違う力学が働いている可能性もあるのかもね。パブリック・バスならいいんだけどっていうあなたは......

C
そう、私が違和感を覚えるのは、そうじゃないのにそういう場所だよねってムリヤリ思わされる......「ここはパブリックでしょ。ならいいよね?」っていう風に、本当は違和感を抱えていたのにそう思わされてきた。「そこをパブリックだと思いなさい」というプレッシャーを感じてきた。それがね......。

参加者
そうね。............


なんか、発言がまばらになってきちゃったけど......

A
いや、これ難しいなーって思って。ちゃんと考えてきてないときちんとしゃべれないんだけど。個人的な経験も関係した話ではあるし。

参加者
(笑)


そうか......。急に日程を組んでもらったのに無理があったのかもしれないね......。
じゃあ私からムリヤリ振っちゃうと、たとえばほかに聞く話では、ロッカールームやお風呂のほかにジムのシャワールームが使いづらい、という話を聞くけど、ここら辺の話はどう?

C
どうかな、ちょっとは違った話になるかな。


なにか、前二つとは違う問題ってある?

C
シャワーね......。プールから上がって、普通は水着を脱いで浴びたいところじゃない。


そうするんじゃないの。

C
でもシャワーカーテンも仕切りも何もないから、そうすると全部丸出しになっちゃうわけ。そこは寮のおふろでさえなくて、一歩外では学生が服着て歩いているのに......

B
こちとら全裸、みたいなね。

参加者
(笑)

C
だから脱ぐ人なんかめったにいなくて、水着のままシャワーを浴びるしかない。

D
更衣室自体も、あの洗濯機がある場所のすぐそばに外からのドアがあって、その洗濯機のすぐ近くにシャワー室のドアがもうあるわけだから、入ろうと思えば外から扉二つでシャワーのところまで辿りつける。話は戻るけど、逆にいえば更衣室(=ロッカールーム)自体が扉一つで中に入れてしまって、いつだれが入ってくるかわからない。中で、他の人と一緒に着替えるイヤさとは別に、悪意のない人でも、出入りには扉があくし......っていう不安がある。ましてやシャワーは問題外で「裸で浴びるもの」とは思ったこともなかった。

C
その......確かに素っ裸になる人だっているわけ。裸になってシャワーを浴びて、素っ裸で更衣室に出てきて歩いている人もいることはいる。そうすると、ドアが開く可能性に不安を感じてささっと着替えている人間もいて、その一方で素っ裸で闊歩している人もいるという......


そこにいる人たちは、色々いるんだけど、それぞれどういう要請を受けていることになっていると思えばいいの?一方で「パブリックなんですから、みんなで裸でいいじゃないですか」ってことなんだよね。そう思っている人もいると。

C
でも、私なんかは逆に、裸で闊歩されているとすごくびっくりするし、出入りの自由度が高いのもすごく不安に思う。


だって「みんな裸でいいじゃない」っていう要請があったとしても、ほとんど......シャワーすら裸で浴びないんだもんね。

D
うんうん。


そうすると、一方では「これはこんな共有スペースでやることではないので、仕切りもカーテンもないならシャワーも水着を着たままで、着替えだってできるだけすばやく、低露出ですませますよ」というのもある。だからこそ裸になるのを共有スペースでやられるとビックリするわけでしょ。あそこをどういう場所だと思うかでね、かなり違いが......。

F
実際トイレで着替えてる子もいっぱいいるよね。

D
そうだよね。結構いるよね。

F
プールのときだと、一回下着から全部脱がなくてはいけない瞬間が出てくるから、トイレに並んだりとか。


そうすると、「ここはパブリックですからどうぞみなさん裸で」っていう掛け声自体があまり実態に即していない感じ......、そう思っている人はあまりいない、と考えていいのかな。パブリックは裸になるところじゃないから......Cの「ここはパブリックでしょ。ならいいよね?」っていうのが重圧だったっていうのと整合性が...わかんなくなってきちゃった。

B
プライベート・パブリックの話がさっきから気になっているんだけどさ、つまりそこで起こっているのは、「"ここでは"裸でお願いします」という、ある種場所を限定したうえでの「裸」要求なわけじゃん。それはパブリックっていう枠で考えるのでいいのかな。こっちがパブリックだと思っている場所なのに、「イヤイヤそこはプライベートだから」っていうベクトルの強制もあるんじゃないかと思ってさ。......どういうことかというと「同性同士だからそこはプライベートでしょ。だったら裸でもOKじゃん」っていう。

参加者
そうかそうか!

B
プライベートを要請されている部分って考えたほうがいいんじゃない?


