ilc: 2005年4月アーカイブ

2005年国際ワークショップコーディネーター : 生駒夏美
【CGS News Letter003掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 ICUジェンダー研究センターはこの春オープン1周年を迎え、所員が20名、センターの運営に関わる学生30名の大所帯へと育ちました。この1年間のCGSの活動は多岐に渡るものでした。著名な講師を招いての定期的な講演会やカジュアルなランチ会を開催、11月25、26、27日の3日間には第一回国際ワークショップを開催し、「アジアにおける人間の安全保障とジェンダー」をテーマにアジア10カ国からの参加者たちが活発で刺激的な議論を行ないました。それぞれの文化的・歴史的事情によって安全が何であるかは少しずつ異なりますが、国による安全保障が軍事的に展開される中で女性にとっての安全という概念が失われてしまう共通性が明らかになりました。また国や言葉の違いを超えてジェンダー研究者の家族的なつながりを築くことができ、CGSにとって非常に価値のあるワークショップとなりました。今年6月に韓国のソウルで開かれる女性学の世界大会(WW05)では、このワークショップの結果を報告し、アカデミアと活動家の協働関係の可能性をさぐるパネルを提供します。

ICU学部 : 川坂和義
【CGS News Letter003掲載】

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  2004年10月21日、ICUにおいてアン・ウォルソー先生と殿村ひとみ先生による共同シンポジウムが行われた。今回のシンポジウムは、発表者と参加者が活発に意見を交換できるような和やかな雰囲気で行われた。二人の議論は、今まで私が知っていた日本史とは全く違った歴史像を展開していった。

大阪大学大学院 : 久保田裕之
【CGS News Letter003掲載】

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 医学や生物学のような客観的な自然科学の領域にまでジェンダーの視点を持ち込むことは、科学とは何かを解さない社会科学者の越権行為なのだろうか?科学とは何か、客観性とは何かを考える上では、認識論や科学哲学といった視座が不可欠となってくる。

ICU留学生 : カーラ・フランティーニ
【CGS News Letter003掲載】

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 2004年10月20日(水)、ICUでイギリスのブリストル大学のテリル・カーバー教授による「セックス、ジェンダー、セクシュアリティ:メタファー/言説/政治」と題された大変刺激的な講演が行われた。セックス・ジェンダー・セクシュアリティの概念が持つ歴史、またこの10年に見られる質的変容に関する論議に続いて、これらを互いに独立したコンセプトとせず、相互に関連した問題として捉えることの重要性が論じられた。講演では、具体的な事例が数多く取りあげられ、伝統的なセックス・ジェンダー・セクシュアリティ観を疑問視する現在イギリスで進行中の二つの法案についても触れられた。

PGSS運営委員会
【CGS News Letter003掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

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 2005年4月からICUではジェンダー、セクシュアリティ研究を学際的に学ぶジェンダー・セクシュアリティ研究プログラム(PGSS)がスタートしました。

ICU大学院 : 平野遼
【CGS News Letter003掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 女性であることを理由に昇進や賃金で差別を受けたとして、住友金属の女性社員ら4人が、会社に男性社員との差額賃金や慰謝料など計約3億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は28日、計約6300万円の支払いを命じた。住友グループ3社の一連の男女差別訴訟で、女性側勝訴の判決は初めてである。しかし、住友金属側は控訴の姿勢を固めており、その企業内の労務管理を改めるといったコメントを表明する意向もないようだ。他の住友系の住友電気工業と住友化学工業については一審大阪地裁がいずれも請求を棄却したが、大阪高裁で会社側が昇格や解決金支払いに応じ和解が成立している。他の2社が和解という形でもこの問題を解決しようという姿勢を見せているのとは対照的に、である。こういった体質はある種日本企業の暗部であり、改善されるべき問題の一つといえよう。

ICU学部 : 清水雄大
【CGS News Letter003掲載】

 母国で貧しさに窮している女性を日本でいい仕事があるなどと言葉巧みに誘い、運び屋が偽造パスポートなどを駆使し日本に移送。暴力団などに監禁された後、風俗店などに売り渡され、移送料などの名目で平均300〜500万円の借金を背負わされる。被害者はどのくらい返済したのかも知らされることなく、別の店へ次々と「転売」され、性労働を強制され続ける-----米国務省が2月に発表した人権状況に関する2005年度国別年次報告書は、日本におけるトラフィッキング(人身売買)の深刻さを浮き彫りにした。

専修大学大学院 : 田村直子
【CGS News Letter003掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 2004年国会で裁判員法が成立した。重大な刑事裁判に市民が参加する制度で、2009年までに施行される。国民の司法参加は民主主義の実現にとって意義が高く、その道を拓いたのは画期的だが、裁判員制度は未だ様々な問題を含んでいる。その一つは、ジェンダー視点の欠落という問題だ。

ICU大学院 : 東 志保
【CGS News Letter003掲載】

 2004年10月14日(木)、東京外国語大学で、トリン・T・ミンハの新作「Night Passage」の上映会・講演会・及び札幌大学の今福龍太教授(文化人類学)と立命館大学の西成彦教授(比較文学)とのディスカッションが行われた。ミンハは、ポスト・コロニアリズムとフェミニズムの立場から、彼女自身がもつ複数のアイデンティティ(ヴェトナムで生まれ、フランスとアメリカで学び、セネガルで教える)を利用し、アイデンティティの複数性の問題について、映像・詩・音楽・著作活動で表現してきた。カリフォルニア大学バークレー校で映像論の教鞭もとっている。私は映画、とくにフィクションとドキュメンタリーの境界の問題について関心があるので、ジャンルに頼らない映像作家ミンハについて知りたくて、参加した。

ICU卒業生 : 吉成愛子
【CGS News Letter003掲載】

 卒業論文の中で「性産業と旅行産業」の関係を取り上げたが、論文を提出したあと実際に現状を見たいという思いに駆られ、フィリピンとタイの実情を約3週間かけて見てきた。アンへレス(フィリピン)のバリバゴ地区では英語や日本語の看板が溢れ、バンコク(タイ)のタニヤ通りは銀座や歌舞伎町をそのまま持ってきたような通りであった。まさに外国人を客層とした性産業がそこにはあった。法律上、性産業で働ける最低年齢は18歳となっているが、18歳と答える子の中にはもっと幼く見える子もいた。出生証明制度の整っていない田舎から来た子は年齢をいくらでも偽れる。店も客も若い子を求めているのだ。バーに30分いただけで3人の女の子からレディースドリンク(彼女たちの収入源)を「おねだり」された。注文さえすれば基本的に触り放題である。富を持つ人が貧しい人にお金を援助し、その代わりに性的サービスを受けるという「援助交際」が産業として確立してしまっているのである。

ICU大学院 : 朱恵文
【CGS News Letter003掲載】

 日本で酒井順子著『負け犬の遠吠え』というエッセイがベストセラーになり、「負け犬」という「未婚、子ナシ、三十代以上の女性」を指す言葉が流行したのをきっかけに、「負け犬論争」が盛んに行われている。それとほとんど同じ時期に、隣の中国では、「中国式離婚」というドラマが大きな反響を呼び、「夫婦関係」や「妻のあり方」といった「勝ち犬」の話をめぐって議論が行われていた。

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