02. 日本からの最近のブログ記事


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 ICUジェンダー研究センター(CGS)では毎学期、学生主催で一冊の本をみんなでじっくりと読む、読書会を開催しています。一人で読むのは難しい本も、みんなで読めば大丈夫。
 わからない部分をお互いにシェアしながら、楽しく読み進めましょう!



今を生きるシェイクスピア
−アダプテーションと文化理解からの入門

開催日程
毎週 金曜19時~ 初回:5月9日
 初回から参加できなくても、途中からの参加も歓迎です! お気軽におこしください。

会場
国際基督教大学 ジェンダー研究センター(ERB-1 301)

書籍情報
今を生きるシェイクスピア -アダプテーションと文化理解からの入門
編 著:米谷郁子
  著:近藤弘幸、高森暁子、森祐希子、横田保恵、吉田季実子
出版社:研究社
出版年:2011年

 シェイクスピアとジェンダー、どこに接点があるというのでしょうか。この本ではオリジナル作品からモチーフを何かしらの形で投影しつつも、元の作品とは全く異なる作品のことをアダプテーション作品と呼んでいます。現代日本のドラマ、映画、SF、宝塚などシェイクスピア作品のアダプテーション作品を通してアダプテーション概念とクィア概念の相似性を考察していく本です。章ごとに内容が分かれており、参加者の興味に応じて取り扱うものを選んでいきたいと思っています。

担当者
樋口優也(ICU学部生)



マレーシアにおける「生」と「性」を考える

開催日程
5月14日(水)19:00~
5月28日(水)19:00~
6月4日(水)19:00~
 初回から参加できなくても、途中からの参加も歓迎です! お気軽におこしください。

会場
国際基督教大学 ジェンダー研究センター(ERB-1 301)

上映作品情報
5月14日
Mencari Kartika (2010/ 40min)
監督:Norhayati Kaprawi
音声:マレー語、英語/字幕:英語

2009年に飲酒を理由にむち打ち刑を宣告されたムスリム女性のケースをきっかけに、イスラームにおける「正義」や「思いやり」とはなにかを問い直すため、イスラームの内部から抵抗を試みた作品。

5月28日
Aku Siapa (Who Am I) (2011/55min)
監督:Norhayati Kaprawi
音声:マレー語、英語/字幕:英語

マレーシアの若いムスリム女性がなぜヒジャブを被るのか/被らないのか? 宗教的にかかわる事柄に「疑問」を持ったり「問い直したり」することがタブーとされる中、ヒジャブを取ることを決断したムスリム女性が直面する問題や困難について考えてみたいということろから出発している作品。

6月4日
I AM YOU: Be a Trans Ally video series (2013)
 PSA part 1. Discrimination (5:28 min)
 PSA part 2. Sex Reassignment Surgery and Health Care (5:16 min)
 PSA part 3. I Am a Picture of You (1:38 min)
 PSA part 4. Employment and Career Goals (4:18 min)
 PSA part 5. Family (5:39 min)
制作:「I AM YOU: Be a Trans Ally」キャンペーンチーム
音声:英語、マレー語/字幕:英語

これは、2013年に始動したトランスジェンダーに関する啓もう活動を行う有志グループが制作したものです。この作品の目的は、1)トランスジェンダー当事者によるコミュニティへ向けたメッセージ、2)トランスジェンダーへの理解を向上させ、当事者コミュニティと社会をつなぐこと、などがあげられます。


 現代のマレーシアでムスリム女性が直面する問題や困難を取り上げた「Mencari Kartika」(2010)と、「Aku Siapa」(2011)、そしてトランスジェンダー・コミュニティがおかれる現状を当事者が5つのテーマに分け語っている「PSM: I AM YOU」の短編シリーズを上映します。
 上映後には、マレーシアの基礎知識としてムスリム女性やセクシュアル・マイノリティをとりまく社会背景や、現在に至るまでのアクティビズムの歴史の紹介も交えつつ、30分程、みんなで感想をシェアする時間を作りたいと思います。

担当者
上田真央(CGS研究所助手/準研究員)


CGS運営委員:生駒夏美
【CGS Newsletter016掲載記事/特別特集:CGS開設10周年へ向けて】

 2012年5月にICU授乳室がオープンしました。自身も利用登録者であるCGS運営委員・生駒夏美が、授乳室のこれまでと、今後の展望をご紹介します。


ICU保健体育科:三橋良子
【CGS Newsletter016掲載記事/特別特集:CGS開設10周年へ向けて】

2013年度より、教養学部生必修科目「保健理論」内で、CGSスタッフが「性の健康を考える」と題したゲスト講義を開催するコラボレーションが始まりました。「保健理論」を担当する保健体育科主任の三橋良子先生に、この取り組みの企図と、今後の展望についてお寄せ頂きました。


CGS研究所助手:松﨑 実穂
【CGS Newsletter016掲載記事/特別特集:CGS開設10周年へ向けて】

CGSの日常業務には、多くの研究所助手(Research Institute Assistant, 以下RIA)が関わっています。社会人経験を経て学術の道へと戻り、現在RIAを勤めている松﨑実穂さんが、CGSでの活動が自身にどんな影響を与えているかを振り返ります。


北里大学 健康管理センター 学生相談室 臨床心理士:柘植 道子
【CGS Newsletter016掲載記事/日本からのニュース:相談の現場から】

CGSは学生にも開かれたコミュニケーションスペースとしても機能しており、学生の皆さんからジェンダー・セクシュアリティにまつわる様々な相談を受けることが多々あります。他大学では相談に関して、どのような体制を築いているのでしょうか。今回は、LGBT学生サポートグループを立ち上げられた、北里大学学生相談室臨床心理士の柘植道子先生にご寄稿頂きました。

「働く女性の全国センター(ACW2)」メンバー:鈴木ちあき
【CGS Newsletter016掲載記事/日本からのニュース:相談の現場から】

CGSで受ける相談のなかには、就職活動や将来のキャリアに関する不安も多く、大学を卒業した後に相談できる機関の必要性が感じとれます。女性の労働に関して、定期的に電話相談を実施している「働く女性の全国センター(ACW2)」スタッフの鈴木ちあきさんにお話を伺いました。(インタビュアー・構成 一橋大学大学院、CGS研究所助手:杢田光)

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 留学での大変だった経験、また留学を通して得られたことは何ですか?
 本イベントでは、留学におけるジェンダー・セクシュアリティに関する経験や情報を共有し、参加者のみなさんと一緒に、問題解決の糸口を考えていきます。
 今回はスピーカーとして、この春までカリフォルニア大学アーバイン校に留学していた平森大規さんをお迎えし、LGBTQA学生のための寮や、LGBTリソースセンターの様子、履修した科目についてなどざっくばらんにお話を伺います。
 この夏留学から帰って来た人も、今後行こうと考えている人も、現在ICUに留学に来ている人も、ジェンダー・セクシュアリティに関する留学の課題や経験を、みんなと話してみませんか?