なるほど。つまり水着のままシャワーを浴びてトイレで着替える人は、あそこをパブリックと思っているからで、なのに「同性しかいないから」とかいう理由で、公道で裸になることを要求されているような感じだと。

D
だから、トイレの中でこそ許される姿のような......裸の人とかがそこにいるとビックリすると。


ちょっとあんた〜!ここはトイレの個室じゃありませんよぉ!プライベートじゃありませんよぉぉ!パブリックなのになんでトイレの個室の中のようなカッコでいるんですかぁ〜!みたいな感じね。

参加者
(笑)


そういう風に考えると話はすごくすっきりするね。ここ、みんなはどうだろう。

参加者
ちょっとこの方向で行きましょうか。

B
いっそさ、トイレのドアを全部とる運動とかやる?そんなに「同性同士=プライベート=恥ずかしくないだろ」って言うならさ。手始めに本部棟からやるの。

参加者
(爆笑)


他にもシンポシオンで問題を告発してきたのは、アンケート類の性別記入欄が男と女の選択制だというところとか、あとは健康診断で身長体重から聴力視力まで学生アルバイトに知られてしまう検査体制だよね。それと綿の布一丁で検査を受けさせられるところとかもね......。

C
あれって、その恰好でそんなに長時間うろうろするの。


どうだったっけ。結構気になったという記憶があるけど。

D
結構長い時間......しかも下着を着けていない状態になるから、透けるの。だからみんな腕を組んで隠してた。その格好で長い時間......っていうより、要は混むから各検査にかなり並ぶことになって、その間こうやってずっと腕を組んで

参加者
(笑)

D
隠し続けて待っている、って感じ。


それだって「"プライベートでしょ"っていう詭弁に基づくプライバシー共有の強制」の感があるよね。検査は男女で別れてやっているわけだし、そもそも「診察」っていうのはどこでどうやろうがプライベートに決まっているじゃないか、みたいな感じでさ。なんでこんなにほしいままにされているんだろう。理由は......管理しやすいから?

B
......っていう風に管理する側は正当化する可能性はあるよね。


実際に言われたことあるの?

A
例えば、現行の寮が複数人部屋なのは、共同生活を学ぶという教育的目的があるということと、そうすることで安全性を高めたいという狙いがあるらしい......という話は聞いたことがある。

B
安全性の問題で話すと、なんか自己責任大事のネオリベと、何でも徹底的に管理したいスターリンの争いみたいになってくる。

参加者
(笑)

C
スターリンて(笑)。


ネオリベとスターリンじゃカウンターパートになってないし(笑)。でも管理しやすさっていうのは、安全性を人質にとれるから大きな口実にはなりうるだろうね。

C
きっと大きいよ〜。これまで、2007年に要望書出したときとかもやっぱりそこが大きいんだなって感じたし。


プライバシーを高めて、プライベート空間を確保して、その中で起きうる危険性については自己責任ね、っていうのは、残念ながらネオリベの利益とさえも完全には一致してなくて、だってプライバシーを削減したほうが安く上がるんでしょ。シャワー室だってコックとシャワーヘッドさえあればいい。仕切りの分だけお金が浮くじゃん。そうなるとネオリベ的にはさ、仕切りがないほうがいいということにもなってくる。そういう計算かもね。

B
そういうコストの問題とか安全性っていうのはよく口実として使われるけどさ、でもトイレのドアはつけるわけじゃん。

参加者
そうだね〜!

B
シャワーや脱衣スペースにドアとか鍵をつけるのは渋ってるけど、それとトイレの違いがよく分からない。トイレだって同じように中で何が起こるかわからない閉ざされた空間なのに、誰も「危険だからドアを外すことを検討しよう」とは言い出さないわけでしょ。コストだってトイレは便器だけでいいってことにすれば相当浮くのに、でもそんなこと言い出さない。どこにどう金を使うかっていうのは、「普通ならどこにどう使うだろう」っていうイデオロギーがまずあったうえで決まるんだよね......。

A
うんうん。そうだと思う。だって本部棟とか、車いすの人でも上がれるようにスロープがついたし。後から工事したんだもんね、あれ。

C
うんうん。


新たにお金かけてね。

A
だからコストは、必要なものに関してはちゃんとつけるっていう......


必要な、というか、必要だと判断されたもの、って感じかもね。

C
うーん、必要とかっていうより、その要請がどこから出たかっていうのがすごく大きいんじゃないかな。例えば耐震工事とか、本部棟のエレベーターだとか、明らかに世の流れで必要なものっていうことになってきている。法律もできて。

B
でもまだ完全に義務化にはなっていないよね。

C
うん......かな?

B
アメリカではAmericans with Disabilities Act of 1990っていって、すべての公共施設において車いすでのアクセスを妨げてはいけない、とかいろいろとアクセスを妨げるものを禁止することになっている。


たしか日本では努力義務の施設も多いんだよね。マストなところもあるんだけど、でも広さとかに下限があって、どうしてもやらなくてはならない施設っていうのは限定されている。

C
ただ言いたいのはね、法制度があるなしの部分じゃなくて、実際に不十分ではあるものの、駅にエレベーターを設置していこう、みたいな動きは実際にあって、そういう社会の動きがあれば、「バリアフリーはどうなっている?」って話題になって「ICUのここはまずいでしょう」という話になる。それで、そういう時はさ、お金はなくても出すんだよ。


そうすることが「善」なわけだからね。無理してでもやる、と。
......そう考えるとなんでなんだろう。例えば「みんなのトイレ」を設置して下さいって言ってもそうならないのは。わがままだというニュアンスで捉えられているのかな......。そんなに緊急性は高くないのに、みたいな?......さっきの話にしたって、わずかだろうが素っ裸で問題なく闊歩している人はいて......それで「あの"素っ裸オッケー!"がスタンダードでしょ!」って言われたら終わり......

