橋下徹氏(日本維新の会、大阪市長)の一連の発言に対する異議声明文

 CGS(国際基督教大学 ジェンダー研究センター)は、橋下徹氏(「日本維新の会」共同代表、大阪市長)の「従軍慰安婦」と沖縄の性産業をめぐる一連の発言(5月13日以降)、およびそれを擁護する政界の他の発言に対し、すべての人間、とりわけ近隣諸国と沖縄の女性の尊厳を貶めるものとして、強い異議を唱えます。


 橋下氏の発言は、全面的に、公職の立場を借りながら個人的な偏った歴史認識とジェンダー観を拡散させ、多くの人を不快にする以外の効用を持たないものですが、とりわけCGSが異議を唱えるのは以下の点です。

1)人権を擁護する弁護士という立場でありながら、「戦争に従軍慰安婦は必要だった」と発言することで、人命の犠牲を称揚する戦争と、人権蹂躙の最たるものである性犯罪の関連が必然であるかのように、同時に肯定していること。

2)被害者本人による多くの証言にも関わらず、「従軍慰安婦」が日本の戦時政府主導による制度であることをぼやかし、被害者を「優しい言葉をかけてあげねばらない」というパターナリズムの対象として論じることで、有力な日本政府の男性、無力な近隣諸国の女性という虚偽の構図をことさらに強調していること。

3)「米軍に、沖縄の性産業をもっと活用するよう勧めた」ことで、同地における米軍の存在を自明視すると同時に、沖縄の女性を性の対象としてことさらに強調していること。

4)性産業を「活用する」よう第三者に勧めることで、性産業に従事する人々を、自分の言葉一つで自由にできる道具であるかのように語り、その人々を不当に貶めていること。

5)「男性」「戦争」「性欲の処理の必要」を、過度に単純化したロジックで結びつけることで、民族を問わず男性全般を貶めていること。

6)あらゆる性自認、性的指向の人を、戦時中は性欲が強まったり、性の対象になったりしても仕方のないかのような、性に翻弄される存在として貶めていること。

 以上のすべての点を要約すると、「女性」「男性」「日本人」「朝鮮の人々」「沖縄の人々」「近隣アジアの人々」「アメリカ人」などのどのようなくくり、またはその組み合わせを想定しようとも、橋下氏の発言はその人々、すなわち人間全般を貶めるものです。

 弁護士、公人でありながら、人間の尊厳を無視した発言を、何のためらいもなく国際的に呈する橋下氏に、現職にふさわしい資質を認めることはできません。その発言に強い異議を唱えます。

ICUジェンダー研究センター 運営委員有志および助手有志

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