CGS運営委員、ICU上級准教授: 生駒 夏美
【CGS Newsletter015掲載記事】
ICU学内に授乳室が設置されました。その経緯とともに、2012年1月31日、ダイアログハウス中会議室にて、教職員や学生など30名が参加したトークセッション「みんなで語ろう!大学での子育て」について、CGS運営委員・生駒夏美がご報告します。
CGSでは大学内での育児支援の充実を求めて、これまでも地道に活動を続けてきたが、その成果がわずかではあるが見える形となった。2012年3月末に、大学食堂にある多目的トイレにオムツ交換台が設置され、5月末には本館に授乳室が開設されたのだ。これらの設備が乳幼児を持ちながら大学に通う学生・院生・教職員の役に立つことを心から願うと共に、これからもさらなる拡充を求めて活動を続けていこうと気持ちをあらたにした。
今回ふたつの設備が立て続けに実現した背景には、1月31日にCGSが開催した座談会「みんなで語ろう! 大学での子育て」があった。この座談会の目的は、在学中に子育てを経験した卒業生や院生、また大学での子育て経験者である教職員、本大学での関係部署の方々に話しやすい場所を提供し、オンキャンパスでの育児支援のあり方について本音を聞くことにあった。あらかじめ依頼しておいた何人かの参加者には経験談や要望を話してもらい、さらに集まった方々から様々な意見を聞いた。嬉しいことに、主催者側の予想以上に多くの参加者が集まったが、なかでも妊娠中の学生や院生の参加があったことは大きなインパクトとなった。これまで不可視化されていたニーズがはっきりと顕在化したからである。
座談会で明らかになったことは、各個人によって理想の育児支援のあり方はそれぞれ異なること、そして大学側の財源の問題もあり無尽蔵に育児支援を引き出せるものでもないこと、しかし実現可能な支援策もまたあること、であった。特に在学中に妊娠・出産を経験する学生や院生に向けては、設備の充実も重要でありながら、育児に関する情報などやネットワークの提供など、ソフト面の対応の必要性が見えてきた。これらについては、今後CGSが中心となって整備していきたいと考えている。一方、この座談会を受けてCGSからは、(1)オムツ交換台の設置 (2)授乳室の開設 (3)保育室の開設 (4)保育士派遣NPOとの法人契約 (5)学生対象の産休制度の創設 の5点を緊急要望として大学側に提出した。その結果、(1)と(2)の実現が決まったのである(ちなみに(3)と(4)は引き続き検討課題となり、(5)は現時点では難しいとの回答を得た)。
いずれはオンキャンパスの保育所の開設を求めていきたいが、まずは一歩ずつ前進していかなければならない。その意味でも、授乳室の開設によって、需要を調べられることは有意義であろう。授乳室は授業が行われる本館の1階にある小教室で、さっそく中にはソファ、長椅子、ベビーベッド、オムツ交換台、キャビネット、電子レンジ、電子ポットが搬入された。フロアマットも敷かれ、子供がしばらく寛げる場として活用できそうだ。学部生・院生だけでなく、常勤・非常勤の教職員にとって、大学や職場にこのような場所があるということは、大きな安心であり、セーフティネットとなる。今回の設備の開設にあたって、関係各位に心から感謝したい。
*「みんなで語ろう! 大学での子育て」詳細は、CGSジャーナル「Gender and Sexuality」報告記事(PDF)をご覧ください。