報告:SAWS第1回「今なら聞ける! 性のジョーシキ・非ジョーシキ」

国際基督教大学 学部生
【CGS Newsletter014掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
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 2011年4月25日、性科学者でありNPO法人ぷれいす東京の代表を務める池上千寿子さんによる講演会「今なら聞ける! 性のジョーシキ・非ジョーシキ」が、セルフ=アウェアネス・ワークショップ・シリーズの第一弾として開かれた。5問のクイズを元に、避妊・性病・セックス・性差など、多岐にわたる話を池上さんがレクチャーした。
 レクチャーの中で興味深かった点として、自分の身を自分で守るためにコミュニケーションすることの意義を強調したことが挙げられる。池上さんは避妊や性病の問題は信憑性の低い知識が多いため個々人が持っている「正しい」知識の間に齟齬が生まれやすく、知識と行動が結びつきづらいという難しさがあることを指摘した。これらの問題の解決策として必要なことは、たとえ話しにくい内容であっても、自分の身を守るためにカップル間でコミュニケーションをしていくことであり、そのような関係を築けるのが良いカップルなのだという。つまり、自分の身を自分で守るためには、避妊具だけではなく、コミュニケーションを通して避妊や性病の予防を自ら行うことが重要なのである。
 また、セックスの定義を見直すきっかけが得られた点も興味深かった。一般的に「セックス」として捉えられるものはPenetrating(挿入)と射精の二要素を含む行為のみであり、極めて限定的だ。しかしこの講演会では、スキンシップという「快」の最も根本的な行動をセックスの定義として捉えるNon-penetrating sexの可能性が主張された。受講者の中には困惑し、質疑応答の時間に直接疑問をぶつける人もいた一方、「セックス」という概念がもつ挿入の恐怖や射精の強制感から自由になったという人も見られた。多くの受講生がセックス、ひいては性について考えるきっかけとなったこの話題には、さまざまな反応があったが、これらの反応は、いかに性の領域に思考のメスが入れられていないかを示すものだと感じた。
 私がこのレクチャーに参加した理由にはいくつかあるが、告知にあった「『受験や学業・就活がまず重要!』と、性について考えることを後回しにしていませんか?」という言葉が、セクシュアル・マイノリティである私の現在の立場に合致していたことが理由のひとつだ。今回は特に異性愛の女性をターゲットにしたレクチャーだったように感じたので、セクシュアル・マイノリティに関する情報をもっと聞いてみたかったというのが正直な気持ちではある。しかし、池上さんの主張された、正しい知識に基づいて自分の身を守ることや、性についての自分の固定観念を見直すことは、性的指向に限らず重要だと思う。私を含む大学生の多くは、性についてよく考えることもなく大学を卒業し、気がつくと「大人」と呼ばれる対象になっている。しかし、性についてあやふやな情報源から得た少ない情報しかもっていないため、「大人」の世界に飛び込んでいくことに対しては一種の恐怖を抱きがちだ。性病や妊娠のリスクを強調されることでさらに萎縮してしまうことも考えられるが、予防を強調することで伝えたいことは、セックスの恐さではなく、不安を取り去ることで得られる安心感ではないだろうか。それは、レクチャー後に池上さんが言われた「予防することでもっと気持ち良くなる」という言葉に表れていたように思う。

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