映画『キッズ・オールライト』にまつわる当事者の感想

「にじいろかぞく」(http://queerfamily.jimdo.com/)管理人 オノハル
【CGS Newsletter014掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
KidsAlright.JPG
(Still of The Kids Are Alright ©2010 TKA Alright, LLC All Rights Reserved)

 私は、同性パートナーと子どもを育てているレズビアンマザーです。今回は映画『キッズ・オールライト』に関して、一当事者として感想を書く機会を頂きました。映画を見た方もおられるでしょうか。簡単にご紹介すると、レズビアンカップル(ジュリアン・ムーアとアネット・ベニング)に育てられた2人の子ども(人工授精で誕生し、自立目前)が、遺伝子上の父に連絡したことから問題が起こって...と、そんな話です。南カリフォルニアを舞台にした家族のコメディという触れ込みでしたが、宣伝とは印象が違うなあ...。これが私の最初の感想でした。
 主演の2人をはじめ、出演者の演技は素晴らしかった!でも今回はあえて「違和感」について書いてみます。この違和感の中に、日本のLGBT家族の「今」が見えるように思うからです(日本にも相当数のLGBT家族が実はいるのです!)。
 違和感のひとつ目は、あえてレズビアン家庭を題材にしているはずなのに、それは、どうでもよいことのように描かれていることです。当事者としては、肩透かしを食らったようになります。これには、監督であるチョロデンコのことに触れる必要があります。彼女は自身も人工授精で子どもを持つレズビアンで、ちょうどこの映画と同時進行で妊娠、出産をした当事者です。そこで思い当たるのは、この映画は、LGBTコミュニティ内側ではなく、外側に向けて作られたものなのでは?ということ。現に、ヘテロセクシュアルの方からは「普遍的な家族の話だと思った」など、共感中心の感想が多く寄せられています。映画にあるのは「家族って同じでしょう」という監督の強いメッセージ。それは、『子どもたちは大丈夫』というタイトルにも繋がっています。我が家は人工授精ではなく、再婚型の家庭ですが、偏見を感じたことは今のところありません。とはいえ、日本はまだまだ難しい。子どもがいると言うと、ほぼ確実に「子どもたちは大丈夫"なの?"」という質問をいただきます。
 アメリカと日本の、LGBT家族を取り巻く現状の差。この点も違和感になっていると思います。アメリカではレズビアンの人工授精は20年ほど前から一般化したそうですが、今は当時生まれた子どもが成人する頃。子育ての1サイクルが終わっているのです。一方、日本ではレズビアンの妊娠の事例はまだ始まったばかり。非婚男女間の人工授精は日本では認められてはおらず、非公式に行われているのが現状です。それでも子どもが欲しいレズビアンたちが道なき道を開拓している、創成期にあたるのだと思います。創成期に必要なのは、20年後に分かる現実ではなく、前を向く希望です。その意味でこの映画は、生々しい。ネタバレを避けて明言しませんが、家族を持ったら「幸せに暮らしました」ではなく、やっぱり日常が続いていくのだという、あえて今直視したくない現実を突き付けてくる映画なのだといえましょう。日本でレズビアンの妊娠がもっと一般的になった頃にこの映画を見たら、また随分違ったのではないかと感じています。
 しかし、こうしてあれこれと言ってしまうのも、結局は期待の表れ。LGBT家庭を描いた映画が一般公開されたことを喜びたいと思います!

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