01. CGSから: 2004年4月アーカイブ

ICU教授 田中かず子【CGS News Letter001掲載】

 2004年4月、国際基督教大学(ICU)にジェンダー研究センター(CGS)が正式に発足することとなりました。
 当センターは、①アジアにおける女性学・男性学・ジェンダー研究のネットワーク作り ②欧米の情報受信・翻訳偏重から日本の情報を世界へ発信する拠点となること、そして ③社会科学や人文科学だけでなく、自然科学をも組み入れたジェンダー研究の発展をめざすという、3つの大きな目標を掲げています。

センター長:田中かず子

 ほんの少し前までは全く馴染みの無かった「ジェンダー」という言葉が、一般の人たちの間にも浸透してきた反面、最近ではマスメディアによって否定的なイメージが付与されつつあります。特に男女共同参画社会基本法の施行以後、「ジェンダー・フリー」は人間を中性化して日本人の美徳を破壊する悪しきイデオロギーである、との批判が投げかけられています。

ICU在学生:デイヴィッド・ジェフリース【CGS News Letter001掲載】

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アメリカ・マサチューセッツ州ウェルズリー大学教授でありフェミニスト政治学者であるキャサリン・ムーンさんが2003年12月18日、ICUにてジェンダーとナショナリズムの関係について講演を行った。私は講演の中で見た、韓国の米軍基地周辺の売春問題に関するドキュメンタリーに大きな衝撃を受けた。軍隊という構造的な抑圧が、地域社会の内部に結束のみならずどのように分断をもたらすのか。男であり、アフリカ系アメリカ人である私の立場はこの問題とどう関連づけられるのか。日本という外国で暮らしている自分は社会にどのような変化を与えることが出来るのか。私はこれからも「個人的なこと」を「政治的なこと」として考えていきたい。

ICU在学生:川坂和義【CGS News Letter001掲載】

 2003年12月19日に世界人権デー記念の人権セミナーの講師としてICUに上川あやさんがいらっしゃいました。上川さんはトランスジェンダーであることを自らカミングアウトして世田谷区議選に出馬し、当選なさった方です。トランスジェンダーとは、「心の性と体の性の食い違いに苦しむ状態」のことでWHO(世界保健機構)の分類にもある疾患名です。

ICU在学生:新田裕子【CGS News Letter001掲載】

 ICUのある三鷹市では、現在市民が集まり「三鷹市男女平等条例」の試案作りが行われている。2月の会議では、「ドメスティック・バイオレンスの定義と禁止条項の中に『男性から女性への暴力』という文言を明記すべきか否か」が論点となり、二つの意見が鋭く対立した。1つ目は男女間に限らず例えば同性愛者間の暴力も同様に抑止するため、条文中の「男性から女性へ」という文言を削除し、代わりに「親密な関係にあるもの」とすべきという先進的な意見。2つ目はこれに対し、実際の被害者の大部分を占める女性の保護を徹底するため、「男性から女性へ」と明記するべきという意見。確かに性的マイノリティも保護したい。しかし、「男性から女性へ」と明記しないことで、当初対象としていた男性から女性への暴力に対する抑止効果が弱まってしまう。ここに大きなジレンマがある。現在苦しんでいる女性を救うために性的マイノリティを切り捨てていいのか。一部の人権を守るためには他の人々の人権を軽視せざるを得ないのか。私はICUの学生として会議に参加しこの大きな問いにぶつかった。そして今も答えを模索し続けている。

語学科:日比谷潤子【CGS News Letter001掲載】

 「ジェンダー」は学問の今日的発展にとって重要な概念、分析の枠組であると認識されています。人文科学や社会科学やもとより、自然科学においても、新たな学問的理解の開拓には「ジェンダー」の視点からの考察が不可欠です。ICUではこれまでにも、ジェンダー関連のコースが複数開講されてきましたが、2005年度からのスタートに向けて現在準備を進めている「ジェンダー研究プログラム」では、複数の科目を有機的に関係づけ、一貫性と継続性のあるカリキュラムを提供することによって、ジェンダー・セクシュアリティについて学際的に学びたい学生の要望に応えることを目指します。

社会科学科: 大石奈々・国際関係学科: 田中かず子【CGS News Letter001掲載】

 ICUのCOEプロジェクトが掲げる「平和、安全、共生」という三つの概念は、互いに深く関連していますが、私たちはこれらを統合しうる「人間の安全保障」*という概念に注目し、「人間の安全保障とジェンダーに関する「知」の創造:アジアの視点から」をCGSのプロジェクトのコンセプトとします。

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