居心地の良いスペース作り

CGSセンター長:生駒夏美
【CGS Newsletter018掲載記事】

 CGSは、いわゆる大学内研究センターとして、研究者のジェンダー・セクシュアリティ研究の場となっているだけではなく、学生や院生、また学外にも開かれたコミュニケーションスペースであることを創設以来の使命として守っています。一般に大学の研究所は、学生にはなかなか敷居が高いものでしょう。そこでCGSでは、読書会やティーパーティなどのイベントを開催したり、イベント以外でもふらっと雑談や相談に訪れることができるよう、学期中も長期休暇中も基本的には午前中から夕方まで開室し、図書の貸出なども行っています。

 この成果もあって、2014年度のCGS来所者数は4,200名を超えました。なかでも雑談などで訪れる日常利用者数が、前年度比で5割増となっているのが特徴的です。今、よく見られるのは、大学に登校するとまずCGSを訪れ、ここから授業に出かけて行き、授業後また戻ってくるという学生たちです。この利用方法は、CGSが学生たちにとって居心地の良いスペースとして機能していることを示すもので、喜ぶべきことではあります。しかし同時に、大学の他の場所の居心地の悪さを示す指標でもあることを忘れてはいけないのではないでしょうか。「ジェンダーやセクシュアリティに関わることは、CGSでしか安心して話せない」とさえ語る学生が増えていることは憂慮すべきことですし、CGSとして大学側にもっと働きかけていかなければならない課題の多さを突きつけるものでもあります。

 残念ながらキャンパスでは、まだまだマイノリティや女性が生きづらい状況があります。その形態はときに明確な差別的言動として現れることもありますが、たいていの場合は、友人や教職員が悪気なく無意識に発する理解ない言葉として現れ、それに傷つけられる学生が多くいます。CGSに所属する私たちは、学生がCGSしか安全と感じられない現状をこそ変えていかなければならないし、そのための啓発活動にもっと力を注がなければと感じています。

 昨年度の集計でもう一点顕著なのが、外部からの問い合わせの増加です。2012年にCGSが「LGBT学生生活ガイドin ICU」をリリースして以降、ICUにおけるLGBT学生対応や支援に関する問い合わせ数が飛躍的に伸びています。メディアや自治体からの問い合わせもありますが、過半数は大学や高校などの教育機関で、これまで無化されてきたLGBT学生の存在が、少しずつ可視化されるようになってきたことを感じます。「先進的事例」として注目されることが多いICUですが、まだまだ十分とは言い難い状況です。CGSがジェンダーやセクシュアリティ関連問題の対応部署のようになっている側面もあるのですが、これでは大学全体のアウェアネスを上げることにつながりません。すべての人の人権が大切にされるキャンパスの実現を目指して、CGSが取り組むべき課題はまだ多いと感じています。どうぞ引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

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