C
そうそうそうそう。


終わり......なのかなぁ。そこ、なんか言い返せないの。

B
「階段登るのがスタンダードでしょ!」とは、言わないよね?


何が違うんだろう。「恥ずかしさ」と「無理」は無理のほうが上ってされてるってことかなぁ。

B
いや、「恥ずかしく」て「無理」なんだけど。

参加者
(笑)


でもまぁ、鞭打ってやらせりゃできるってところなんじゃないの。

C
そう。我慢できる部分だと思われている。

B
でも車いす使っている人でも鞭打てば階段登れる人っているでしょう。きっとゼロじゃない。あの、鞭打てって言っているんじゃなくてね......。比較として、なんでからだを晒す不安については「鞭打てば出来る」で片づけられて、車いすの人には鞭が振り下ろされないのか。

A
でも「恥ずかしい」ことっていうことのほうが言いづらいんじゃないの。


言いづらさのほうね。鞭打たれたところでどうしたってできない人がいる「階段登り」と違って、裸を晒すことへの不安は鞭打ったらだいたいみんなやらせられるよね。そういうすごい底辺のほうに基準があって、そこからわがまま認定を受けてるから、言う側も不安が増大するのかな。

B
でももっと踏み込めばさ、どんなに鞭打っても「階段」がなかったら健常者だって3階に登れないよね。階段を作るのにはお金かけるわけじゃん。つまり、「配慮が必要じゃない人たちと必要な人たち」っていう分け方には問題があって、「すでに配慮されている人たちとまだ配慮されていない人たち」って考えたほうがすっきりしない?言いかえればさ、「配慮が必要か否か」じゃなくて「すでに配慮されているか、或いはまだか」ってところから見てみるの。
トイレの男女わけにも同じ問題があって、すでに配慮されている人たちがいるのよ。男女わけで困らない人たち。でも男女わけで困る人たちはまだ配慮されていないのよ。シャワーだってそうだし。


つまり今あるものをゼロと考えることに問題があると。すでに誰かには特別に恩恵をもたらしていて、誰かには何の恩恵ももたらしていないんだ、と。

B
なんか「余計な仕事を要求されてる」みたいに思われている感じだけど、そうじゃなくて「あなたたちすでにすごい仕事しているんだから!」って。マジョリティのためにはめっちゃ仕事してるじゃん。なんで最後までしないの?って話。


そうね。それは反論の一つとして効力があるだろうね。

A
うーん......論理的なところをどういう風に詰めるかっていうことも大事なんだけど、今話しているのを見ててもそう思ったし、今回、建設ラッシュに際していろいろシンポシオンでも話して、そこでも思ったんだけど、なんていうか......しんどく感じていることとか恥ずかしく感じていることとかを口にするのが難しいんだなぁって思ってて。

参加者
うん。

A
友達同士で集まって、たとえばシンポシオンとかでワイワイいろんなことが話せる関係が作れたとしても、そこではイヤなことを強制されたりしないし、同性が好きだっていうことが咎められなくって、そういうことが「話していいことだ」っていうのがあるから楽しい話はできるようにはなる。けど、嫌な思いをした話って、案外と......"敢えて"しようと思わなかったら、出なかったりする......っていうのがあって。

C
うーんうんうんうんうん。

A
たとえば「今日先生にすごい嫌なことを言われた」とか「こんな嫌なことがあったんだ」とかだったら言えると思うんだけど......。そう、他の子たちと話していて思ったのは、自分もそうだけど、言えるようになるまでに時間がかかる。それが「イヤだって言っていいことだ」とか「ヘンだって思っていいことだ」とか、全然思ってもみなかったっていう声は結構聞くなぁって言うのがあって。


大学について右も左もわからないって中では、まずは合わせる方向にベクトルが向かってしまうよね。「私も我慢できるようになろう」という感じで。

A
そうだね。そうやって考えると、そもそも"大学に対して言っていく"っていうところから難しさがある。思っていることを伝える難しさっていうのは......。

B
しかもさ、ジェンダー・セクシュアリティ関係っていうのはまた格別で、ジェンダー・セクシュアリティ関係の専攻があるっていうこと自体が驚かれる。「そんなこと学問で出来るんだ!」って。

