トークイベント「わかったつもりのカミングアウト」


ICU学部生:川目漱一郎
【CGS Newsletter017掲載記事/特集「ICUのなかで、想いを語る場をつくる」】

2013年12月、トークイベント「わかったつもりのカミングアウト」を、R-Week特別イベントとして開催しました。ICUの学部3年生(当時)として企画を立て、当日は司会も担当した川目漱一郎さんに、イベントを振り返ってもらいます。

 今回のイベントは、日常経験において生まれる違和感を解決することを目的に企画を立てていった。当日は、セクシュアル・マイノリティ当事者である4名のICU学部生に登壇を依頼し、それぞれの経験談を語ってもらったのち、カミングアウトに関するいくつかの質問を軸に、登壇者同士でディスカッションを行った。また、ゲストとしてICU人権相談員特別アドヴァイザーであり、ジェンダー・セクシュアリティ特別相談員を勤めている、高田良実さんにもコメントを頂いた。

 今回のイベントの趣旨は大きくふたつあった。ひとつは、「カミングアウト」という概念をもう一度捉え直すことであった。私の経験上、「カミングアウト」という概念が持ち出されるとき、そこではカミングアウトの多様性や継続性が、しばしば不可視化されてしまっているように感じた。例えば、トランスジェンダーであること、レズビアンであることのカミングアウトはそれぞれ異なるにも関わらず、それらはひとつの「カミングアウト」という共通した概念(と思わせるもの)に集約されてしまっている。また、カミングアウトがする前とした後を分かつ境界となるような行為として語られることも往々にしてあるが、実際はそのように一度で人生を変えるような大きな行為ではなく、完了することのない人生スパンでの継続的な状態である、とも言える。今回のイベントのように、複数の現役学生が自らの経験を当事者として語る場は、ICUでも珍しいものだ。日頃は「セクシュアル・マイノリティ」としてひとつにくくられがちな当事者たちが、それぞれに異なる経験や考えを、イベントを通じて同時に共有することで、「カミングアウト」の多様性を捉え直すことができたと考えている。

 ふたつ目の趣旨は、この捉え直しを突きつけることによって、「寛容」と考えられているICUの文化に一石を投じることであった。「ICUは"寛容"な文化であり、カミングアウトも受け入れられる人が多い」という言説を聞くが、一体「受け入れる」とは何か。「受け入れる」対象となる「カミングアウト」というものの実態を、わかった気になってはいないか。こういった「寛容」さのあやうさ、不確かさにも問題提起していくことが当初の目的であったが、打ち合わせ不足もあり、ここまで踏み込んだ議論をすることができなかったように思う。

 全ての目的を達成することはできなかったが、それでも今回のイベントを通じて、自分が生きているなかで感じる多くの違和感について考え、それをどうにか形にして外の世界に出していくことの可能性を感じることができた。自分自身の感覚や実感に軸を置き、イベントを企画したり、メッセージを打ち出していったりすることは利己的ではないかと悩んでいたのだが、やってみると、自分の想いが多く入り込む分、人に届けられるように努力し工夫する原動力になるように思えた。このイベントへの挑戦は、自分に引きつけた、そして感情の乗ったメッセージを、これからも外に発信していこうという気持ちにさせてくれた挑戦であった。

月別 アーカイブ