日時:2013年9月11日(水) 12:50-
場所:国際基督教大学 ジェンダー研究センター(ERB-1 301)
共催:ジェンダー研究センター、pGSS(ジェンダー・セクシュアリティ研究メジャー)
参加費無料、予約不要、ランチ持ち込みOK

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国際基督教大学ジェンダー研究センター/GSS101「ジェンダー研究へのアプローチ」共催オープンレクチャーシリーズ
震災・原発問題をジェンダー・セクシュアリティの視点から考える。

日時:
2012年9月24日(月)、27日(木)、10月1日(月)13:15〜15:00

場所:
国際基督教大学 本館 215号室
JR中央線武蔵境駅南口より、小田急バス「国際基督教大学(境93)」行き終点下車
*上記路線は全てノンステップバスにて運行されております。

言語:
日本語

参加費:
無料、予約不要
※学内外問わず、どなたでも受講頂けます。

未曽有の東日本大震災・福島第一原発事故から1年半がたち、復旧も遅々として進まない中、決して過去の問題としてではなくこれからの問題として、大震災・原発事故をとらえていくことを再確認したい。未曽有の天災や事故が起きた時、ジェンダー・セクシュアリティ規範や秩序構造はどのように作用し、また不可視化されるのか。ジェンダー・セクシュアリティの視点から考察すると、どのような問題が見えるのか。想像力を駆使し感性を磨いてこのたびの大震災・原発事故について考察していく。



9月24日(月) 映画上映×監督クロストーク
震災から1年:被災地いわきからのメッセージ
監督:島田 暁(2012、18分)
原発附和雷同
監督:石本恵美(2012、18分)

シリーズ第1回は、映画上映×監督クロストークとして、「震災から1年:被災地いわきからのメッセージ」(監督:島田 暁、2012年作品、18分)と、「原発附和雷同」を上映します(監督:石本恵美 2012年作品、18分)。
被災地を生きる性同一性障害当事者のメッセージと、東京で生きる若者の声。両者を見比べながら、震災・原発問題に関わっていくスタンスを見つめ直します。



9月27日(木) 講演会
放射能汚染を考える ―生活者視点からの取り組み
講師:漢人あきこ(小金井市議会議員)

シリーズ第2回は、小金井市議会議員の漢人あきこさんをお招きした講演会を開催します。
チェルノブイリ原発事故以降、市民協働で行われてきた食品の放射能測定の中で生活者・女性としての視点からみえた、放射能汚染の姿とは。そして、大震災・原発事故の前後で、測定活動をとりまく状況の変化とは、どのようなものであったのか。震災後一年半の経験を振り返り、今後を考えていきます。



10月1日(月) 講演会
女たちが動く ―ジェンダーの視点から東日本大震災を考える
講師:浅野冨美枝(宮城学院女子大学)

シリーズ第3回は、「女たちが動く: 東日本大震災と男女共同参画視点の支援」(生活思想社 2012)の編著者のひとりである、浅野冨美枝さんをお招きします。
東日本大震災の被災地・宮城で教鞭をとる浅野さんは、被災女性が被災女性の支援に取り組んだ1年の記録をまとめる作業に参加。支援する側が支援されるという経験を通して見えてきた、当事者が復興の主体となることの重要性をうかがいます。

このイベントは終了しました。

立教大学文学部教授:新田啓子
【CGS Newsletter015掲載記事 日本からのニュース:追悼・竹村和子氏】

2011年12月13日に逝去された日本のジェンダー・セクシュアリティ研究の旗手のひとりである、竹村和子氏。立教大学文学部の新田啓子先生に、故人へ馳せる思いをお寄せ頂きました。

竹村和子フェミニズム基金評議員、元お茶の水女子大学教授:河野貴代美
【CGS Newsletter015掲載記事 日本からのニュース:追悼・竹村和子氏】

竹村氏の遺志のもと設立された、一般財団法人「竹村和子フェミニズム基金」(通称:竹村基金http://takemura-fund.org/)。この基金について、同法人評議員で元お茶の水女子大学教授の河野貴代美先生にお話を伺いました。

埼玉県立大学助教:堅田 香緒里
【CGS Newsletter015掲載記事 特集:働くと「生きる」をジェンダーの視点から考える】

今号のニューズレターでは、『働くと「生きる」をジェンダーの視点から考える』と題し、私たちと労働・社会の在り方を見直すヒントを探る特集を組みました。最初のテーマはベーシックインカム。この概念が切り開く社会の地平について、「ベーシックインカムとジェンダー」(現代書館2011)共編者・堅田香緒里さんに伺いました。

企画・構成 堀真悟:早稲田大学大学院、CGS研究所助手
司会・構成 松﨑実穂:CGS研究所助手
【CGS Newsletter015掲載記事 特集:働くと「生きる」をジェンダーの視点から考える】

講演会「ベーシック・インカムの可能性」の後に、堅田香緒里さんと3名の受講生による座談会を開催しました。講演会コーディネーターを務めた堀真悟(CGS助手)が設定した「働くこと/生きることとベーシックインカム」というテーマを中心に、松崎実穂(CGS助手)司会のもと、参加者の皆さんに存分に語っていただきました。

インタビュアー CGSセンター長、ICU教授:田中かず子
インタビュイー 「働く女性の全国センター(ACW2)」代表:伊藤みどり
【CGS Newsletter015掲載記事 特集:働くと「生きる」をジェンダーの視点から考える】

ベーシックインカムのような新しい制度への試みが必要とされる一方、現状のデータから労働・社会の在り方を見直すことも必要です。若者の雇用環境について調査を重ねてきた「働く女性の全国センター(ACW2)」の伊藤みどりさんに、CGSセンター長・田中かず子がお話を伺いました。

株式会社 創造集団 440Hz 代表取締役・社長:石本恵美
株式会社 創造集団 440Hz 取締役:長井岳
【CGS Newsletter015掲載記事 特集:働くと「生きる」をジェンダーの視点から考える】

「生きたいように生きる」をテーマに学生が集うシューレ大学(運営母体:NPO法人東京シューレ)。その卒業生たちが設立した株式会社が、創造集団440Hz(http://creators440.org/)です。働くことと生きることを見つめて立ち上がったこの会社について、代表取締役・社長の石本恵美さんと、取締役の長井岳さんにお話を伺いました。

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2012年3月11日(日)~31日(土)の期間、24時間全国どこからでも無料で電話相談ができる「よりそいホットライン」が開設されています。
 
 なんでも相談できるホットラインですが、性別や同性愛など、セクシュアリティに関する相談を専門に行うスタッフが常駐している点は、特に画期的です。
 また、その他の相談に関しても、当事者の方だけではなく、その周囲でどうしたらいいか迷っている方からの相談も受け付けているそうです。友人や家族からカミングアウトされた方、知っている人がもしかしたらドメスティックバイオレンス(家庭内暴力/DV)の被害にあっているのかもと心配な方など、様々な方の相談を、24時間いつでも行うことができます。

この機会にぜひ利用したり、広く紹介してください。

※当センターは当該事業の運営には関わっておりません。詳細や問い合わせ先については下記のホームページ等をご参照いただきますようお願い致します。

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「よりそいホットライン」開設のお知らせ

 0120-279-338(フリーダイヤルつなぐささえる)

