孤独なユースとつながるための船旅

かながわレインボーセンターSHIP:吉仲崇、星野慎二
【CGS Newsletter013掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 横浜Cruise ネットワークは、神奈川県との協働事業として、2007 年9 月にセクシュアルマイノリティのためのコミュニティセンター「かながわレインボーセンターSHIP」を設立しました。SHIP の主な活動は、HIV/AIDS など性感染症の予防啓発活動と、セクシュアルマイノリティのためのメンタルヘルス支援に大きく分けられます。

 SHIP は当初から幅広い年齢層の利用を想定していましたが、特に情報が伝わりにくい10 代のユースをターゲットに活動してきたところが特徴です。その理由は、メンタルヘルス支援が必要とされるユースへの支援が、もっともできていない現状に対する危機感にあります。たとえば、異性愛前提のHIV/AIDS 教育になじめないまま、セクシュアリティで悩み、ようやくインターネット等で人間関係を構築しようとした結果、コンドームなしでセックスし、中学生で性感染症に感染した人もいることが中高生へのヒアリングから分かりました。ユースへのメンタルヘルス支援の不足は、セクシュアルヘルスを脅かすことにもつながっています。

 SHIP では、さまざまな方法でユースの学校生活にアプローチしてきました。孤立状態にあるユースをコミュニティにつなげるために、制度的アプローチとして、新たに横浜市/ 川崎市教育委員会など教育機関と連携し、高校生から始まり中学生にもアプローチできる手段を確立し、また神奈川県教育委員会の『人権学習ワークシート集』作成に協力するとともに、人的アプローチとして、愛の多様性を訴えるポスターやセクシュアルマイノリティに関するメッセージペーパーの学校への配布、出張授業などを行なってきました。
その結果、事態は意外な展開をみせました。研修が職員会議で却下されたり、郵送したポスター等が貼られていなかったりすることはよくありましたが、ある学校で、生徒が校長に直談判した結果、ポスターの校内掲示がすみやかに決定したことがありました。また、SHIP では、たまたま訪れた高校生が友人や、友人の友人を連れてきた結果、10 代の利用者数が5 倍に増えました。つまり、ユースにアプローチするカギを握るのは同じユースであり、中高生のネットワークにつながることが、ユースに対するセクシュアル/ メンタルヘルス支援に欠かせないのです。SHIP でも、高校生が運営するイベントが始動し、新たなユースとのつながりを模索しています。

 ただし、中高生のネットワークはとても微弱で小さなもので、恋愛や失恋、ささいなことでバラバラになり再び孤立してしまうことは十分考えられます。そのためSHIP では、孤立しているユースが気軽に相談できるためのアプローチは今までどおり継続しています。その上で、ネットワークが築けたユースとは協働し、支援が必要なユースが少しでも減るように活動を続けています。コミュニティを媒介としながら、自分のセクシュアリティを肯定し、メンタルヘルスを向上させることで、HIV/AIDS 等性感染症の予防啓発にもつなげていくことがSHIP の大きな目標であり、挑戦です。

SHIP公式ウェブサイト:http://ship.y-cru.com/

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