ICU学長:日比谷潤子
【CGS Newsletter016掲載記事/特別特集:CGS開設10周年へ向けて】
2005年4月に学科間専攻プログラムとして開設され、現在は31あるメジャー(専修分野)のひとつである、ジェンダー・セクシュアリティ研究(pGSS)。このカリキュラム制定に尽力され、現在はICU学長の日比谷潤子教授に、リベラルアーツにおけるpGSSの意義と、それをサポートするCGSの位置づけについてインタビューしました。(聞き手・構成:田中かず子、加藤悠二)
2003年、田中かず子先生にランチに突然誘われたのが、私とCGSの出会いでした。当時担当していた「日本語のバリエーション」(2008年度以降「言語のバリエーション」に改題)のシラバスに、ジェンダーを扱う旨が記載されていたため、お声掛けくださったそうです。そうしてCGSの運営委員会に加わることになりました。私は2002年にICUに着任したばかりでしたので、特に深くは考えず、とにかくやってみよう、というのが、当初のモチベーションでした。
CGSではPGSS*の立ち上げにも関わることになりました。当時教養学部長で、日本研究プログラムの主任でもあったM.Williamスティール先生のオフィスに通い、学際的研究プログラムのカリキュラムの組み立て方を伺いながら、PGSSを作っていたことを、いまも思い出します。例えばICUでは基礎科目のことを「ファンデ」と呼んでいますが、そうしたICU用語の意味や、カリキュラムにおける位置づけも、このときにきちんと知ることができました。この経験は、のちに教学改革本部長となり、教学改革を進めるにあたっても非常に役に立ったと思います。
また2004年度には、専門科目「言語とジェンダー」の立ち上げを担当することになりました。留学生を含め、さまざまな言語的背景を持つ学生が受講できるように、英語開講科目となったこともあり、準備は非常に大変でしたが、受講生も活発に参加してくれたのはとても嬉しかったです。CGSの活動に関わるなかで私自身も大いに鍛えられてきたのだな、と思っています。2008年度の教学改革以降、PGSSは学科間専攻プログラムから、メジャーのひとつに編入されることになりました。8つの学際的研究メジャーの中でもpGSSが独特なのは、ひとつは、ジェンダー・セクシュアリティの基礎理論を学ぶためのコアコースが設定されていること。そしてもうひとつは、中心的に関わっている教員が明確であることです。学生は「CGSの所員・運営委員の先生に聞けば、pGSSのことが分かる」とアクセスがしやすいわけです。アジア研究所や平和研究所は、研究機関としては精力的に活動していますが、学部メジャーとの連携は薄いのが現状です。大学院生のみならず、学部生をもまきこんだ活動をしているのはCGSの大きな特徴ですし、その存在がpGSSを後押しし、可視化を進めていると言えるでしょう。2010年度以降、毎年30名前後のメジャー登録生がいるのは素晴らしいことです。今後は、ICU高校の授業にCGSメンバーが出張するなど、高校との連携もできたらよいのでは、と思います。
pGSSを専攻するみなさんには、リベラルアーツの強みを活かし、学問の垣根にとらわれず、学際的かつ積極的に学んでいって欲しいと思います。また近年、pGSSやCGSがあることが動機でのトランスファー(他大学からの編入生)が増えてきている、とも聞きました。高校在学時の進路選択時には見えていなかったことが、大学生になってからようやく見えてくる、ということも、よくあることだと思います。ICUには単位編入などの制度もありますので、pGSSを始めとする本学の学びに、さまざまな方にアクセスしてきて欲しいですね。
*学科再編以前、pGSSはPGSSと表記していました。