 ガイダンスの後にそれぞれの番号をプッシュすると、専門のラインにつながります。
 24時間、全国どこからでも通話料無料。
 携帯電話・PHS・公衆電話からもかけられます。

#1 生活や暮らしに関する悩み相談
#2 外国語による相談(Helpline for Forerigners)
#3 性暴力、ドメスティックバイオレンスなど、女性に対する暴力の相談
#4 性別や同性愛に関わる相談(セクシュアル・マイノリティ全般)
#5 死にたいほどのつらい気持ちを聞いて欲しい

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3月11日から31日まで、24時間どこからかけても無料の「よりそいホットライン」という電話相談が始まります。
「よりそいホットライン」は、被災地からのご相談や、全国で「社会的排除」にさらされている方々のご相談を受け付けるもので、厚生労働省の補助を受けたモデル事業です。

このホットラインには、性別への違和感や同性愛の悩みなどに真剣に耳を傾け、一緒に考えるセクシュアル・マイノリティ専用回線もあります。

ご本人はもちろん、家族や友だち、周囲の方々のご相談もお受け致します。
どんな些細な悩みでも構いません。
ためらわずに、どうぞお電話ください。
お待ちしています。

【よりそいホットラインのウェブサイト】
http://279338.jp/yorisoi/

主催:一般社団法人社会的包摂サポートセンター
委託協力:共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク ほか

一橋大学大学院 言語社会研究科 李杏理
【CGS Newsletter014掲載記事全文】※ペーパー版は以下記事のダイジェストです。
『女性国際戦犯法廷から10年・国際シンポジウム:「法廷」は何を裁き、何が変ったか~性暴力・民族差別・植民地主義~』に参加して

 日本軍「性奴隷」制という覆い隠された暴力の不法性を白日の下にさらし、サバイバーの尊厳とひとすじの正義を取り戻そうとした女性国際戦犯法廷(以下、法廷)から10年が経った。2010年12月5日、「女性国際戦犯法廷から10年・国際シンポジウム:「法廷」は何を裁き、何が変ったか~性暴力・民族差別・植民地主義~」が開催された。
女性国際戦犯法廷(日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷)とは、2000年12月に東京で開かれた民衆法廷である。元「慰安婦」の女性たちは、1990年代以降日本政府を相手取って、謝罪と賠償をもとめる裁判を起こした。だが訴えはすべて退けられ、国内の裁判闘争は頭打ちとなっていった。そんななか、この運動に携わる人たちのなかから女性国際戦犯法廷が提起された。
 法廷では「慰安婦」の被害事実が認定され、東京裁判条例5条で日本が受諾した「人道に対する罪」にあたるとの判決が下された。天皇を含む9名の被告に強かんと性奴隷制の罪に対する上官としての責任及び個人としての責任で有罪が言い渡され、日本政府に対し、国家責任と被害の認定、被害者への賠償、隠匿した資料の公開、教科書記述などの教育施策、被害者の帰国支援や遺骨返還を行うよう勧告が出された。
 敗戦直後の東京裁判では、ジェンダー・バイアスや国体護持、連合軍の占領目的のために日本軍「性奴隷」制や天皇の責任が裁かれなかったが、女性国際戦犯法廷は、それらを訴追した画期的な裁判であった。それは、「慰安婦」問題をめぐる運動に固有の意味があっただけではなく、植民地支配や戦争を引き起こした近代史のなかで、性差・階級・民族によって幾重にも消し去られたサバルタン的存在を想起させた。
 一方、当時存在していた国際法を論拠とし、東京裁判の再審として日本軍「性奴隷」制を裁いた法廷の限界もまた指摘されている。東京裁判で裁かれた罪の対象期間は、1928年1月1日から1945年の9月2日までであり、日清戦争や日露戦争、「韓国併合」は含まれていない。また、陸軍軍閥とそれに迎合した人びとにのみ責任が集中し、海軍や企業・財界人は訴追されなかったという問題点も存在している。そのため、植民地支配の不法性については再審がなされず、また、企業責任についても法廷では十分に議論することができなかった。日本の植民地支配によって生活が窮乏化し、徴用や募集によって「慰安婦」にさせられた植民地出身の女性たちに対する暴力の問題は、植民地支配による構造的な強制性や企業犯罪を問わなければ見えてこない。
 このような民衆法廷の実現は、その後10年の間に性奴隷制と天皇・日本軍の犯した罪に注意を喚起し、各国での「慰安婦」制度非難決議など、「慰安婦」問題への取り組みを前進させた。しかし一方で、加害の歴史に向き合うことへのバックラッシュが巻き起こった。2005年にはNHKで法廷の特集を放送する前に、政治圧力によって改変される事件が起きた。さらに、教科書記述からは「慰安婦」が消え、教育基本法が改悪され、在特会などの新たな右翼勢力が台頭するなかで、排外主義はかつてないほど高まっている。
 このようななかで開催されたシンポジウムでは、500名以上の観客が見守るなか、法廷の意義を想起し、この10年間の「慰安婦」問題をめぐる情勢や運動の展開などが総括された。
 第1部〈女性国際戦犯法廷とは何だったのか〉では、実行委員長の東海林路得子(以下、敬称略)が開会の辞で、朝鮮半島の判事団から法廷の判決における「植民地」という認識の弱さに対する批判があったこと、法廷で十分に議論されなかった植民地主義を今回のシンポジウムの副題に掲げたことの意義を述べた。その後法廷の主席判事パトリシア・セラーズ(以下、敬称略)が基調講演を行い、この法廷は東京裁判で裁かれなかったジェンダーに基づく奴隷制を人道に対する罪で訴追した画期的な裁判であったこと、判決で示された賠償内容を今後市民社会が実行していく必要性を訴えた。
 第2部〈アジアの日本軍性暴力被害者の証言を聞く〉で、フィリピンのサバイバー、ナルシサ・クラベリアが、日本軍によって家族が殺された後「慰安婦」にされたことを証言し、法廷によって「やっと正義を取り戻すことができた」と語り、日本政府に謝罪と歴史教育を求めた。次に、中国のサバイバーの韋紹蘭とそのご子息羅善学が証言した。韋は、日本軍の侵攻の際、日本兵に連れて行かれ「慰安婦」にされた。その時のレイプによって生まれた羅は、周囲から「お前は日本人の子だ」と疎まれて育った。罪を負う必要のない彼が日本の過ちを背負わされているということが、終わらない「慰安婦」問題の根深さを問うていた。「慰安婦」サバイバーにトラウマが刻印されるのみならず、その共同体やサバイバーの死後を生きる人びとにも傷や問題を残し続けるのだ。
 第3部〈法廷の判決・勧告/証言をどう引き継ぐべきか〉では、はじめに米山リサによる「消された裁き~批判的フェミニズムの視点から~」というビデオメッセージが上映された。そのなかで米山は、2001年のNHKの番組改ざんによって、「責任の明確化なくして『和解』は成立しない」という法廷の理念やサバイバーの証言、天皇有罪の判決が削除されたこと、法廷がもつ「批判的フェミニズム」の思想、すなわちジェンダー関係が植民地主義やレイシズム、階級差別によって拘束を受けるという視点が伝えられなかったことの問題を述べた。その上で①どのように聞き手が証言と向き合うかを問い、②「裁きなくして和解なし」という理念についてさらに考えを深めるべきという問題提起を行った。
 続けてパネルディスカッションで、鄭瑛惠から「慰安婦」問題解決だけでなく戦時性暴力防止のためにも「性暴力禁止法」の立法が必要であること、宮城晴美から日本と米国の植民地にある沖縄で性暴力が後を絶たないことが述べられた。さらに尹美香から国連や各国の決議があったにもかかわらず解決を見ない「慰安婦」運動の新たな転機の必要性、村上麻衣から若者による全国同時証言集会など、記憶を次の世代へ受け継いでいくための活動、池田恵理子から「女たちの戦争と平和」資料館建設運動などについて報告があり、今後の課題が示された。台湾とインドネシアの支援者からも報告があり、韓国からはサバイバーの姜日出が発言した。
 サバイバーを翻弄し、問題克服を阻害しているのは、性暴力に対する社会的認識の低さや戦後責任をめぐる問題だけではない。植民地独立をめぐる問題として引き起こされた朝鮮の南北分断や、東アジア諸国と日本との間にある経済的社会的格差もまた重要な要因として存在する。日本の侵略と植民地支配の歴史を問うことに対するバックラッシュが起きるなか、日本の多国籍軍参入が押し進められ、軍事主義が強化されている。そのような継続する植民地主義の現状を批判することなくして、真の問題克服は不可能であろう。
 当シンポジウムは、これまで積み重ねられた努力が結集され、広く連帯が呼びかけられた。同時に、法廷で裁かれた内容を国内で実現し、賠償や国際法違反と責任者の罪、国家責任を認定させていくためには、さらなる取り組みが必要である。シンポジウムのテーマに掲げられていた「性暴力、民族差別、植民地主義」の関係性を問い、その克服と結びついた実践や研究が求められている。

