対立を語り直す―ジェンダー・セクシュアリティの視点からレイシズムを考える


CGS準研究員、早稲田大学大学院博士課程後期:堀真悟
【CGS Newsletter017掲載記事/特集「CGS 10周年記念シンポジウム」】

 この間、東京や大阪をはじめ各地で繰り返されてきた、在日韓国・朝鮮人、外国人へのヘイトスピーチ。これに対して行われている継続的なカウンター・アクションは注目を集め、ヘイトスピーチは次第に社会問題化されてきた。

 こうした現状に対してジェンダー・セクシュアリティ研究がなしうる貢献とはどのようなものだろうか。増幅するレイシズムを批判的に考察する知を、ジェンダー・セクシュアリティの視点から生み出すこと、これが本分科会の課題である。

 そのために今回は、セクシズムとレイシズムの重層的な関係を研究されてきたお二人の登壇者をお招きする。名古屋市立大学の菊地夏野さん、大妻女子大学の鄭暎惠さんである。お二人の議論に、討論者として堀真悟が、また会場の皆さんが応答されることで、その課題を漸進させたい。

 先だって述べておくと、本分科会の課題に取り組むには日本軍「慰安婦」問題について考えることが絶対に必要となるだろう。この問題に向き合おうとせずに日本社会が歩み続けてきてしまったことは、ヘイトスピーチが街路でまかり通る状況、さらには第二次安倍政権という極右政権の成立の土壌になっている。何よりそれは、差別や暴力による傷とその訴えを看過してしまう感性を、この社会に育ててしまったのではないだろうか。本分科会は、この感性を問うこと、そのために国、運動、アイデンティティ、あるいはナラティヴ間の対立を語り直すことを試みるものである。

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