01. ニュース: 2004年4月アーカイブ

ICU在学生:新田裕子【CGS News Letter001掲載】

 ICUのある三鷹市では、現在市民が集まり「三鷹市男女平等条例」の試案作りが行われている。2月の会議では、「ドメスティック・バイオレンスの定義と禁止条項の中に『男性から女性への暴力』という文言を明記すべきか否か」が論点となり、二つの意見が鋭く対立した。1つ目は男女間に限らず例えば同性愛者間の暴力も同様に抑止するため、条文中の「男性から女性へ」という文言を削除し、代わりに「親密な関係にあるもの」とすべきという先進的な意見。2つ目はこれに対し、実際の被害者の大部分を占める女性の保護を徹底するため、「男性から女性へ」と明記するべきという意見。確かに性的マイノリティも保護したい。しかし、「男性から女性へ」と明記しないことで、当初対象としていた男性から女性への暴力に対する抑止効果が弱まってしまう。ここに大きなジレンマがある。現在苦しんでいる女性を救うために性的マイノリティを切り捨てていいのか。一部の人権を守るためには他の人々の人権を軽視せざるを得ないのか。私はICUの学生として会議に参加しこの大きな問いにぶつかった。そして今も答えを模索し続けている。

ICU在学生:清水雄大【CGS News Letter001掲載】

 昨年、性同一性障害(GID)による戸籍上の性別変更を可能とする特例法が成立、今年7月に施行される。GIDと診断された者のうち、①20歳以上 ②現に婚姻をしていない ③現に子がいない ④生殖腺またはその機能がない、などの要件を全て満たす者が性別変更が可能だとした。社会に無視されてきた当事者にとってこの法律が持つ意味は極めて大きい一方、子供を生んだという過去の事情で将来を縛る酷な規定であるなど問題は多い。現に全ての要件を満たす者は、希望者の4分の1程度に留まる見通しだ。また私たちは、GID当事者たちをそのような立場に追いやる、戸籍で性別を管理するという性差別的制度への批判的な視点を持つ必要がある。

ICU在学生 : 久保田裕之【CGS News Letter001掲載】

 日本におけるジェンダー研究と法学の溝を埋め、研究者と法律実務家の橋渡しになることを目指して2003年12月6日・7日、早稲田大学においてジェンダー法学会の創立集会と第一回シンポジウムが行われました。2日間にわたって多くの法曹実務家・法学者・社会学者の方々が参加し、大変な盛況のうちに幕を閉じました。2004年度から日本で新しくスタートする法科大学院における将来の法曹のジェンダー教育の問題、および女子差別撤廃条約などの国際条約をどのようにして国内の裁判に活用していくかという問題などについて、発表・報告に続き熱い議論が交わされ、まだ新しいジェンダー法学という実践の可能性を感じた2日間でした。

ICU在学生:清水雄大・久保田裕之【CGS News Letter001掲載】

 2004年1月、男女雇用機会均等法をめぐる女性労働訴訟として注目を集め、控訴審で係争中だった住友電工裁判の和解が発表された。これは同社に勤務する女性らによって、男女差別を行ってきた会社と国を相手取って争われた労働賃金訴訟である。大阪高裁の強い勧告で実現した今回の和解では、間接差別の存在を認め、①会社は原告に1人500万円を支払う ②原告を昇進させる ③国は差別是正のため積極的に調停を行っていくという画期的な内容であった。私たちはこの朗報に強く胸を打たれたが、その夜のニュースでの扱いの小ささに日本での男女平等への道のりは長いのだと思い知らされた。

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