【著者プロフィール】
李杏理(リ・ヘンリ)
一橋大学大学院言語社会研究科修士課程
専門は、植民地「解放」後在日朝鮮人の生活史・ジェンダー史

宮城学院女子大学大学院 人文学会 /性と人権ネットワークESTO 正会員:内田有美
【CGS Newsletter014掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
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(性と人権ネットワークESTOロゴ)

 2011年3月11日、東日本大震災が起こった時の長く激しい揺れの恐怖と信じ難い津波の映像は、今も頭から離れない。この様な状況の中、国内外の多くの方々からご支援をいただき、被災地は着実に復興に向かっている。この場をお借りして、被災地で生活している一人としてお礼申し上げたい。
 私は以前から性的少数者(以下、LGBTI)の問題に関心があり、当事者団体である性と人権ネットワーク ESTOで活動を行っている。ESTOでは、震災後の仙台交流会で「震災とセクシュアリティ」について参加者同士で震災の体験や思った事などを話す機会を設けた。また、GIDの当事者から「断水で洗濯もできず、1枚のナベシャツを着続けている」という話から、各地より寄せられたナベシャツの寄付を行った。ESTOの他にも、多くの当事者団体で支援が行われている。だが、支援には多くの課題も残っているため、被災したLGBTIへの支援について考えてみたい。
 被災してまず問題となるのは、「医療へのアクセス」や「安否確認」の難しさである。医療へのアクセスは、GIDの当事者や性分化疾患当事者は保険証の性別記載や外性器・内性器の関係から、病院へ行きづらい状況にある。病院に行ったとしても、被災地では野戦病院の様であり、LGBTIの知識がある医療従事者でなければ混乱が生じると思われる。また、意識が無い状態で運ばれた際には「見た目」の性別で治療が行われる可能性が高く、身体的性別特有の疾病である場合、すぐに適切な処置を受けることは困難ではないだろうか。安否確認の難しさも同様で、亡くなった方の情報は「見た目」を中心にしたものが公表されるため、見た目と戸籍上の性別が不一致であった場合、安否確認は難しい。これらの問題は、同性愛者にも生じる。パートナーが病院に運ばれたり、遺体となって見つかったりした場合、事実婚状態であっても法律上の「家族」ではないため、治療の判断や遺体の引取を行えないという問題がある。
 次に、避難した際には「避難所生活の難しさ」が問題となる。「男女」で区分される避難所生活では、GIDの当事者は精神的性別・身体的性別どちらかに区分される。精神的性別の場合は、集団で風呂に入る際や更衣室利用などに支障をきたす恐れがある。身体的性別の場合は、常にストレスを感じることになる。このように、現在の避難所は「LGBTIはいない」という前提になっており、LGBTI当事者が安心して避難生活を送れる環境ではないことが多い。
 最後は「復興への支援を受ける難しさ」である。性別記載のある書類を提出する場合には、GIDの当事者や性分化疾患当事者は、窓口で性別を確認される等の問題が生じると思われる。
 この他にも、被災したLGBTI当事者はそのセクシュアリティ故に多くの困難を抱えている。そのため、このような状況を是正するよう社会に求めるだけでなく、LGBTIについて知識のない人や機関とLGBTI当事者を仲介するような支援も必要ではないだろうか。
 上述したような困難は生活と権利を守る上で重要な問題であり、蔑ろにされることではない。被災したLGBTI当事者がQOLを確保するための支援が今後も必要である。

中野区区議会議員 石坂わたる
【CGS Newsletter014掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】
 「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティで気の毒ですよ」。この石原都知事の発言の裏には、「マジョリティであることは、マイノリティとは遺伝的に異なる盤石な存在である。そして、満ち足りた存在であるための必要条件だ。」という幻想が見え隠れしている。
 また、石原氏が公人としてこうした発言をし、少なからぬ都民がその発言に賛同あるいは傍観してしまう背景には、「同性愛者はテレビの向こう、あるいは、自分とは関わりのない所に集まっている不幸な人たち」と考える人も少なくないことを示しているのではないか。そういう幻想を抱えている人たちにとって「自分もいつ不幸になるかわからない、あるいは一歩不幸に足を突っ込んでいるのかも」ということに気づいてしまうことは恐怖なのだろう。そのため、より不幸な人間を見つけ、「自分はマイノリティほど不幸ではない。だから、自分は幸せなんだ」と思わずにはいられないのではないだろうか。
 しかし実際には、人はみな得手不得手があり、足りないところがあり、誰にでも不幸は訪れる。そして、マイノリティもマジョリティも、一人一人が多様であり、異質である。時には衝突を経験しながらも受け入れる姿勢を忘れることなく長い時間をかけて補完・共生をしていくことが大切なのだ。補完・共生をしていくことが、完璧な一人の人間が生み出す以上の結果を出せる可能性を持っている。そうしたことを可能にするためには弱さの自己受容が必要なのだと思われる。
 なお、今回の石原氏の発言に対し、1月14日に中野区内において当該発言に対する抗議を行う集会が行われた。しかし、その3か月後の選挙の結果は石原氏の四選だった。
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(抗議集会の様子 ©レインボー•アクション)
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(抗議デモの様子 ©レインボー•アクション)
 これまで知事に対して継続的で効果的な働きかけを行ってこられなかったこと、抗議集会などを行っても「4割以上の有権者が投票権を放棄してしまう中での石原氏の四選」という流れを変えられなかったことは(今回の抗議集会を含め)従来のゲイリベレーションの課題だと思われる。
 特定の人物を首長とする判断を有権者が合法的に行った以上は、今後、都民の代表として選ばれたその首長と建設的な議論や交渉をどのようにしていくのかを考えていく必要がある。適法性や妥当性が最低限担保されている社会のシステムそのものを否定しても、政治に関与することに対する諦めからの放棄・倦厭・拒絶をしても問題はいつまでたっても解決はしない。法、一般公務員、議員を上手に活用し、周囲の人に自らの思いや考えを伝え、社会に浸透させていくことが必要なのである。こうしたことは万人に与えられた当然の権利であり、その正当な権利を放棄してしまうことなく活かしていく方法を模索していくべきだろう。

