日時:2008年11月1日(土)14時~16時
参加者:24名
報告:二木泉
第3回WSのテーマは「肯定的に話すスキルを身につけよう」。自分も相手も我慢しないコミュニケーションを目指して、話し方のスキルを学び実践しました。始めに受付をしてもらい、今日呼ばれたい名前を書いた名札を付けました。学園祭が行なわれていたこの日は、半分以上(15名)が初めての参加でしたが、お茶やお菓子を頂きながらリラックスした雰囲気で講座が始まりました。
1. アイスブレーク「自分が言いたいこと伝えたいことで上手く相手に伝えられないことを話し言葉で書いてみよう」
今回のアイスブレークは友人、家族、恋人、上司、同僚など身近な人に対して、普段はなかなか言えないことを話し言葉で書き出してみるというもの。一人ずつ用紙に記入した後で、4人程度のグループに分かれてそれぞれ書いたものを発表しました。聞いている側はその言葉を聞いてどう感じたか率直な感想を伝えます。「びっくりした」「怒られている感じ」「唐突に感じる」など様々な感想が寄せられました。中には「そうそう!」「分かる!」「実は私も・・・」など共感の声や「もっとこう言ったほうがいいんじゃないかな?」とアドバイスをしあうなど話し合いが盛り上がっているグループも。一旦ここでグループワークは終了し講義に入りました。
2. 意思の疎通とは?
①理想的な意思の疎通とは何か?
まず「理想的な意思の疎通とは何か?」について考えました。高山さんからの「理想的なコミュニケーションとはどんなものだと思いますか?」との問いかけに「正確に伝わっていること」「誤解のないこと」「否定されないこと」など色々な意見が出されました。高山さんによると「言葉」で伝わるのは、メッセージ全体の10%程度であるとのことです。その他に声のトーン、身振り、手振り、表情、口調など様々な要素が合わさって、一つのメッセージとなるのだそうです。人に何かを伝えるときにはその内容ももちろん重要ですが、理想的な意思の疎通ができるようになるには、相手への伝え方がより大切であると分かりました。
②意思の疎通の妨害になる言葉
次に何気なく発する言葉が相手に否定的な印象を及ぼし意思疎通の妨害になる言葉があることを学びました。
それらは、相手に批判・批評・非難をする言葉(「あなたの考え方は慎重さが足りない」「あなたは努力してない」)、命令・強調する言葉(「必ず~」「絶対に」「しなければならない」)はもちろんのこと、「~すべきである」「~するのがあなたの責任」などの訓戒・説教、「しかしね~」から始まる理論的な説得や論争も意思疎通の妨害になります。また、アドバイス(「~するのはどう?」)や慰めの言葉(「心配することないよ!」「きっとよくなるから」)も、話を聞いていないように思われてしまう恐れがあります。さらに「何か楽しいことを話そうよ」と話を変えることは、気持ちを十分に受け止めてくれていない印象を持つことがあるため意思疎通の妨害となってしまいます。普段のコミュニケーションを考えてみると、意外とこれらの言葉を使っていることに気が付きました。
3. 自分も相手も我慢しないコミュニケーション
① 葛藤をめぐる4つのパターン
理想的なコミュニケーションをするために「自分も相手も我慢しないコミュニケーション」とはどんなものかについて学びました。コミュニケーションには4つの葛藤パターンがあるそうです。
例えば、Aさんがあなたに何かを依頼してきたとき、あなたはできれば断るか、違う選択肢を提示したいと考えています。(例:上司Aから勤務時間終了間際に「今日中にお願い!」と仕事を依頼された。あなたは今日は約束があるからもう帰りたいと考えている。)その時のAさんとあなたとの間のコミュニケーションでは、次の4つのパターンとなります。
1.Aさんの気持ちも受け止め、行動も受け入れる(あなたにストレス)
2.Aさん気持ちも受け止めない、行動も受け入れない(Aさんにストレス)
3.Aさん気持ちを受け止めない、行動は受け入れる(あなたとAさん)
4.Aさん気持ちを受け止め、行動は受け入れない(お互いに我慢しない)
4つ目のコミュニケーションの場合、Aさんに対しては共感を示し、相手の気持を受け止めることで安心を与えることになります。その上であなたの考える他の選択肢や、要求に答えることができないことを伝えることは、双方が伝えたいことを伝えることができ信頼関係の構築にも繋がります。「気持ちを受け止めた上で、行動は受け入れないこと」はお互いが我慢しないため、上手なコミュニケーションといえるでしょう。
② 個人と問題を分ける
理想的な意思疎通には、個人と問題を分けることも重要です。本人の性格や資質、癖は他人がコントロールすることはできません。しかし問題は方法が見つかれば解決や対処の可能性があるのです。何かを伝えるときには、何が問題なのかを見極め、適切に伝えることが大切です。
③ アサーティブコミュニケーション
コミュニケーションには、伝えたいことを充分伝えることができない受身的コミュニケーション、内容を伝える以上に感情が先行してしまう攻撃的コミュニケーション、そしてアサーティブコミュニケーションがあります。アサーティブコミュニケーションは、相手を脅したり、懲らしめたりすることなく、自分の意見を直接的に表現する方法です。アサーティブな表現は、まずコミュニケーションの当事者が「安全」な環境にあることが求められます。安全な環境とは、①過去へのこだわりや未来への不安を持ち込まないこと、②非合理な思い込みをしない、③怒りを溜め込まない、④メッセージの裏側(本音と建前)を深く考えすぎないことなどです。これらの言葉の「駆け引き」をしないためには、「アイメッセージ」が有効です。「アイ」はeyeとI。目線(eye)を合わせてコミュニケーションを取ること、そして「私」を主語にして文章を作ることです。例えば、「あなたは私の言うことを全然聴いてくれない」をIメッセージに変えると、「私はあなたに聴いて欲しい」となります。この言い方なら、相手に自分の言いたい内容が素直に伝わるから不思議です。
最後にどのように対応しても相手の攻撃や支配がエスカレートする場合には「撤退」することも大切なことであるという話がありました。自分がどれだけ努力しても相手によっては、肯定的なコミュニケーションが成立しない場合もある、ということを理解しておかなければならないとのことです。
④上記のテクニックを使って、自分の伝えたいことを言い換えてみよう
ここで今日の講義で聞いたことを参考にして、それぞれが自分が伝えたいメッセージを肯定的な言い方になるように書き換えてみました。講義を聴いて、かなり理解したつもりになっていましたが自分のメッセージを言い換えるのは難しくかなり時間がかかってしまいました。しかも自分では「Iメッセージ」に直せていたと思っていたのですが、直っていないところもありました。(例「~して下さい」は、Iメッセージではなく、命令の丁寧語だそうです。)
その後、グループに戻って書き換えた内容を発表しました。皆さん最初とメッセージの内容は同じなのに全く違うメッセージに聞こえるほど印象が変化していました。肯定的な話し方で言われると、言われた方が受入れやすくなるだけではなく、罪悪感を感じたり改善したいと思わせるから不思議です。
高山さんからは、「聴いたことの30%、見たことの50%、やったことの80%しか身につかない」と教わりました。すぐに使えそうな内容がたくさん盛り込まれていたワークショップで、是非、毎日の生活で実践してどんどん身に付けて「自分も相手も我慢しないコミュニケーションを」実践していきたいと感じました。