02. 日本から: 2006年4月アーカイブ

早稲田大学大学院:森脇健介

 2005年11月12日、男女共同参画社会基本法の現状と、最近のジェンダー・バッシングをテーマとしたシンポジウムが早稲田大学において開催され、百人超の人々が参加した(主催:早稲田大学ジェンダー研究所)。タイトルは、「危機にある『男女共同参画社会』?」。そもそも今の社会は、男女共同参画の可能な社会となっているのか、そしてこの「男女共同参画」の理念は、真に「男女平等」の理念に立脚しているのか、という二つの疑問から、このようなタイトルが選ばれた。

調査結果をダウンロード

 2005年度秋学期に開講された「比較社会学特別研究I」(田中かず子教授)で行った大学生の性行動と性意識についてのアンケート」調査の単純集計結果を報告いたします。
 結果報告が調査実施時期より時間がたってしまったことをお詫び申し上げます。
 調査に関する質問は下記、連絡先までお願い致します。おりかえし代表者よりお返事申し上げます。

比較社会学特別研究I 受講生一同
 代表者:川口遼
 連絡先:hikakushakaigaku@yahoogroups.jp

ICU大学院 : 平野遼
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 昨今の日本では、「ジェンダーフリー」という言葉が、政治、教育といった領域でバッシングの対象となっている。「ジェンダーフリー」という言葉自体はおおよそ「社会的性差(ジェンダー)の押し付けから自由(フリー)になる」という意味合いで用いられている和製英語である。この言葉を巡って最初に議論が起こったのは、性教育に関する議論の中でのことだった。日本の性教育現場において、「ジェンダーフリー」という言葉は非常に多く用いられてきた。しかし近年「ジェンダーフリー」に基づいた性教育は過激であり、伝統的な価値観を壊すとの批判が多くおこっている。例えば、2005年山谷えり子参議院議員が参院予算委員会の中で性教育の問題を取り上げたことなどは記憶に新しい。当時の男女共同参画担当相でもある細田官房長官は「社会的・文化的性差 の解消」という意味合いにおいてジェンダーフリーという言葉を「政府は使っていないし、社会的に定義を示すことはできない。できるだけ使わないことが望ましい」と述べた。しかしこの発言の前に細田官房長官は「社会的・文化的性差の解消」という意味合い以外での「ジェンダー・フリー」の使用は自由であると述べたことはバッシング派には黙殺されている。このような経緯で「ジェンダーフリー」という語の使用への牽制は、1996年に国が制定した「男女共同参画基本法」を巡る議論にも遡及的に影響を及ぼすようになったのである。

CGS編集部
【CGS News Letter005掲載】

 2005年6月14日、「『男女共同参画』に隠された問題をただす!!」と題し、参議院議員である山谷えり子さんの講演会が三鷹市産業プラザにて行われた。男女共同参画推進協議会副部会長を務め、一男二女の母でもある山谷さんによるこの会は、内容・形式ともに、まさにバックラッシュの「講演会」であった。
 

ICU大学院 : 鈴木直美
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 近頃、性教育やジェンダー・フリー教育に反対する声が喧しい。このレポートではバックラッシュ派がまさに批判している当のジェンダーフリー教育の言説に対して、私が常々感じている違和感について考察してみたい。

國學院大學法科大学院 : 田口辰徳
【CGS News Letter005掲載】

【要約】
 2005年10月21日、CGS・就職相談室の共催による講演会「公序良俗に負けなかった女たち」が行われた。講演者は、住友電工男女賃金差別裁判の元原告の一人である西村かつみさんと、同元弁護団長の宮地光子弁護士。同裁判の内容はNL001号でお伝えした通りだが(HP上でも公開中)、今回の講演会では、日本における雇用の実態について知ることができた。
 現在、雇用における問題の中心は間接差別だ。その代表的な例が、女性に対するものである。主に女性が占めていた一般職の採用は減る一方であるのに対し、総合職における女性の割合は未だに1割程度といわれている。これは事実上、女性を正規雇用の仕事の現場から排除しているといえるのではないか。
 また、パートタイムや派遣など、正社員とほとんど変わらない仕事をしているのに、賃金は大幅に低い状態にあるような雇用形態も問題である。とりわけ、現在パートタイム労働者・派遣労働者の実に7割近くが女性である。未だに女性が多くの家事・育児労働を担っている状況下において、女性がパートタイム労働や派遣労働を選択せざるを得ないという社会的問題を忘れてはならない(平成14年版及び15年版「働く女性の実情」)。
 今年、均等法は改定される予定だ。いま、そこに間接差別の禁止が盛り込まれることが強く望まれている。もし実現すれば、雇用における問題は大きく改善されるはずだ。今回の講演者の二人も、そのような実効力のある均等法にするため日々活動している。

ICU学部生 : 川口遼
【CGS News Letter005掲載】

【要約】
 映画「メゾン・ド・ヒミコ」では、ゲイのための老人ホームを舞台に、借金を背負いながら塗装会社の事務員として働く沙織(柴崎コウ)、老人ホームのオーナーである沙織の父親・卑弥呼、その恋人・春彦(オダギリジョー)を巡る人間模様が描かれている。その性のあり方故に家族から離れて生活する老人ホームの入居者たちは、人生の末期において否応無く家族と向き合わさせられていく。また、この映画は沙織がつとめる塗装会社の専務、細川(西島秀俊)を巡る女性社員の争いを湛然に描くことにより、普遍的とされていた異性愛規範を相対化もする。この会社には、細川との性的な関係を担保に、女子社員の会社内における権力が保証される構造が存在する。この構造は、まさしく非対称的な男女間のセクシュアリティの交換を正当とみなす、異性愛規範に基づいている。この構造から距離をとっている沙織、春彦が細川と関わることにより、今まで問われることのなかった細川のセクシュアリティが相対化され、ひいては構造自体が非普遍的であることが暴かれる。つまり、この映画は一見するとゲイを巡る物語のように見えるが、異性愛規範を問うものとも読めるのだ。

大阪大学大学院 : 久保田裕之
【CGS News Letter005掲載】

 2005年12月3日・4日と、雪のちらつく宮城県仙台市において日本ジェンダー法学会(JAGL)の学術大会が開催された。研究者と実務家の橋渡しを目指して2003年に発足した当学会も今年で3年目を迎える。会場を東北地方に移した今回も、全国からジェンダーと法に関心を持つ法学者・弁護士・司法書士をはじめ、法社会学・社会学などの研究者からNGO関係者までが集まり、報告やシンポジウムのなかで熱心な議論が交わされた。私は、ジェンダーと法を学ぶ学生の全国ネットワークである「ジェンダー法学ネットワーク」(GLn)のメンバーとして第1回大会から毎回参加していることもあり、今回の大会の内容や雰囲気などを2日目の個別報告を中心にレポートしてみたい。個人的には、ジェンダー法の若手研究者二人の報告は実践的にも理論的にも非常に興味深く心躍るものであった一方で、学会における研究者と実務家との橋渡しという点においては今後の課題を意識させられたというのが、感想である。

ICU大学院 : 平野遼
【CGS News Letter005掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 近年、LGBT雑誌業界の浮沈が著しい。ゲイ専門誌の老舗「薔薇族」は04年11月に廃刊になり、05年4月に復刊したが、再び06年1月号をもって廃刊となった。また02年創刊のレズビアン専門誌「カーミラ」も05年12月発刊のVol.10をもって終了した。しかしその一方で05年12月には、タワーレコードからLGBTを対象とする初のライフスタイルマガジン「yes」が新しく発行されてもいる。

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