C
うんうんうん。

B
自分も高校の時に上野千鶴子さんの本とか読んでさ、同じこと思ったもん。

C
私も、今でこそジェンダー・セクシュアリティ関係の問題ってわたしと切っても切り離せなくなっているけど、そのきっかけっていうのは田中かず子先生の授業だったわけで、今じゃ誰も信じてくれないんだけど、それまでは「女の子なんだから料理ぐらいできたほうがいい」とか言ってたもん。

参加者
(笑)

C
やっぱり衝撃的だったんだよね。自分の中のもやもや......もやもやしてるんだけどないことになってたもやもやが、「あ、学問として存在しているのね!」ってなった瞬間っていうのはすごい衝撃的で。


今までの話を総合するとさ、その......上野先生の本とか、かず子先生の授業とかで「あ!学問になるんだ!」って思う衝撃的な瞬間があるんだということだよね。でも、それはあくまで「学問になる」という気づきであって、日々の「しんどさ」とか「恥ずかしさ」は暗黒地帯のまま取り残されてるってことになるのかな。4年生ぐらいになるまでは大体みんなに合わせる方向で努力をしてしまって、恥ずかしいことを「イヤだって言っていいことだ」と思えるようになるまでには時間がかかる場合が多いの?

C
まぁもちろん個人差はあると思うけどね。

A
それはあると思う。

C
ICUにいるうちに、そういう本を読んだりするだけで思いきれる人もいれば、もっと時間がかかる人もいるだろうし。


何が違うのかな。そこに働きかけることはできない?

B
私、高校3年生の時からひびのまことさんのサイトとか読んでいたから、恥ずかしくないと思ってた。「スゲー、言っていいんだぁ」とか思っていた。なんか、触れないと......実際に言っている人とかを見ないと。

C
そうね、そういうインプットがないとアウトプットにはつながらないね。

B
しかも日比野さんって自分の写真を載せてたじゃん。だから、現実に存在するリアルな人がなんか言ってる......っていうのがさ、おお!って。自分がなれるかもしれない、なろうとする中の一つのオプションなんだって思えるし。

C
しんどさを言っていいんだって言うんだってことを、他の人を見て学ばないと......そこで方法として知らないと、簡単にはできないよね。

B
例えば今CGSでは、しんどさを言う方法って基本的には理論じゃん。理論立てないと言えなくなってきてるっていうか。


それはとても強力ではあるんだけどね。

B
うん。理論やっている人たちは、理論がなかったら言えていなかったかもしれない人たちなわけで、それは必要なんだけど......。

C
そうね、ロジカルに言わないといけない、っていうのじゃなくて、何か......単純に自分がしんどいって思ったっていうことだけを言えるかっていうと、そうはなっていないかもしれない。それって......案外ICU全体にある空気かもしれないよね。


え、ロジック中心っていうことが?

B
あの......「ププー」が?

C
いやそれは、フェミは「ロジカルじゃない」から聞かれないのよ。彼らのいう「ロジック」ではないから。

参加者
ああ〜


そうなると、話は結構戻るんだけど、「すでに配慮されている人たちとまだ配慮されていない人たち」の話の時に、エレベータの設置要求とかには人は耳を傾けがちじゃないかってニュアンスがあったと思うんだけど、それもずっと自明だったわけではないなぁって思いだして。
例えばね、障がい者の声がどんだけ耳を傾けられてなかったかって話で私がいつも思い出すのはさ、なんかのテレビで見たんだけど、戦後10年もたってない頃の話だったのかな......盲導犬を日本に導入しようとした人が、「日本の住居とかライフスタイルに合わないから盲導犬とか夢みたいなこと言ってないで妻帯を促せ」みたいな批判を浴びたっていう話があって。で、その番組は「こんな感じで盲導犬の必要性がまったく理解されませんでした」みたいな話の持って行き方だったんだけど、いやいや待って!と。女性の視覚障害者はいないことになっているのはなんで〜って。あの、これは「女性同性カップルGO!」みたいな話では全然ないわけよ。

B
だったらすごいけどね(笑)。


障がい者の声は聞き届けられやすい世の中になっているけど〜っていう話は、現在において確かでありつつも、一方で数十年前の話でこれ......。そこに存在が確かに想定されているのに、それでもなお「いない」ことにされている障がい者っていうのがいたっていう、この暗黒状態を思うとさ......

B
ちょっと話はそれるけど、盲導犬ってさぁ、西洋的文脈で言ったらたぶん「妻の代わりに犬」って話じゃん。

C
順番的にね。

B
それまでは妻とか、妻的なポジションにいる人が支えさせられてきたわけでしょ。それを犬に、っていうことだと思うのね。犬トレーニングしたらここの部分行けるんじゃない?みたいな。それを逆に「犬の代わりに妻」ってさ、すごい発想だと思って。

参加者
(爆笑)


それがそんな大昔の話でもないっていうね(笑)。で、何が言いたいかっていうと、妻の代わりに犬くれよっていうのがまるで「ロジック」として捉えられていなかったときがあった......いまはみんなこんなに笑えるような話だけど、当時は新聞かなんかで真面目に「犬より妻!」とか言ってたっていう。