一橋大学ジェンダー社会科学研究センター 財務・総務部門総括:佐藤文香
【CGS Newsletter014掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

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(ワークショップの様子)

 いまや「国立大学法人」と呼ばれる国立大学はその運営を6年ごとに定める中期目標・中期計画に基づいて行うことになっている。二期目を迎えたこの計画に、わが大学でも「研究との両立を図るべく出産・育児支援を行う」ことがようやく明記されるようになった。
 私たちジェンダー社会科学研究センター(CGraSS)は、一貫して自分たちを教育・研究を担う組織として位置づけてきた。それは限られた人的資源から活動の範囲には限定が必要であり、福利厚生や行政を担う組織はいずれ大学当局のもとにオーソライズされるべきであるという私たちの考えを反映した姿勢であった。だから、2011年1月の公開ワークショップ「大学における育児サポート ―新しい一橋大学に向けて」の開催に迷いがなかった、といえば嘘になる。しかし、リーダーシップをとりそうな組織が他に見あたらず、「具体的な施策」が天からふってくることも期待できない以上、少しでも取組みを形にしていくべく運動をおこしていく必要があった。こうして、私たちは、他大学の多様な取組みに学びつつ情報を共有することを目指し、ワークショップの開催にふみきることになった。
 広報の開始がやや遅れたこともあって、年明けまで参加のエントリーは10数名にとどまっていた。なにしろ、過去の「当事者」たちは既に困難をくぐり抜けた「成功者」である。昔を懐かしく思うことはあっても、切実な課題としてこれを受け止めるにはやや距離があるようにみえた。一方、未来の「当事者」はといえば、学部生にはまだ遠い先のお話であり、院生の中にも「そんなことよりさしせまった問題」を抱えた人びとが多くいた。そして、現在の「当事者」たちは、あまりに渦中にありすぎて参加するだけの心身のゆとりがない人びとも少なくなかった。初の試みとして臨時託児所を設置したのも、このワークショップを一番必要とするであろう彼ら/彼女らに足をはこんでほしかったからだった。
 声かけに奔走する中での経験も他のイベントの時とはまた味わいの違うものだった。クールな女性の反応とさわやかにエールを送ってくれる男性の背後にある非対称性にたちすくんだり、資源をもたない他者への想像力のなさに絶望したり、育児サポートに熱心な人に対しても、他の社会的課題にも同じだけの情熱をもって取り組んでくれるだろうかと不信感を抱いたり...。なかなかに消耗したことも事実である。そんな中、私を突き動かしたのは、もうじき定年を迎えるある先生が寄せて下さったメッセージだった。若い頃、大学の保育所設置運動にふれ希望に満ちて情報を集めたこと、何度かチャンスに遭遇するも職場の規模の問題につきあたったこと、そうしたエピソードにそえて、今回のワークショップの開催を「夢のように感じる」と主催者への謝意が述べられていた。彼女が断念した「夢」と時の経過の重みを思うと、胸にこみあげるものがあった。
 さて、結果はどうだったかといえば、幸いにも当日は80名にものぼる参加者を得て会場を熱気でいっぱいにすることができた。学長・副学長への「ラブコール」も功を奏し、彼らに「当事者の切実な声」の一端が確かに届いたという手応えも感じた。このワークショップを、これまで点在してきた人びとをつなげる場として機能させるという目標に照らしてみれば、ひとまずこれを「成功」とよんでもよいだろうと思う。もちろん、この「成功」は長い長い道のりのほんの小さな第一歩を踏み出したにすぎないものではあるのだけれど。

キャバクラユニオン交渉委員: 根来祐
【CGS Newsletter013掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

「キャバクラユニオン」(代表:桜井凜)は、個人加盟労働組合「フリーター全般労働組合」の分会として2009 年12 月に発足した水商売初の労働組合です。本記事執筆者の根来祐(ねごろゆう)さんはキャバクラユニオンの組合員であり、自身もキャバクラで働いていた経験を持っておられます。以下では根来さんがキャバクラユニオンでの活動で得た想いを主に綴っていらっしゃいます。

CGS 編集委員

NPO 法人ピアフレンズ:佐藤太郎
【CGS Newsletter013掲載記事の全文バージョンです。ダイジェスト版はこちらからお読み下さい。】

2010 年5 月17 日(月)から21 日(金)まで「セクシュアル・マイノリティを正しく理解する週間」が開催されました。期間中は、専用の電話相談ホットラインが設けられるとともに、福島みずほ内閣府特命担当大臣(男女共同参画・青少年育成・自殺対策担当)も参加するシンポジウムも行われました。本稿では、セクシュアル・マイノリティの人権問題に取り組むNPO、ピアフレンズの佐藤太郎さんに実現までの歩みについて報告していただきます。

CGS 編集委員会

ICU大学院修了:丹羽尊子
【CGS Newsletter012掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

2009年6月27・28日、お茶の水女子大学において日本女性学会大会が行われた。一般会員から分科会担当を募集したり、初日に行われることの多いシンポジウムをまとめとして最終日に行う等、学会設立から30年という歴史に安住せず、未来に向けた意欲が感じられる大会であった。
シンポジウムでは「今ジェンダーの視点で問い直す貧困と労働」というテーマで、栗田隆子(フリーターズフリー)、赤石千衣子(しんぐるまざぁず・ふぉーらむ)、田中かず子(女性ユニオン東京・働く女性の全国センター(ACW2))の3氏による発表が行われた。

ICU学部:宮澤日奈子
【CGS Newsletter012掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

2009年7月3日から5日にかけて、カルチュラル・タイフーン2009が東京外国語大学にて開催された。今年は、Inter-Asia Cultural Studiesとの合同で、各地域から参加者が集まる国際学会"Inter-Asia Cultural Typhoon 2009"として催され、サブテーマの「グローバリゼーションの破断点で問う文化のポリティクス−貧困、監視、検閲を超えて」のもと、幅広いトピックで数多くのパネルが組まれた。会場内では、絵画や洋服、映像などを使ったアート作品が立ち並び、会場の外には屋台や音楽のステージに多くの人が集まった。熱気にあふれた会場と、たくさんの参加者の高揚した様子から、この一大イベントの成功にかける強い思いや、国際学会ならではの特別な緊張が伝わってきた。「国境」を越えた形で今大会が開催され、様々な国、人種、地域、階層、民族、性別、宗教、障がいなどの背景を持つ人々が集まる中で、あらゆる差異をめぐる問題は、議論の重要なトピックとして、あるいは内省的に配慮すべきものとして、意識的に扱う気運を感じた。

