講演会「WEL-COMING OUT!! 家族と友人にできること」を企画して

ICU学部生(ID 18):松田英亮
【CGS Newsletter019掲載記事】

第4回R-Weeks(2016年5月31日(月)~ 6月11日(土))では、「WEL-COMING OUT!! 家族と友人にできること」と題し、NPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」東京理事・小林りょう子さんをお招きした講演会を、6月7日(火)に開催しました。このイベントで司会・コーディネーターを担った松田英亮さんに、この企画の経緯・実施報告をお寄せ頂きました。

 私はR-Weeksイベントとして「家族へのカミングアウト」をテーマに、ご自身もFtMの子を持つ親であり、LGBTやその家族・友人の支援活動を行う小林りょう子さんをお招きする講演会を企画した。カミングアウトをしたい・できないと悩む人も、カミングアウトをされて戸惑う人も、誰もが快く手を広げて抱きしめあえるような、互いにウェルカムな姿勢を持つにはどうすればよいのかを考える機会にすべく、「WEL-COMING OUT」というタイトルをつけた。

 しかし、小林さんご自身のお話や、活動を通して知ったという他の当事者のお話は、私には時に涙を流してしまうほど衝撃的なものだった。「気の迷いだと精神科に連れて行かれた」「学校に行くなと軟禁され転校させられた」「死んだ者扱いされた」、「『中絶すれば良かった』『頼むから死んでくれ』と親に言われた」など命がけの話に、自分の「カミングアウトはきっといつか成功する」という認識の甘さを痛感した。カミングアウトは常によい結果をもたらすとは限らない。小林さんは、カミングアウトを希望する当事者には「普段から何でも話せるようなコミュニケーションを相手ととれているか」を聞くそうだ。大学生が元々あまり関係の良くない親にカミングアウトをしたら経済的援助を止められたなど、自分の生活や夢が困難になる事例もあるため、慎重に考えるべきだという。また、カミングアウトを受けた親も、世間からの疎外感から孤立しがちで、自分や子どもを責めてしまうこともあるそうだ。

 これらのお話から私は、「WEL-COMING OUT」には互いの人生を尊重できる関係性が必要だと感じた。私には、家族へ自分の性的指向を伝えることに悩んでいる、大切な存在が身近にいる。私は、こんなにも素敵な人が「伝えたい事が伝えられない」と悩んでいる姿を見るのが悲しく、何かできる事はないかと悔しさの混じった気持ちも抱えていた。この企画には、その人のカミングアウトを後押しする気持ちが少なからずあった。今すぐにではなくともきっといつかできればと、長期的に応援する気持ちでいた。しかし本当にその人の生きやすさを考えるのであれば、時にカミングアウトをしない方がよい場合が、現在の社会には残念ながら存在することを学んだ。それでも私は、「今は言わない方がよい」とは口にしたくない。だからこそ、自分の身近な人には、日頃の関係性について再度考えてみて欲しいと伝えたいし、カミングアウトされる側の人には、日常会話の中でこの企画について触れるなどして、私はオープンであるという姿勢を示すだけでも環境は大きく変わるのだということを伝えたい。これは一部の特別な人間のみが考えることでは決してなく、ひとり一人に関係する事柄であることが、大学全体で考えられるような機会となっていたなら嬉しい。小林さんが、最後に紹介していた詩のように、ありのままに受け入れられる姿勢を、皆が持てるようになることを願っている。

「私の子供は四葉のクローバーのようです。性的指向はたまたま私と違っていますが、私にとっては、大切に守ってあげたい宝物です。四つ葉のクローバーは不自然なものではありません。ただ、珍しくて、大勢とは違っているだけです。私は、それから葉を一枚もぎとって三つ葉のクローバーに見せかけたいとは決して思いません。」
( 出典:PFLAG, Our Daughters and Sons (Washington, DC: PFLAG, 1995), 8, http://pflagupstatesc.org/forms/daughters_sons.pdf 日本語訳:かじよしみ)

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