C
うんうん。


そんな中で盲導犬ほしい!ってかなりいいにくいと思う。じつはね、今でも私すごくためらいがある。「裸見られるのに強い違和感がある」とか「学生アルバイトに体重をとられるの恥ずかしい」とかって「思うほうがおかしいんじゃないの」って。でもこれを思うとさ、ちゃんとやっていけば、それが道理にかなった要求であるっていうことが自分にも相手にも必ず伝わるんじゃないかって。だから、今「ロジック」としてとらえられないっていうのは、かなり無力感を感じる部分ではあるけど、だからって不変でもないなっていう。......ごめんね。ながなが話して個人的な希望の話で終わってますけどね。

C
でも少なくともシャワーに関してはもう伝わっているよね。

B
うん


それは、自分のこととして?つまり、LGBTのことを持ち出さないで、「あれって恥ずかしくていやだよねー」って言って行ったときに、自分のこととして「イヤよねー」って答えるのかな。

B
答える答える。「イヤよねー」ってなってる。


ああ、そうなんだ。それはちょっと安心。「我慢しろよ」っていう話にはならないんだね。

C
「我慢しろよ」っていう人はいない。

B
「あたしは平気だけど」っていうひとはいるだろうけどね。

C
うん。そういうのと、あとは「ヤダね」っていうけど、「じゃあこうしよう」っていうところまで話が行かなくて、結局「ヤダねー」で話が終わっちゃうとか。


その中で「じゃあ私が言いに行くよ!」っていう人が出てきたら、あまり足を引っ張られることはなく......

C
でも特に協力もしない......って感じかな。

B
でも、「ヤダよねー」って言ってる人に対して、「でね、署名してくれる?」って言ったら署名はすると思う。


あ〜署名くらいなら協力してくれるんだ。なんかもっと学生が厳しい態度なのかと思いこんでたから、そこはちょっと安心した。それって、たとえば新しく建設される寮のことにはどう?新しい寮にはこうあってほしい、っていうみんなの希望を話して見せた時にも、同じような感じで受け入れられそうなのかな。

B
共住スペースのこととかも意外と......よほど保守的な人とかじゃない限り、今の学生からは署名を集められるんだと思う。というのも、あまり関心がなくて、「困ってるんだったら署名ぐらいするか」って感じで、逆に。

C
私は......それは微妙な気がするなー。私の予想では「それってヤバくない?」ってなる気がする。

B
それで「え、なにが?」って聞いた時どうなるの。

C
だって......「男女一緒」っていうのが。「それは要はラブホみたいなことじゃない?」ってなりそう。私の感覚ではね。

A
えぇ〜何ソレ!みたいになりそうな感じなの?

C
うん。私の周りはエイプリルが多いから、セプテンとは空気が違うと思うけど。

B
セプテンだともうちょっと行ける気がする。

C
私がなんでそう思うかっていうと、女子寮に住んでいた時に「部屋に男の子が入るなってありえない!」っていう空気があって。それはルールだからっていうわけじゃないんだよね。1階が共有スペースで2階以上が住居スペースだったんだけど、2階以上に男の子が入るなんてありえないっていう子が大多数だったのね。これはいつまでたっても慣れなかったけど、業者の人とかが来る時は、対応した寮生が「男の人入りまーす」って言ってから上げるの。

参加者
(爆笑)

C
「男の人2階に上がりまーす」って。私はそういうのには慣れることができなかったんだけど......でもそういう文化だったのね。それもお友達はダメなの絶対。業者の人とか、大学から要請があって派遣されている人だけ。


でもね、共住スペースのことを考えると、そういう人たちには「あなたが無理無理共住スペースに住む必要はないのだから、共住の場所もありますし、そうじゃない場所も保たれます、というだけの話です」っていうのではだめなの?

C
でも感覚として受け入れられないんじゃないかと......

B
今すでに寮に住んでいる寮生は厳しいかもね。

C
そうね。そうそう、今の寮生で、寮の文化になじんでいる人は「ええっ?!」ってなりそう。

B
寮にそもそも住んでいない人は関心がないからね、寮の状態に。そうすると「そういう人もいるんだろうね」みたいな感じで賛成しそう。

C
そういう想像力って働かせてくれるかなぁ......。わかんないけど。心配しすぎかもしれないんだけど。


あなたは共住スペースについて人に話したり説得する時に、どういうニーズから攻めてるの。どういうニーズから「ご協力をお願いします」っていう話をしてる?LGBTのニーズが...って言っているの。それとも......

B
いや、どっちかっていったら、自分が友達とか母とかに話した時は、「男女で分けることのメリットってなんだろうね」ってまず相手に訊いて、出てきた答えに対して「それって同性でも駄目じゃない?」って指摘したりして......。そうやってこっちから質問していくと向こうが大体答えられなくなるから、そこで「男女共住っていうのもあったほうがいいよね」っていうと「うん、そうかもね」っていう話になる。


それはもう面倒くさいやって言うニュアンスの時も......