NPO法人サポートハウス年輪理事長:安岡厚子
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

サポートハウス年輪の前身グループ「バウムクーヘン」は、1978年の旧田無市の公民館の主催講座生が、その翌年結成したグループです。1年間の講座の中で、経済界の要請によって女子教育の内容が決められ、社会通念も作られてきたことを知りました。受講生全員が専業主婦でしたが、自分たちの置かれている立場の脆さに気づき、自分の世界をそれぞれに持ち始めていきました。そんな中、1985年にひょんなことから地域ケアセンターのデイサービスの仕事を得た私は、介護職の置かれている社会的状況を知ることになります。

一橋大学教授:木本喜美子
国際基督教大学教授:田中かず子

【CGS Newsletter011掲載記事の全文バージョンです。ダイジェスト版はこちらからお読み下さい。】

【お詫びと訂正:紙媒体版のタイトルが、「木本美喜子先生(一橋大学)と田中かず子先生(ICU)が語るジェンダー・セクシュアリティ教育の未来」となっておりました。正しくは「木本喜美子先生(一橋大学)と田中かず子先生(ICU)が語るジェンダー・セクシュアリティ教育の未来」でした。ここにお詫びして訂正いたします。】

GenEPとPGSS

鈴木直美(以下:鈴木)
本日は、ジェンダー・セクシュアリティ教育のカリキュラムの構築にそれぞれの大学で取り組まれ、現在もその発展にお心を砕いていらっしゃる一橋大学の木本喜美子先生とICUの田中かず子先生に、ジェンダー・セクシュアリティ教育のあるべき姿や今後の展望などを語っていただきたくお招きしたという次第です。
よろしくお願いいたします。
早速ですが、木本先生からは、「一橋大学における男女共同参画社会実現に向けた全学的教育プログラム」であるGenEPの資料やリーフレットをご提供いただきましたが、これは、一橋大学では「GenEPで卒業」ということが可能なのですか?

木本喜美子先生(以下:木本先生)
いえ、今はこの科目群をオーガナイズし、学生・院生に提示するというところまでしかできてないんですよ。こういう科目群が提供されていることを示して、アンケートをとったりしてるけれども、「認定」というような形まではまだ行っていないんです。もうすこし時間をかけて、と思っているところです。

報告:第一回クィア学会研究大会
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

08年11月8・9日、広島修道大学で第一回クィア学会研究大会が開催され、無事終了した。シンポジストの一人が急遽出席できなくなるなどハプニングもあったが、多くの人が参加し、幅広い分野の研究発表が行われた。学会の成功を参加者数や知的活動、学会内で形成される人間のつながりだと考えると、今回の大会は間違いなく成功だったと言えるだろう。だがここでは、大会の成功を無邪気に喜びたい気持ちをひとまず抑え、大会の成功に見え隠れした問題を報告したい。

一橋大学大学院:井芹真紀子
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

東京のパレードが延期となった今年は、周囲で評判の良いレインボーマーチ札幌に参加することに決めた。9月14日、晴天の日曜日、道内のみならず全国から多くの人々が参加し、笑顔と活気に満ちたパレードは、行政・警察との連携もスムーズで、噂どおりに気持ちよく歩くことが出来た。
特に印象的だったのは、参加者一人一人こそがパレードを作り上げているのだ、という雰囲気があったことだ。参加者全員がレインボーの風船を持ちながらパレードし、最後に札幌の中心部で一斉に放す札幌名物“風船とばし”。秋晴れの青空が色とりどりの風船で埋め尽くされるパレードのクライマックスは、各地から集まった参加者が、札幌の“お客さん”から“参加者”になり、連帯感を得る感動的な瞬間だった。

ICU大学院修了
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

07年末に出産し、訳あって8週間で職場復帰した。ここに、私なりの「労働と育児」に関する考察録を記したい。
育児しながら働くことは多くの場合子どもを保育園に預けることを意味する。しかし認可保育園への入園倍率は非常に高い。私の住む自治体では08年11月現在、無認可保育園からの入園待ちも含め待機児童は150人に上る。親の就労状況・収入・家庭の事情等が点数化され、そのポイント上位者から入園が決まるため、親(主に母親)達はいかに自分が忙しいかを、職場復帰を早めたり就労時間を延長したりして自治体にアピールするしかない。保育を確保するために母親が仕事量を増やす、保育サービスの矛盾がここから伺える。

ICU卒業:石川健一
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

<子育てに積極的に関わってみたい男性>
<出産後も自分の仕事を続けたい女性>
<子育て支援を充実させて人材確保・定着を図りたい会社>
この3拍子揃って初めてうまくいくのが男性の育児休業です。
例えば専業主婦家庭では、父親は1か月を超えての育休を申請できません。また有給休暇をほとんど消化させないような職場環境では、長期にわたる休暇を認める余裕がありません。日本の男性育休取得率が未だ0.5%前後なのは、単なる男性の意識の問題だけではないかもしれません。私の場合は非常に運良く3者それぞれの思惑が合う形で、子供の生後7か月から1歳になるまでの約5か月間の育休取得ができました。

ICU 学部/A Homosexual Asian Male Bitch From CA/NZ/JP:マサキチトセ
【CGS Newsletter011掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

第3回子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議(2008年11月24日)は、アニメ・マンガ・3DCG等を含めた児童ポルノの単純所持を全ての参加国が違法化するという方針を採択した。多くの国は既に、成人と児童の権力差から考えて「同意の上」ではあり得ないため、性的搾取や暴力から児童を守るために児童ポルノの生産及び販売を禁止している。しかし今回の方針は監視を強め、実写でない児童ポルノの単純所持をも違法化するものだ。背景には、実際に児童の関与がなくても児童ポルノは人々の児童を見る目を変え、その広範な普及は児童のイメージを極度に性的なものへと至らしめるだろう、という考えがある。即ち、合意の成り立たない行為で児童が実際に受ける身体的・精神的苦痛だけでなく、間接的であれ<児童の表象>自体が実際の児童に苦痛をもたらす、ということだ。

青森セクシュアルマイノリティ協会 ~にじいろ扁平足~:創
【CGS Newsletter010掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

Nijiiro Hempeisoku logo昨年末から、未成年者を対象とする携帯電話フィルタリングを巡って政府や企業、第三者機関、更には国会と様々な動きがあるが、私にとってこのことは無関心ではいられない大きな問題である。性的マイノリティについての正しい情報の発信や交流のためのサイト、個人のブログまでもが、「有害」として一律フィルタリングの対象となる危険性を孕んでいるからだ。今ある偏見を助長し、同時に性的マイノリティの支えを奪ってしまう結果を生み出しかねないのである。

WILPF(婦人国際平和自由連盟)国際副会長:秋林こずえ
【CGS Newsletter010掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

