中野区区議会議員 石坂わたる
【CGS Newsletter014掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティで気の毒ですよ」。この石原都知事の発言の裏には、「マジョリティであることは、マイノリティとは遺伝的に異なる盤石な存在である。そして、満ち足りた存在であるための必要条件だ。」という幻想が見え隠れしている。
また、石原氏が公人としてこうした発言をし、少なからぬ都民がその発言に賛同あるいは傍観してしまう背景には、「同性愛者はテレビの向こう、あるいは、自分とは関わりのない所に集まっている不幸な人たち」と考える人も少なくないことを示しているのではないか。そういう幻想を抱えている人たちにとって「自分もいつ不幸になるかわからない、あるいは一歩不幸に足を突っ込んでいるのかも」ということに気づいてしまうことは恐怖なのだろう。そのため、より不幸な人間を見つけ、「自分はマイノリティほど不幸ではない。だから、自分は幸せなんだ」と思わずにはいられないのではないだろうか。
しかし実際には、人はみな得手不得手があり、足りないところがあり、誰にでも不幸は訪れる。そして、マイノリティもマジョリティも、一人一人が多様であり、異質である。時には衝突を経験しながらも受け入れる姿勢を忘れることなく長い時間をかけて補完・共生をしていくことが大切なのだ。補完・共生をしていくことが、完璧な一人の人間が生み出す以上の結果を出せる可能性を持っている。そうしたことを可能にするためには弱さの自己受容が必要なのだと思われる。
なお、今回の石原氏の発言に対し、1月14日に中野区内において当該発言に対する抗議を行う集会が行われた。しかし、その3か月後の選挙の結果は石原氏の四選だった。
(抗議集会の様子 ©レインボー•アクション)
(抗議デモの様子 ©レインボー•アクション)
これまで知事に対して継続的で効果的な働きかけを行ってこられなかったこと、抗議集会などを行っても「4割以上の有権者が投票権を放棄してしまう中での石原氏の四選」という流れを変えられなかったことは(今回の抗議集会を含め)従来のゲイリベレーションの課題だと思われる。
特定の人物を首長とする判断を有権者が合法的に行った以上は、今後、都民の代表として選ばれたその首長と建設的な議論や交渉をどのようにしていくのかを考えていく必要がある。適法性や妥当性が最低限担保されている社会のシステムそのものを否定しても、政治に関与することに対する諦めからの放棄・倦厭・拒絶をしても問題はいつまでたっても解決はしない。法、一般公務員、議員を上手に活用し、周囲の人に自らの思いや考えを伝え、社会に浸透させていくことが必要なのである。こうしたことは万人に与えられた当然の権利であり、その正当な権利を放棄してしまうことなく活かしていく方法を模索していくべきだろう。
石原慎太郎都知事同性愛者差別発言に対する抗議
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