「ふわカフェ」で「もやもや」を語る、ということ


CGS研究所助手(2012-13年度):杢田光
【CGS Newsletter017掲載記事/特集「ICUのなかで、想いを語る場をつくる」】

「ジェンダー・セクシュアリティに関して"ふわっと"話せる場がほしい」という要望に応え、2012年12月に始まった「ふわカフェ」。Rainbow Action (http://rainbowaction.blog.fc2.com/)の「ゆるカフェ」「かもカフェ」を参考にこのイベントを発案した杢田光が、そのコンセンプトを綴ります。

「ふわカフェ」の「ふわ」は、言葉にすることが難しい、ジェンダー・セクシュアリティにまつわる違和感や揺らぎのことを念頭においた表現だ。LGBTといった言葉では、自分を表現しきれない。「LGBTコミュニティ」に参加しても、そこが自分の居場所では、必ずしもないように思える。私自身が抱えてきた、明確に言葉にしづらいような違和感や、行き場のない感覚(私たちはそれを「もやもや」と呼ぶことが多かった)を話し合い、受容できるようになる場がつくりたい。そんな想いを込めて、フライヤーには「恋愛とか興味がない」「自分の性の在り方をひとつに決めつけられたくない」など、アイデンティティを明確に指し示す言葉を使わないかたちで、様々なジェンダー・セクシュアリティの在り方を掲げて呼びかけた。また、当時ICU学部生の大久保まり絵さんが発案したゆるキャラ「ふわりん」は、「ふわカフェ」がCGSの他のイベントとは違う、「ふわっ」とした場であることを表現するのに、一役買っている。

「ふわカフェ」は、参加者が安心して過ごせる場になるよう、開始時間をCGSが閉室したあとに設定し、進行役として世話人を2名置き、グラウンドルールも設けることにした。最初に設けたルールは、「今日のお話は、ここだけのお話」「ここにはさまざまな人がいることを忘れず、否定をしない」「言いっぱなし、聞きっぱなしでもOK」「話したくないことは話さない、話せなかったことで諦めない」の4つだ。また、ジェンダー・セクシュアリティの話題に集中して話せるように、途中からトークテーマを決めることにした。

 最初はどれだけ人が集まるのか不安だったが、開催してみると毎月5~20人の参加者があり、CGSに初めて足を運んでくれる方がほぼ毎回見られた。「普段言葉にできなかったことを、この場で初めて話すことができた」という声を聞いたり、最初は話を聞いていただけの人が少しずつ自分の「もやもや」を言語化できるようになる場面に立ち会うことができたりと、嬉しい瞬間に多く出会うこともできた。

 世話人として難しかったのは、話したくないことを話すことを強要しないようにするのと同時に、話したいことがきちんと話せる雰囲気を確保しなければならない点だ。特に思い入れのあるテーマの回は、私自身の考えを押し出し過ぎてしまい、参加者それぞれの「もやもや」を話せる開かれた雰囲気を確保できずに反省することもあった。どうすれば「もやもや」を丁寧にすくいあげられるのか。私に積み残された大きな課題だ。

 2014年2月にICUのキャンパスを飛び出し、「就職活動とジェンダー・セクシュアリティ」をテーマに開催した「出張ふわカフェ@外大」も印象深い。東京外国語大学大学院生(当時)の唐川恵美子さんと、大学の就活支援の在り方について雑談している中から生まれたコラボレーションだ。外大にはCGSのように、日常的にジェンダー・セクシュアリティに関して話せる場が少ないという。そんな中、ある人は緊張して言葉を選びながら語ってくれ、またある人は普段の思いの丈をぶつけてくれ、「出張ふわカフェ」に大きな期待を寄せて来てくれた様子がうかがえた。今後も新しいテーマを扱ったり、ときにはICUを飛び出してコラボレーションしたりと、「ふわカフェ」が広がり、継続していくことを願っている。

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