日本国憲法第9条を世界に広げようと「9条世界会議」が5月4日~6日、幕張メッセなどの会場で開催された。
4日の全体会では、マイレッド・マグワイア氏(北アイルランド、ノーベル平和賞受賞者)らによる挨拶やライブなどが行われた。
5日はシンポジウムやワークショップなどが開催された。その中の一つが「平和を創る女性パワー つなげよう!世界の女性のイニシアティブ」である。世界各地から参加した6人のパネリストたちが、女性たちによる平和創造の試みを紹介し、提言を行った。私は司会をしたのだが、以下にシンポジウムの様子を紹介したい。

ICU学部:岩田まゆ
【CGS Newsletter010掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

4月28・29日、NHK「ハートをつなごう」にてゲイ/レズビアン特集が放送された。2夜通して感じたのは、全体として話がかなり単純化されていて、「同性愛者/異性愛者」という二項対立的ポジションはずっと変わらない、という雰囲気だった。「とりあえずバイセクシュアル」な私は、これには違和感を抱かざるを得ない。セクマイの知識が無い視聴者向けに、今回はゲイ・レズビアンに絞って分かり易く、ということかもしれないが、これでは逆にセクマイの中の多様性、或いは実際は誰しもに起こりうる「性のゆらぎ」の部分が見え辛くなって「わたしたちセクマイとはこういうもの」とか、或いはもっと他人事かつ短絡的に「へー、ゲイ・レズビアンって大変。今度から発言とかに気をつけなくっちゃ☆」というような「理解」や「受容」に結びつかないか不安なのだ。

記者:二木泉(CGSスタッフ)
【CGS Newsletter010掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

Pamphlet of the association-front page想像して欲しい。ある日あなたの家族から「実はレズビアン/ゲイ/バイセクシュアル/トランスジェンダー(LGBT)なんだ」とカミングアウトされたら、あなたはどう反応するか。ショック、困惑、怒り、否定、そして苦悩……。LGBTに関して今でも正しい知識を持たない人は多く、カミングアウトを受けた家族はただ驚き、苦悩し、時に拒絶してしまう。そんなLGBTの家族や友人をつなげる活動をしている団体がある。NPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」(以下、つなぐ会)である。関西のメンバーの清水尚美さん、関東のメンバーの小林良子さん、小林たけしさんにお話を伺った。

NPO法人全国女性シェルターネット事務局長:遠藤智子
【CGS Newsletter009掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

DV被害当事者支援団体の全国ネットワーク、NPO法人全国女性シェルターネット主催のDV根絶国際フォーラム・第10回全国シェルターシンポジウムは11月23日からの3日間で延べ2500人の参加を得た。初めての国際フォーラムだったが、「DV被害は国が異なっても同じ」ということ、海外、特に韓国などの先進的な制度について共有化できたことは収穫であった。何よりDVという課題にこれ程人が集まり、マスメディアに載り、総理大臣のメッセージや64団体に及ぶ全国組織の後援を得た事は嘗て無いことだ。10年の節目、主催者の一人として予想を上回る成功に安堵している。

フリーライター:竹内絢
【CGS Newsletter009掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

2007年11月17日、デルタGの主催で女性とセクシュアル・マイノリティーを対象にした「『プライドワーク』トーク 納得のいく仕事」が開催された。ゲストは今一生さんと、今さんの新刊『プライドワーク』にも登場する奥谷京子さん(WWBジャパン代表)と山本繁さん(コトバノアトリエ代表)。WWBジャパンは国連や世界銀行のバックアップを受けて1980年に設立されたWomen’s World Bankingの日本支部で、女性起業家の育成事業を行っている。コトバノアトリエは、ネットラジオ「オールニートニッポン」やトキワ荘プロジェクトなどの事業でニートやひきこもりの就業支援を行っている。これら「ソーシャルベンチャー(社会的事業組織)」の実践を聞きながら、社会にとっても自分にとっても持続可能な働き方とは?という軸でイベントが進められた。

広島修道大学教授:河口和也
【CGS Newsletter009掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

Guest Speakers at the public symposium
2007年10月27日にクイア学会設立大会が、東京大学駒場キャンパス18号館ホールで開催された。当日は、季節はずれの台風が東京を直撃するという悪天候だったにもかかわらず、約300人が参加した。
大会の冒頭で、クレア・マリィ氏が開会の辞として設立趣旨を述べた。その内容は、クィア・スタディーズはレズビアン・ゲイ・スタディーズとフェミニズムという二つの学問領域の成果の上に生まれたものであるが、これら3つの領域は緊張関係のなかで相互批判や否定をしつつも、互いに成果を継承しながら発展し、ジェンダーやセクシュアリティの言説の場を広げることに貢献してきたこと、そして、これらの学問研究が社会全般やコミュニティ(とその実践)と切り離すことができないものであったこと、さらにそうした歴史継承と同時にその断絶が存在してきたことが確認された。さらに、過去の歴史をつなぎなおし、現在の状況へ介入し、未来のあらたな可能性をさぐっていくことを学会の理念として提示した。

漫画家:竹内佐千子
【CGS Newsletter009掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

今回は、漫画家竹内佐千子さんについて特集します。レズビアンであるご自身とご自身の恋人の日常を、興味深く、且つ当事者以外にも分かりやすく描いた人気作品『ハニー&ハニー』、『ハニー&ハニー デラックス』が発刊されて、周囲からはどのような反応があったのでしょうか。

こちらからご覧下さい

モンタナ州立大学助教授:山口智美

昨年の6月10日、熊本学園大学での日本マスコミュニケーション学会春期研究発表会において、「バックラッシュはどのように起きるかーマスメディアとWeb言説空間の呼応関係」というワークショップを開いた。 パネリストには斉藤正美さん(富山大学)、荻上チキさん(ブロガー)、北田暁大さん(東京大学)と私、そしてゲストとして、今井紀明さん(ライター)も急遽加わっていただいた。パネリストたちは、皆、ブロガーであり、ネットにおける「バックラッシュ」 にも積極的に対抗してきた歴史をもつ。 ここでは、とくに重要な論点2点にしぼって報告したい。報告の詳細などがブログにアップされているので、ぜひご参照されたい。 i

「女たちの戦争と平和資料館」館長:西野瑠美子
【CGS Newsletter008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

アメリカ下院に「慰安婦」決議(H.Res121)が提出されて以来、安倍首相は「河野談話は継承する」といいつつも、旧日本軍の強制を否定する発言を繰り返した。その発言が、被害国はもとよりアメリカの大手メディアを含めて国際社会から批判を浴びると一転、安倍首相は訪米中にブッシュ大統領に対して「謝罪」し、ブッシュ大統領は「謝罪を受け入れる」と応じたという。「慰安婦」被害者でもないブッシュ大統領に謝罪し、ブッシュ大統領が「受け入れる」というこの奇妙なやり取りは、一体、何だろうか。被害者疎外の「謝罪」が、何を解決するというのだろうか。

