CGSのこれからを考える


CGSセンター長:生駒夏美
【CGS Newsletter017掲載記事】

 今年、CGSは創立10周年を迎えました。これまでの10年は、CGSの創始者である田中かず子先生の強力な引力のもと、センターを誰もが安心できる居場所として確立させるべく、また、ジェンダー・セクシュアリティ研究を軌道に乗せるべく、関係者一同で実に様々な活動をしてきました。国際ワークショップや講演会の開催、ジェンダー・セクシュアリティ研究メジャーの運営や、研究者の育成、学内外とのネットワークを構築する活動として「多摩ジェンダー教育ネットワーク」への協力を行うのに並行して、ジャーナルやニューズレターを通しての研究成果や情報の発信、学内での人権イシューやLGBT学生支援の活動、子育て支援にむけての運動、ジェンダー・セクシュアリティ特別相談窓口の開設など、いくつも同時進行的に行なってきました。センターがこのように活動してこられたのは、ひとえにCGSに関わってくださった皆様のご支援のお蔭です。心より感謝申し上げます。

 10周年を迎えた2014年春には、折しも田中先生が定年退職されたわけですが、これからの10年を考えたとき、私たちはこれらの活動を可能な限り継続しつつも、創立当初と比較しての予算規模の縮小や、人的リソースの減少などの現実もまた、考慮する必然性に迫られています。マッチョな働き方を問い直し、スタッフや所員が燃え尽きてしまわないように、持続可能なセンター運営と効果を両立させるために何ができるか、手探りしながら進んで行きたいと思っています。そのためには数多い課題の中から焦点を絞っていく必要があると考えています。具体的には学内におけるジェンダー・セクシュアリティ問題に焦点を当てた支援と発信を大切にし、同時に大学教育/制度におけるジェンダー・セクシュアリティの問題を中心テーマのひとつに据えていこうと思います。今年11月には10周年記念のシンポジウムを開催しますが、そこでも私たちのすぐ近くにある国際問題、またキャンパスにおける国際問題を取り上げ、他者の問題ではなく自己の問題として、ジェンダー・セクシュアリティ問題を考える機会を設ける予定です。

 昨今、他の大学からLGBT学生支援について、CGSにお問い合わせいただく件数が飛躍的に増加しております。日頃CGSスタッフがイニシアチブを持って取り組んできた活動の成果を大変喜ばしく思うと共に、他大学においてもジェンダー・セクシュアリティ・センシティブなあり方の必要性を感じる人々が増加してきたことを嬉しく感じています。しかし、まだまだ大学での課題も山積みしていますし、大学以前の教育制度における問題や、大学の外の社会における男性中心性、男女二元論、異性愛規範など、大きな問題が依然としてあります。そんな中、「誰もが安心できる居場所」を守り育てていくことはセンターとして最重要課題と感じています。今後もスタッフ、学生・院生、所員と共にそのために活動していく所存ですので、どうぞよろしくお願い致します。

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