B
あるある。


そっか......。ま、でもいいのかなぁ。学生にはそんなにアピールする必要はない?最悪でも成就すればいいわけだもんね。

A
いや、アピールしたい(笑)。議論が盛り上がらないことにはどうしようもないし。

B
まぁ、この学校って全体的に議論が盛り上がることってなくない?


まあね。

C
うーん......。なんかね、私の友達が男子寮のOBのひとに新寮建設のことを話して、「新しい寮には男女共住スペースを作ったほうがいいと思うんですよね」って言ったときに、LGBTのニーズっていう文脈では「それはあったほうがいいね」って言うんだけども、でも同時に「そこに異性愛者がすむのはどうかと思う」って言うんだって。

参加者
え?え?
ん?なんで?

C
分かんないの。だけどね、そういう切り返し方をしてきて、その私の友達は、そこにさらに切り返すことはできなかったって。これは、そのOBが自分がものすごくヘテロノーマティブだっていうことに気がつけていないから......たぶん「いや、ヘテロの異性が一緒に住んじゃったら......セックスするしかないでしょ」っていうところに行っちゃうんだと思うんだ。


それは、LGBTだったらミックスでも問題は起きないから、その人たちだけでゲットー化させておけばいいじゃん......てこと?

C
意図的にそういうことなのかは、私も伝聞だから分からないんだけど、そういう風に考えると、いまシンポシオンが「新しい寮には共住スペースがないと」......って、しかもそこは誰でもアプライ出来るようにしよう、って言っていて、1個のポッドだけでもいいから実現させたいって言っているけれども、それって結局トイレの問題と同じように「あそこに住んでるのは......」って言われることからは......

B
ああ、壁にスプレーでFag!って書かれるとか。

C
そうそうそうそう。結局そうなるんじゃないかなって。

A
それは確かにあるかな。

B
異性愛者もどんどん入ってくればいいのにね。あ、でも「セックスしちゃうから」か。

A
しても......


......いいじゃんねぇ。したらダメなの。というかそこさえ禁じればしないと思ってるの?

A
......っていうのを、難しいところだけどどういうふうに言っていくか......


いや待って、それってレイプを想定しているのかな。それともセックスそのものがダメなの。

B
でもさぁ......


そこでとくに頻発するって思ってるのかもよ......。

B
いやどこでも起きてるじゃない。......そこに手を伸ばしたいなら啓発活動しかないよね。これはLGBTのことでもそうで。ゲットー化とかに対しても。


うん。......あの、これまでの話を聞いているとね、あなたはヘテロ女子として新寮にも要望があるし、現行の施設も改善されてほしいって思っているんだよね。

C
うん。


それって現れだけ見れば、たとえばあなたの要望と変わらない......んだよね。

B
うーん......メカニズムは違うだろうけどね。

C
要請は同じでありうる。


そうした時に、個人的に疑問なのは、繰り返しになるけど、戦略的に言ってどっちを押すほうがいいのかなってとこなんだ。つまり「LGBTが必要としているんです。署名してください」なのか、「私たち学生みんなに必要ですよね、署名してください」なのか。いまの寮のOBの話なんか聞くと、残念だけど前者のほうが効果があるのかなとも思う。でもそれだと「学生にアピールしたい」っていうのからは外れるし、ゲットー化っていう結果は免れなさそうにも見えるし......ここら辺、どう思う?

B
物事を分ければ?シャワー系・共住スペース・啓発活動の三つに。


啓発系っていうのは......

B
LGBT中心で、あとデートレイプの問題とか、同性間の性暴力の問題とか、いま思いつく限りだけど。


シャワー系は全員の問題として「イヤだよねー」って方向で語りかけて賛同を募る、共住スペースは、実際にLGBTにとって緊急性が高いわけだから、LGBTのニーズということで話していって賛同を募る、同時にゲットー化とかを防ぐために啓発活動を進める......と。

B
そう。

A
......これまで聞いていると、あまりに直球すぎるというか、うちらの言っていることが内向きすぎて、これを読んでも誰も全然共感してくれないと思って......。確かにその寮のOBの人みたいな友達は僕の周りにもいっぱいいるんだけど、でもそういう人たちに「なんで男女一緒ではいけないの?」って言っていっても、誰も共感しないと思う。「頭ではそう思うけどー」みたいな感じで終わると思う。
だから......そこでどういうふうに話していけるのかを考えて行きたいなって。

B
納得しなくても頭で理解してくれて署名してくれれば構わなくない?

