05. コラム: 2004年4月アーカイブ

センター長:田中かず子

 ほんの少し前までは全く馴染みの無かった「ジェンダー」という言葉が、一般の人たちの間にも浸透してきた反面、最近ではマスメディアによって否定的なイメージが付与されつつあります。特に男女共同参画社会基本法の施行以後、「ジェンダー・フリー」は人間を中性化して日本人の美徳を破壊する悪しきイデオロギーである、との批判が投げかけられています。

人文科学科: 宮坂夏美【CGS News Letter001掲載】

 テレビドラマを見ると、それぞれの社会の成熟度が見える。例えば英米のテレビドラマからは、ジェンダー・ステレオタイプはほとんど姿を消したが、日本では依然偏った男女観が横行している。最近のドラマでも、人気俳優のセリフには時代劇かと思うようなジェンダー差別が埋め込まれており、視聴者の多くを占める若者への影響について危機感を感じた。日本のメディアは社会の中で最も女性の進出が遅れている世界だという。圧倒的男性社会で、ナルシスト的な男性論理によって、番組が量産されているのが日本の現状である。だがこれはテレビ業界が特殊なのではなく、日本社会に存在するジェンダー観の発露に過ぎない。だから私は、社会の成熟度の差を突きつけられた気がして、暗澹とした気分になるのである。

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