<生きたいように生きる>株式会社

株式会社 創造集団 440Hz 代表取締役・社長:石本恵美
株式会社 創造集団 440Hz 取締役:長井岳
【CGS Newsletter015掲載記事 特集:働くと「生きる」をジェンダーの視点から考える】

「生きたいように生きる」をテーマに学生が集うシューレ大学(運営母体:NPO法人東京シューレ)。その卒業生たちが設立した株式会社が、創造集団440Hz(http://creators440.org/)です。働くことと生きることを見つめて立ち上がったこの会社について、代表取締役・社長の石本恵美さんと、取締役の長井岳さんにお話を伺いました。

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 シューレ大学は1999年、不登校や引きこもりを経験した若者とその応援者が、存分に学び、表現できる場を求めて自分たちの手でつくりだした。奇しくも、440Hz設立者の4人の半数はシューレ大学設立者でもある。そのひとりの石本にとって、シューレ大学で大きかった講座のひとつは「生き方創造」だった。

「生き方創造」は、社会の枠に無理に合わせるのではなく、ここにいる当たり前の私から始まって、自分の納得のいく生き方を模索しようと始まった講座である。学生たちは自分にとっての切実なテーマ(お金、働く、時間、社会と自分など)を元に、今までの自分を振り返ったり、これからどうしたいのかを探る。石本は、それまでの仕事経験を振返り、どのように働きたいのか考えを深めた。

 シューレ大学2年目、石本は仲間と共に、「映画を101本見るプロジェクト」をやり通した。101人の世界中の監督の情熱に圧倒されると同時に感じた「自分にも映画がつくれるかも、つくりたい」という思いは、フィクション映画やシューレ大学の紹介ビデオなど、毎年数本の映画制作へとつながっていく。そうして石本が監督した世界の教育の状況を紹介するドキュメンタリーは、映像販売会社の目に留まり、全国の大学や大学図書館が使用するビデオ教材として販売することにもなった。

 その頃、シューレ大学では「映像工房」「デザイン工房」という、より仕事に近い形で自分たちのやりたいことを磨いていくプロジェクトが始まった。そのメンバーが様々な制作をする間に、「シューレ大学修了後にどう生きるか」が話題に上るようになっていた。その話を続ける中で、石本の修了を機に、株式会社を設立する案が浮上する。株式を募集すると、予想を上回る多くの人に出資して頂き、創造集団440Hzを設立することができた。これまでに行なってきた仕事は、国連関係機関の第三国定住者支援のビデオ、放射能の危険性や対応法をわかりやすく伝えるネット配信映像、東京シューレ・フリースクールの25周年記念映像制作、そして、「人と人とをつなぐデザイン名刺」などである。

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 会社が動き出すと様々な人々とのやり取りが増えた。そういう状況だからこそ、より納得を重視する必要がある。自分たちのやりたいことは何か、それをより明確化しないと時にシビアな交渉に臨めない。メンバー間での話し合いはより濃密になっている。

 シューレ大学で得た、自らの納得を大事にし、相手を尊重するという文化。その価値観をもって働き続けていくことで、少しずつでも社会を生きやすいものにしていきたい。世界中の赤ん坊は誕生の時、〈440Hz〉の声で泣くという。自分自身でもコントロールできない、"根源からの思い"を殺さないで生きられる社会を目指して社名に冠した。会社設立から約2年、仕事は途切れずにある。シューレ大学から現在まで、多くの人々に支えられて私たちはいる。学校時代の不登校体験など、かつて傷ついて距離を取らざるを得なかった〈社会〉とは違った社会の存在を、今私たちは、確実に感じ始めている。

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