C
でも署名に至るまでにどのくらい真面目に話を聞いてくれるか......。その三つに分けるというのは方法としてありだと思うの。でも、その三つの差、なんで分けるのかっていうところからまず説明しなくちゃいけないわけでしょ。署名してもらう人には。

A
そうそうそう。

C
実際にやってみた時にそれでうまくいくかは、私は微妙だと思う。

B
分担すれば......人を変えるとか

A
それとか時期をずらすとか......だったらありうるかもしれないけど、実際のところみんなそんなに頭を使って、労力を割いてやってくれるかっていうと......あんまり。

B
たぶんそんなに......もっと軽くていいと思う。シャワーの話だったら、「あのジムのシャワー使ったことあります?」って聞いて、「カーテンなくて恥ずかしいじゃないですか。私それがホントいやで、新しい寮も着替えるところに何もないらしくて、そういうところにカーテン付けてくださいって署名集めてるんです。お願いします!」って。


ハズカシ系で押すものに関してはLGBTには一切触れないの?

B
「あ、大丈夫です。恥ずかしくないでーす」とか言われたら、「実はこういう人たちもいて......」って


なるほどね。2段構えでね。

B
そうしたらやってくれる人多そうじゃない?今のにも10秒かかってないじゃん。共住スペースに関してはもっときちんと説明する必要はあるけどさ。そんなに一生懸命になって、相手を「説得」までもって行こうとする必要はないんじゃないかな。署名してもらえればいいんじゃないかな。

A
それだとたぶん......ホントに共住スペースがポイントになってくるんだと思う。シャワーなら今のやり方でいくらでも共感してもらえたり、あるいは同情だか何だかわからないけど......あるけど...

B
啓発活動のほうもできるよね。


啓発活動っていうのは?

B
デートレイプとか同性間の性暴力、LGBTの問題の話も含めた啓発を、学校全体のオリエンテーションとか、パンフレットとか、入学案内に、そういうことに必要な情報を入れてほしいっていう要望。これは、同情をひく作戦でもいいと思ってる。デートレイプみたいにみんな困っている問題なら広く共感も得られるだろうし。

C
うん。私もそれはね、むしろ一番賛同を得られるんじゃないかなって思うの。ICUでは「人権」って伝わりやすいトピックだから。しかもそれは、自分とは関係ないことだと思っているから、「パンフレットにたすのはかまわないんじゃない?」っていう風になって署名も集まると思うけど、それが共住スペースってなってくると、さすがに自分とは関係ないことだと思って気軽に......っていうことにはならないと思うんだよね。自分に関わってくるんじゃないかって思われて......。

A
そうだと思う。


ん?ん?ん?ごめん混乱してきた、
全員の問題として「恥ずかしいよねー」って語りかける系と、LGBTのニーズという話で賛同または同情を得る系と、啓発活動を行って長期的改善を目指すやり方の3つがあるっていうのは決まりでいいんだよね?

B
えっと......違って、「3つある」っていうのは「やり方」じゃなくて「学校への要望」なのね。学校にちゃんと学生を啓発してくださいっていう要望と、シャワー関連の要望、これら2つについてICU全体から賛同を得るには、どちらも「恥ずかしい」系と「ニーズ」系の二本立てで行ける、と。


ああ、学校への要望ね......。それが「シャワー」「啓発活動」「男女共住空間」の3本立て。

B
そう。で、問題は最後の共住スペースで、これについてはハズカシとニーズのどっちも行けなさそうなの。

A
なんでかって言ったら、共住スペースのほうは自分に降りかかってくる可能性があるとか、ハードルが高いことだって思われる可能性があるから。シャワーの改善とかとは違って。

C
そうそう。シャワーはあのままだといやだって思っている層がすでに全体的に多いから、恥ずかしいよね、って語りかけたら彼らのニーズに引き寄せてもらえて署名がもらえる可能性が高い。「シャワーは別に恥ずかしくない」系の人と、あとトイレの改善とか啓発活動なんかに対しては、LGBTのニーズを伝えることで、問題が「自分たちとは関係ない」ために逆に署名がもらえる可能性が高い。それっていいことだよね、別にいいんじゃない、って。
でも共住スペースは自分に引き付けて考えた場合、「えっ、異性と一緒に住むの?......無理!」ってなる......というか今すでになっている人がいる。そこでいくら「こういう人もいるんだよね」ってLGBTのニーズを伝えても、無理っていうのが先にあれば難しいだろうなって。

B
その人たちが寮に入らなければいいのでは、って言われちゃったりとかね。

C
なんでそんなにしてまで一緒に住むの?って言われたら......どうしよう。

B
色々可能性はあるよね。ハァ〜。
......だったらさ、いっそ共住スペースに関しては署名というやり方を取らないっていう手もある。

A
うん。それもありだと思う。

B
本当に必要なんだから......もう説得に次ぐ説得で大学側に迫っていく感じ。シャワーと啓発活動の必要性は「学生の総意です」って署名を持っていく......って感じ。

A
ただ、それでも難しいのは、シャワー・トイレ系の改善と啓発活動は、大学側も「署名でもないと」って言うほどは必要性を疑っていないと思うんだよね。

C
そうだねぇ。


学校側への交渉でも、やっぱり共住スペースが焦点......