Rainbow candles used by Kiristo-no-Kaze「キリストの風」集会代表:平良愛香
【CGS Newsletter 008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 セクシュアルマイノリティ・クリスチャンのための集い、「キリストの風」集会が東京で始まったのは1995 年9月のことでした。たまたま集まったゲイの中にクリスチャンがいたことから、「自分のセクシュアリティを神に懺悔したり、変えてもらえるように祈るのではなく、神が与えてくれたものと信じて感謝できる場が欲しい」という話になったのです。やがて「教会で礼拝をしたい」という思いが高まり、第一回「キリストの風」集会が開催されたのです。

Street Rally by Mr.ASANO in Nicho-me, Shinjukuレインボーカレッジ:遠藤まめた
【CGS Newsletter 008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 2007年4月、東京都知事選挙が行われた。今回の選挙で注目されたのは石原慎太郎氏が3選されるか否かという点であり、結果から言うと石原氏の勝利に終わったのだった。ニュース速報を見ながら私は全身から力が抜けていくような気がして、テレビの電源を消す気力も起きず、頭を抱えてしまった。
 私はトランスジェンダーの当事者として、今回の選挙に大変注目をしていた。私は都民ではないので投票権はなかったが、今度の選挙は全く他人事とは思えなかった。気がつけば浅野氏の勝手連の集会でスピーチを行い、街頭演説や彼が招かれているイベントへ足を運んでいる自分がいた。

ICU大学院:丹羽尊子
【CGS Newsletter 008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

2007年4月20日、「第51回国連婦人の地位委員会等について聞く会」が内閣府にて行なわれた。内容は、男女共同参画に関する最近の動きと、2007年2月26日~3月9日に行なわれた第51回国連婦人の地位委員会の報告であった。
今回の国連婦人の地位委員会の優先テーマは「女児に対するあらゆる形態の差別と暴力の撤廃」。女児が「児童」や「青年」というカテゴリーで一括りにされ、不可視であるが故に十分な対策がとられてこなかった現状が改めて認識され、女児固有のニーズの分析、関連統計の必要性とその整備等についての議論が深められた。確かに発展途上国では、女児は男児と比べて幼い頃から家事の担い手として期待されているため、教育へのアクセスが確保されないことが多い。また今回の決議にもあったように、早期に、かつ強制的に結婚させられるなど、性的搾取の対象ともなりやすい。しかし、女児に対する差別と暴力は、所謂発展途上国だけの問題だろうか。

立命館大学院:ヨシノユギ
【CGS Newsletter 008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

2007年3月末、京都では、余寒はあれど光の量は増していた。GID(性同一性障害)治療に伴う乳房切除手術の失敗を理由として、私は、大阪医科大学を提訴した。本稿では、GID医療の前に横たわる課題と、今回の裁判にまつわる思いを述べたい。なおここでの見解をもって、全てのGID当事者の思いを代表・代弁するつもりはないことを了とされたい。

ICU学部:井芹真紀子
【CGS Newsletter 008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

安倍首相による度重なる「強制性否定発言」をうけて再び光があてられている「慰安婦」問題であるが、この問題を学校教育はどのように捉え、教えているのだろうか。この6月に母校の女子高で行った教育実習の中で「慰安婦」問題を取り上げたときの体験をもとに、そこに潜む問題を考えたい。

Interviewer Izumi NIKI(left) and Ms.Midori ITO(right)インタヴュイー:伊藤みどり(ACW2)
記者:二木泉(ICU大学院)

【CGS Newsletter 008掲載記事】【全文】

 2007年1月20日、「働く女性の全国センター(ACW2 = Action Center for Working Women)」が発足した。これは個人で加入することができる、女性労働者のための初の全国支援組織である。今、女性限定の組織を立ち上げる意味は何だろう。世の中になんとなく漂う“あきらめ”感を私自身が抱えたまま、呼び掛け人代表の伊藤みどりさんを訪ねた。

ICU大学院卒業生
【CGS Newsletter 008掲載記事】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

「妊娠されています。出産予定日は12月1日ですね。」
驚いた。まさか自分の身にこんなドラマのような展開が待ち受けていようとは。この春就職し研修に明け暮れる日々。産む決心を固めるのは早かったが、新入社員の妊娠ということで当然社内の風当たりは強く、その後の会社とのやりとりから見えた日本企業の意識の低さ、そして女性と出産を取り巻く過酷な現状は、少なからず私を打ちのめすものであった。

国際基督教大学教授:御巫由美子
【CGS News Letter007掲載】【ペーパー版と同一の文章を掲載】

 やれやれ。案の定教育基本法改正が国会で成立した。改正法には現行法にはない「公共の精神」や「国を愛する態度」などが織り込まれる。改正法は、戦前の教育勅語のように国家の教育への介入・支配を示唆しており、それ自体非常に憂慮されるべきことであるが、ここではジェンダーの視点から、安倍政権が、教育基本法改正その他の政策を通じてめざそうとする「美しい国」の本質に迫ってみたい。

弁護士:石田法子【CGS NewsLetter 007掲載】

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【要約】
 近年改憲論が声高に語られ、政治の具体的スケジュールとなっている。安倍総理は、2007年の年頭所感で、自分の内閣での憲法改正を目指すことを、参院選の自民党の公約として掲げると表明した。
 しかしながら、自民党が2005年10月に発表した新憲法草案は、現行憲法の平和主義を放棄し、この国を、軍隊を持ち、集団的自衛権の名の下に米国と共に世界の隅々で戦争をする国にしようとするものである。またその体制を強固にするために、個人の利益に先立つ「公」の原理を、人権の制約原理に持ち込み、人権保障を後退させている。
 現行憲法は、14条で女性に平等を保障し、24条で「家制度」から女性を解放した画期的なものであるが、改憲論議の中で、24条への攻撃は激しく、その削除、改訂が主張されていた。新憲法草案ではその改訂は見送られているが、それは国民投票権を持つ女性の反発を避け改憲への道筋を開きたいとの狙いにすぎず、一旦改憲されると必ずや24条改訂は浮上する。
 改憲論の台頭と、ジェンダー思想を敵視するバックラッシュ、ジェンダーバッシングの動きの拡大とは連動し、改憲勢力とバックラッシュ勢力は重っている。新憲法草案が目指す社会は、ジェンダー的に大きな危惧がある。
 改憲に強く反対する。戦争の中で女性の平等は守れない。戦力で女性の権利は勝ち取れない。

ICU大学院:平野遼【CGS NewsLetter 007掲載】

 まっとうに「働く」ために、今我々は何を知っておかなければならないのか。2006 年 9 月 29 日、女性ユニオン東京の伊藤みどり氏、藤井豊味氏を迎え、CGS /就職相談グループ /COE 共催による講演、「後悔しない就職、しませんか?-正規社員と非正規社員の現状と課題-」が開かれた。本講演は主に、正規雇用と非正規雇用の労働環境の現実をそれぞれ解説しながら、そのなかでどのような権利を労働者として行使でき、主張可能なのかという点を伝えるものだった。就職活動を控えた学生にもわかりやすいように、パワーポイントを用いたクイズ形式をとるなど、工夫も凝らされていた。日本では現在、非正規雇用は現在派遣社員、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員等様々な就業形態がある。とりわけ、2004年の労働者派遣法の改定に伴い派遣社員は増加し、認知度が高まっている。

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