留学制度と身体の周縁化 ―「性」の議論の不在を問う


CGS準研究員:松﨑実穂
CGS研究所助手、東京大学大学院修士課程:佐々木裕子
【CGS Newsletter017掲載記事/特集「CGS 10周年記念シンポジウム」】

 第2部では、日本への留学や留学制度についての議論において、いまだ十分になされているとは言いがたい、ジェンダー・セクシュアリティの視点からの考察を行う。特に、留学生が人種的/言語的/宗教的/文化的なマイノリティとして日本に滞在する際、「性」に関わる様々な制度や規範がどのように機能するのか?その中で留学生の身体はどのように不可視なものとされてしまうのか?という問いを発信することを目的としている。
 当日は、留学生受入れやサポートの現場を経験してこられたゲストスピーカーをお招きする。まず日本の大学における留学生受入れ体制の現状と課題について、CGS副センター長の高松香奈より報告する。次に、名古屋大学留学生センターの田中京子さんから、宗教的マイノリティとしての留学生と大学の制度についてご報告いただく。さらに、同センターの虎岩朋加さんから、留学生が受けるハラスメントについて中心的にお話しいただく。そして最後に、会場全体でのディスカッションを行い、議論の射程を広げていきたい。
「日本人」の学生と留学生の非対称性は日々産み出され、見えづらくなっている。これに対し、この部では、「性」の制度と、現状の留学制度との絡まり合いが、留学生の身体に何を及ぼしているのかということについて、視座の共有を企図している。また、単なる事例紹介と問題化に留まらず、一連の議論における「性」にまつわる問題の「不在」が意味することについても批判的に焦点をあて、今後の議論の発展へとつなげていきたい。

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