A
そうなの。マジョリティがどう思うかっていうところから動かさないと「あなたたちの意見はわかるけれども」という風になって終わりという可能性が。


そうだよね......。「みんな必要だと思っているよね」とか、「LGBTのニーズがあるからみんなも協力を」っていうのが、共住スペースに関して学生に"効く"なら、大学にも効くはずでさ、そこが学生に効かなさそうだっていう話なんだから、もしそうなら大学にも効かないんだよ。問題は同じなんだよね、学生に対するアピールも大学に対するアピールも。......ええと、大学側と共住スペースについての話し合いってもうしたことあるんだよね。

参加者
うん


その時の感触ってどんな感じだったの。言えそうな範囲でいいけど。

B
個人的な感触だけど、完全に聞く耳がないというわけではもちろんないけど、すぐに動いてくれそうな感触も......。


そうかぁ〜。緊急性は伝わってないのかな。

A
ただ、シャワーとかトイレとかのハードが変わるっていうだけでも全然違うから......もちろん決定的に不十分ではあるけれども......

C
そうだね。少なくともハードがきちんと改善されていれば、そこにどういう風に人を割り振るかっていうのはソフトの問題だから、将来的に改善していって、いずれ共住スペースを実現するっていう可能性が断然出てくる。

A
それに、ハードが変わっていれば、たとえ男女で分かれている中でも、なんとか暮らしていけるっていう風に感じるセクシュアルマイノリティもそれなりに出てくる。全員は無理だけど。
それにカミングアウトのハードルも少しは低くなる。というのは、カミングアウトへの不安っていうのは、寮でカミングアウトしたら「えっ、同じお風呂に入っているけどどう思われているの?」とか思われる可能性があるっていうところが大きい。でもプライバシーがちゃんと守られたお風呂だったらそこら辺を心配しなくていいし緊張しなくていいから、ハードルが、若干だけど下がると思う。

C
ルームメイトていうものが残っちゃったとしても、個人を相手にするのと大勢を相手にするのはずいぶん違うから、2人部屋っていうだけでも、かなり不十分ではありつつも、言いやすさは高まるはず。

A
だから、ハードが変わるだけでもまだ意味はあるとは思うんですよ。


そこでもまったく救われないって人は残りながらも、まだ...ね。前半はトイレの改善について名前が出てこなかったけど、これは「シャワーの改善」に含めてたってことでいいのかな。

B
そうそうそう。


どうなの?シャワーと違う固有の問題はないのかな。改善としてありえるのは、「みんなのトイレ」を女・男とは別立てで設置するか、あるいは廊下からいきなりトイレの個室...的な感じにして「男女」わけじゃなくする......とかかな?新幹線のトイレとか、廊下からいきなり個室だからだれでも入れるようになってるよね。あんな感じで......。新寮はどちらかというと「廊下から直接個室」系だという噂を聞いているけど。

B
それも難しくてさぁ。完全に廊下から各個室、って感じでもなさそうで......。もし男女で別れている場合、廊下との境目がなくて、廊下の延長としてその空間があればまだましなんだけど、その場合もドアがなければいいってものじゃなくて床材とかも大事で。っていうのもね、床材が廊下とトイレで違ってたら、「トイレ空間」がここから始まる、って感じがでちゃうじゃん。

A
そこら辺、どうなっているのか詳しく知ることができなくて本当に心配なんだけど......


え、詳しく教えてもらえてないの?

A
「普通に個室ですよ」みたいな曖昧な回答だから、その「普通」の中身の細かい部分で変わってくるのに......


そこら辺の危機感が伝わっていないのかね。

A
もうちょっときっちりと確認していかないといけないとは思ってます。


結構道のりは遠そうな感じだなぁ......。どうなんだろう。今聞いた話では、一番の問題である「共住スペース」は長期的にやっていこうという風になっているのかな。今回絶対実現させる!というよりは、本当に譲れないハード面......共住スペースだって本当に譲れないんだけど、とにかくシャワーとかトイレとか啓蒙活動とかを失うよりは......みたいな。

A
いや、それは今回での実現も目指しますよ。ただ......

B
そうね......長期的って言うより中長期的な目標かな。たとえ今回で共住スペースが実現しても、うまく走らせるためには継続して検討しないといけないわけだからさ。卒業してもそこら辺ちゃんと参加していきたいなって思ってる。在学生のサポートという形でもね。


なるほど。そうなると、NLでも継続的に進捗状況や皆さんの声を取材させていただきたいですね......。どうかよろしくお願いします。
それではあの、まだまだお聞きしたいことはたくさんあるのですが、そろそろ時間になりましたので、これでお開きということにさせていただきたいと思います。......今日は私のマネージメントが下手で、あまり発言していただけなかった方もいらっしゃって、本当に申し訳ないです。
よくわかっていないので質問もとんちんかんで申し訳ありません。どうかこれに懲りずに今後も参加して下さるとうれしいです。どうもありがとうございました。

参加者
どうもありがとうございました。

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